囚われの山(伊東潤)
息つく間もなく読了 囚われの山
伊東 潤(著) 1902年(明治35年)に起こった八甲田雪中行軍遭難事件をベースにした小説『囚われの山』を読了しました。
息がつまるような思いをしながらの一気読みです。 菅原誠一は雑誌『歴史サーチ』の記者だ。上司に取り立ててもらい、近いうちには副編集長になり、いずれは編集長にもなれると目論んでいたのに、その上司が失脚し、今はヒラの記者だ。
決して若くはない37歳という年齢では、別の会社でやり直すことも難しい。プライベートでは浪費癖のある妻との離婚に難儀している。 面白くもない日々を送っていた誠一だが、次号の特集取材のため、青森へ行くことになった。 八甲田山雪中行軍遭難事件について、改めて現地で資料を読み込み、新たな視点で迫ろうという。 これまで小説となり、映画化もされたこの問題に、新たな切り口があるのか、そう思いながらも、現地で調べるうちに、のめり込んでいく誠一だった。 (伊東潤さんの『囚われの山』を私なりに紹介しました) この小説は、実際に遭難した日本陸軍第8師団の歩兵と、それを調べる誠一の二つの軸で描かれています。
私は新田次郎さんの小説が原作の映画『八甲田山』をテレビで見たことがあり、大体の流れは知っているつもりでしたが、小説として描かれる遭難現場の悲惨さ、過酷さに、息が詰まりそうになりました。 また、その結末を知っているのにも関わらず、改めて一つ一つの失策を残念がりながら、ページをめくる手が止まらないのでした。 こんなにも多くの人たちが亡くなっていくなんて、悲しい。 それに、私は凍死は眠るように死ねて楽なのかと思っていたのに、そんなことはないらしいです。怖い。 一方の誠一ですが、公私ともにパッとしない状況の中、どんどん取材にのめり込んでいきます。 そして、これまでないがしろにされてきたある数字の齟齬に着目、これまで明かされてこなかった真実を突き止めそうになるのですが、思わぬ邪魔が色々と入り、面白い展開になっていきます。 タイトルにある「囚われ」という言葉も、一つの事象にかかっているのではなく、色々なことに当てはまることが徐々にわかってきます。 しかし、一番最後に明らかにされる「囚われ」は本当に必要だったのかなぁ、私にはちょっと納得がいかなかったです。 ともかく、読み始めたら止まらず、あっという間に読める小説でした。 新田次郎さんの『八甲田山 死の彷徨』を読んで、もう一度映画を見直したくなりましたよ。 囚われの山
伊東 潤(著) 中央公論新社 世界登山史上最大級、百九十九人の犠牲者を出した八甲田雪中行軍遭難事件。百二十年前の痛ましき大事件に、歴史雑誌編集者の男が疑問を抱いた。すべての鍵を握るのは、白い闇に消えた、もうひとりの兵士。男は取り憑かれたように、八甲田へ向かうー。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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