ショートショートの缶詰(田丸雅智)
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![]() ショートショートの缶詰
田丸雅智(著) 初めて「ショートショート」という言葉に出会ったのは中学一年生の時。
国語の教科書に掲載されていた星新一さんの作品の解説で、国語の先生から聞いたのでした。 短編よりまだ短い「ショートショート」。 一話一話が短いので、ほんの隙間時間にも読め、おまけにクスッと笑ったりぞくっとしたり、わかりやすいオチもあり、しばらくは星新一さんの作品をかたっぱしから読んだものでした。 「ショートショート」という言葉は、1958年に、作家の都筑道夫さんが、アメリカの作家フレドリック・ブラウンの作品を紹介する際に使用したことで定着したと言われているそう。 でも、ジャンルとしてはもっと以前からあったらしい。 私などはショートショート=星新一と思い込んでいますが、この本の編者 田丸雅智さんは、 「いわゆる昔話だってショートショートと近しいものがある」
(「はじめに」より引用)
とおっしゃっています。
そうだとすれば、私たちは幼い頃からショートショートに親しんでいるわけです。 実ははっきりした定義はない「ショートショート」。 編者・田丸さんは、短くて不思議な物語をショートショートだととらえ、お気に入りを24編選んで、缶詰にしてくれたのでした。 星新一さんはもちろん、半村良さん、小松左京さん、谷川俊太郎さん、江國香織さん、古いところでは稲垣足穂さん、川端康成さんの作品も。 どの作品も5分あれば読めます。 しかし読後「ほぉぉ」「はぁ〜」「へぇ〜」と、思わず「は行」のため息が出ること請け合い。 私が特に気に入ったのは四作。 不思議な物を売りに来るペルシャの商人のお話 須永朝彦さんの『月光浴』。 世間知らずで泣き虫な”おふくろ”さんと一緒に 最後は泣きそうになる 江國香織さんの『草之丞の話』。 故郷にあるのはいい思い出ばかりじゃない。ひどいことをしてしまったと悔いていることもある。それでも人は故郷に帰りたいのか… 太田忠司さんの『帰郷』。 大阪・天王寺が舞台の江坂遊さん『砂書き』は、坂口安吾『桜の森の満開の下』を思わせるラストシーンが好き。 どうやら私は現実よりもメルヘンが好きなようです。 あなたの好きなショートショートもきっと詰まっているでしょう。 この缶詰はお買い得でした。 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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