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いつもおまえが傍にいた(井上絵美子)

いつもおまえが傍(そば)にいた
今井絵美子(著)
作家 今井絵美子さんは大の猫好き。

悲しい時も嬉しい時も、いつも分かち合った相棒は雌猫のキャシー。

初代キャシーが亡くなった後、種類こそ違えど、きっと先代キャシーの生まれ変わりだと、信じることができる雌猫と、不思議な縁で出会う今井さん。

合計4代のキャシーがいつも傍にいてくれた。

これは今井さんの書き下ろし自叙伝です。

自叙伝はドキッとする場面から始まります。
平成26年(2014年)末に、耐え難い胸の痛みを覚え、病院で検査したところ、乳がんと診断がくだされる。しかも医師から「どうしてこんなになるまで放っておいた」と言われるような状態の。

その5年も前に、指で触れると麻雀牌くらいのしこりを感じていたという今井さん。でも、あれやこれやの理由から放置し、今に至ったわけで、こうなったのは「自業自得である」と思っている。

告げられた余命は3年。今井さんは決意する。抗がん剤治療はせず、小説を書ける間は書き続ける。そしていよいよ痛みに耐えられなくなったらホスピスで緩和ケアを受ける、と。

お見舞いにかけつけた各出版社の編集者たちは、事態が深刻であるのに達観している今井さんを見て、不謹慎かと思いつつも、ついつい次の仕事の話をして帰るのだった。その中の一つが自叙伝の執筆依頼。そう『いつもおまえが傍にいた』の書き下ろしだ。
自叙伝では、両親に守られた学生時代、その頃に舞台女優を目指して所属していた劇団のこと、結婚、離婚、そして夫の死などを経て、作家を目指すようになったことが書かれています。

小説で食べていけない間は、画廊の経営や、テレビプロデューサー、はたまた牛丼屋のアルバイトなど、さまざまな職種に就き、その都度、周りに助けられています。

へぇーと驚くような著名な方が登場し、今井さんの背中を押してくれるのでした。

結局作家デビューできたのは50歳を過ぎてから。

普通に考えて、あと何作残せるだろう…と思われる年齢なのに、そこからがめざましい。

あっというまに50作品を突破し、平昌で行われる冬季オリンピックまでに100作品を突破できるのでは?というのです。

ああ、素晴らしや。

ところで、私は小説が大好きで、あれこれ読んでいるつもりでしたが、いやいやなんの。

本の海は広くて大きくて、まだまだ未知の作家さんがいらっしゃるのですね。

私はこれまで今井さんの作品を読んだことがありませんでした。

ごめんなさい。

それなのに今井さんの自叙伝を読んでみる気になったのは、新聞の書籍紹介文に、『いつもおまえが傍にいた』の”おまえ”とは猫のことである、と書かれていたから。

いやー、にゃんこに感謝しなくてはね。

だって『いつもおまえが傍にいた』に出てくる今井さんの作品群の魅力的なこと!

絶対に読まねば、と思いました。

また、遅まきながら諦めず作家になった今井さんの足跡は、作家に限らず、あらゆる夢を実現したい人に、とても参考になるのではないかと。

少なくとも私は非常に勇気付けられましたし、自分に足りないものが何なのか、教えてもらったような気がします。

そして、私は今井さんの癌との共生の仕方に非常に共感を覚えました。

私も今井さんのように対処したいと思っているんです。

とはいえ、できるだけ早期発見して痛みや苦しみとはなるべくお付き合いせずにいたいもの。

本を読み終わってすぐに、人間ドックの予約を入れました。

きっとそういう面でも、貢献する一冊ではないかと思います。
いつもおまえが傍(そば)にいた
今井絵美子(著)
祥伝社(2016)
ステージ4の乳癌で、3年の余命宣告。抗癌剤治療を拒否し、執筆に余命を懸ける女流作家の生き様! 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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