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ほどよく長生き死ぬまで元気(鈴木輝一郎)

誰もが避けては通れないのに、計画が立てられない

ほどよく長生き死ぬまで元気
鈴木 輝一郎(著)
これは誰もが避けては通れないのに、計画が立てられない、老い・病・死の問題を描いた小説です。ページを繰ると、まず最初に家系図が描かれております。病気がちな主人公の息子がたびたび入退院を繰り返す毎日。その上、父親を始めとする多くの親戚が、次々に入院したり急死したりという事態に。

見舞いや付き添い、葬儀の段取り、そして日々の生活をやりくりするため、父方母方の親戚や妻の実家の人々が協力し合うので、「え?この人誰だっけ?」ということがおこるのです。家系図が必要なわけだわ。

主人公咲塚浩一郎の職業は小説家。とは言っても専業ではなく、週の何日かは家業のコテ屋を切り盛りし、それ以外の日は小説家として過ごしています。

そうでなくても時間がないだろうに、家族がバタバタ倒れてしまい、その心配をしたり対応に追われ、家業を手伝う時間も増やさねばならず、なのに締切は迫ってくる。まさに寸暇を惜しんで執筆をし、本屋回りをし……。

弱音を吐きそうな忙しさなのに、浩一郎はめげません。腹をくくって対処する、そして時間をひねり出し、小説を書く。『NOを言う前にHOWを考える』というのが浩一郎の方針なのです。それは病に倒れた父八一の信条でもあり、全編を貫いているといっても良いでしょう。

実際はかなり悲惨な状態を描いているのに、最後まで明るい気持ちで読めるのは、ともかく現実を受けとめて、何をなすべきか、何ができるかを考える。主人公のたくましさによるところが大きいと思いました。

ところで、冒頭にしつこいくらい、この小説はフィクションであると力説してあるのですが、私にはどうしても咲塚浩一郎=著者・鈴木輝一郎としか思えませんでした。小説家って大変そう、でもすごく面白い職業なんだろうなぁ。そんな思いも強くした小説でした。

それにしても少子高齢化時代、誰もが直面するかもしれない事態を描いたこの小説を、今手に入れるのはとても難しいのです。私はAmazonで中古を買いました。それももう在庫が少ない!私は買う際に、Kindle化希望のタブをポチっとしておきました。

図書館で探される場合は、単行本のタイトル『ほどよく長生き死ぬまで元気遺産そこそこ遺書はしっかり』で検索されると良いと思います。
ほどよく長生き死ぬまで元気
鈴木 輝一郎(著) 小学館
おかしくて、やがて哀しきスラプスティックス“死”小説ついに文庫化なる。身辺見わたせば毎日のように、やれ何処の誰それが入院、要介護、やがて身罷りお葬式。神も仏もあったもんじゃない。これが高齢化社会の現実だ。そんな経験をした人には共感を、これからする人には心の準備を、と説く本書は、著者の体験をもとに著された同時進行型介護お悔やみ小説の決定版である。 出典:amazon

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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