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思ってたウツと違う!新型ウツ(池田暁子)

思ってたウツとちがう!
「新型ウツ」うちの夫の場合
池田暁子(著)
昨日、池田暁子さんのコミックエッセイ『うっかり結婚生活』を読んだあとで、その後の池田さんのお仕事を検索してビックリ。

暁子さんご夫婦のその後を見届けずにはいられず、そのまま図書館へダッシュしたのでした。(注文して届くまで待てなかった)

表紙が黒い…
怖い…。

新婚早々旦那さまがウツになってしまった…という実話です。

ウツにもいろいろあるようで、暁子さんの旦那さまのウツは「新型ウツ」。

自分の好きなこと、やりたいことなら普通にできる。

でも仕事などになるとダメ。

事情を知らない人から見るとただの怠け者に見えるのが特徴だとか。

しかも、うちにこもるのではなく、攻撃的になったりすることもあるらしく、暁子さんの仕事について、執拗にダメ出しを行いプレッシャーをかけてくる…。

うううう。
読むのが辛い。

そりゃ、一番辛いのは暁子さんだろうけど、読者も相当しんどいぞ。

まず私には、前作『うっかり結婚生活』を読んだときすでに「本当に良いのか?こんな男の人と結婚しても!」と、思う点が多々あったわけです。

とはいえ、お互いにわかりあい、相手に愛情を持てばそれがベストカップル。

第三者が余計なことに口を挟むべきではないと、そう思って納得したわけですよ。

ところがですね、「私はあんまり好きじゃないけど、暁子さんにとってはこういうところが好きなんだろうなあ」と思えたポイントが、全てなくなってしまっているんです。

アバタもえくぼだったのが、えくぼもアバタに。

いや、もっとひどい状態に。

ああ、しんどい。

こんなの読むのしんどいわ。

でもきっと、最後は治って、大団円が訪れるのだろう…。

そう希望を持って読み進めたのに、なんと、旦那さまのウツは治ったわけでもなさそうで、単に暁子さんが状況を飲み込み、これからゆるゆる頑張ろうと前向きに決意したところで終わっております。

ちょ、ちょっと!!

まだ旦那さまの精神状態が不安定な状態なのにこんな暴露本に近いものを描いてよかったんでしょうか?!

もう一つ気になることは、こんなにも繊細な問題を、専門家の監修なしで世に出してしまっていること。

もちろん、暁子さん自身は、ウツに関するさまざまな本を読んでいるのですが、それを読んで「自分なりにこうではないかと思ったこと」を描いているんです。

ふーむ。

暁子さんはこれまで、自分の体験談を面白おかしいコミックエッセイにして、世に出し、多くの人の共感を得たり、同じような境遇の人を励ましてきました。

それはとても素晴らしいことではありましたが、今回のことは出してよかったのか、疑問が残るところではないかと思います。

奇しくも、ウツで攻撃的になった旦那さまが暁子さんに投げつけた言葉が、正解なのではないかと思いました。

つまりは、いつまでも自分の身を切って描いているだけじゃダメだ、ということ。

創作活動というのは大変なことです。

ゼロから何かを生み出すのは、本当に本当に大変でしょうが、暁子さんには今後、別の方向で頑張って欲しいと、そう思わずにはいられなかったです。

この本が出版されて、もう数年経っています。

その後、良い方向に向かったことをお祈りしております。

最後に。

ご家族ご友人でウツになられたかたがいて、藁にもすがるような思いでいろいろな本を読んでおられる方に。

この本はあくまでも池田暁子さんが体験し感じたことを描いておられるだけなので、参考文献として手に取るには不向きではないかと、

老婆心ながらご注意申し上げます。
思ってたウツとちがう!
「新型ウツ」うちの夫の場合
池田暁子(著)
秋田書店(2013)
「いい人」だった夫が「1ミリも尊敬できない」人間に。新婚なのに離婚やむなし? 自分までおかしくなる? 病気? 性格? いつか治るの!? 夫とウツと私の2年間を綴った赤裸々エッセイコミック。 出典:秋田書店
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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