関西で働く女性のライフスタイルマガジン［関西ウーマン］

第158回直木賞受賞作　門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』を読みました。

まずはなんという秀逸なタイトルでしょう。

このタイトルだけで、宮沢賢治のお父さんの話なのだとわかります。

父親の目から見た宮沢賢治の伝記的小説です。

いろいろな面で、私がこれまで持っていた宮沢賢治のイメージが壊されました。

私は大学時代文学部でしたが、宮沢賢治についてはほとんど知識がなかったのです。

もちろん、岩手県民であること、イーハトーブと名付けたことや、作品の数々は知っていますし、読んでもいます。

勝手に、さぞや幼い頃から文才があり、作品を作り続け、短い生涯を終えた人なのだろうと思い込んでいたのでした。

でもこの本を読んで、まずは当たり前のことながら、宮沢賢治にも子ども時代があったのだということに、気付かされたのでした。

石っこ賢さんと呼ばれるほど、石好きで収集していたこと。普通の子どもと同じで、反抗期だってあったのですね。

おまけに、最初から文筆業で身を立てる意思はなく、あれこれ進路に迷ったあげく、なんとか本当にやりたいことにたどりついた人だったのです。

すごく親近感が湧きました。

宮沢賢治のお父さんについても同じこと。質屋さんだったことは知っていました。

家業を継がない賢治を情けなく思い、文筆業に携わるのを反対していたのだとばかり思い込んでいたのです。

この小説を読むと、全く正反対の父親でした。

誰よりも息子の作品を評価し、愛し続ける父親像が浮かんできたのです。この作品の登場人物の言葉を借りれば「父でありすぎる」父です。

また宮沢賢治の作品『永訣の朝』の主人公でもある妹のトシへの思いも、驚くほど濃密なものだと書かれていて、ドギマギしました。

とても人間臭い宮沢賢治が見えてきて、これから作品を読み返したら印象が変わるのではないかと思います。

最後に、この作品で最も心に残った文章をご紹介します。

これは全ての作家さんの信条、または祈りの言葉かも知れません。