HOME  Book一覧 前のページへ戻る

ウエディングドレス(玉岡かおる)

ウェディングドレス
おしあわせに
玉岡かおる(著)
出版社:幻冬舎(2016年)【内容情報】(「BOOK」データベースより)世界中の女性に愛されるウエディングドレスを制作し、国際的なファッションデザイナーとして活躍する佐倉玖美。草分け的な婚礼貸衣装業を展開し、結婚式のひとつの様式を築いた服飾研究家の田代窓子。生い立ちも性格も体つきも対照的な女学校の同級生。「夢」と「自立」をめぐる女たちのレジスタンス!(出典:楽天
ダッシュで買い求めた
玉岡かおるさんの最新刊『ウエディングドレス』

表紙から受ける印象が、
これまでの玉岡先生の作品とは全然違います。
なんという夢夢しさよ。

小説の舞台は大阪城を見上げることができる
ガーデンテラスを持つレストランから始まります。
その時点で、
「あれ?これ実在のお店かな?今度行ってみたいな」
と、自分の生きている世界と近しさを覚えました。

**
東京の女学校で仲良し同級生だった二人が、
久しぶりに再会し、語りあう。
一人は、世界中の女性に愛されるウエディングドレスを製作し、
国際的に活躍するファッションデザイナーの佐倉玖美。
かたや、婚礼貸衣装業の草分け的存在とし、
結婚式の一つの様式を築いた服飾研究家、田代窓子。
東京と関西に分かれて生きてきた二人の久しぶりの再会では、
女学生時代の思い出から戦争体験へ、
自身の結婚、そして夢の実現へと話題は尽きないのだった。
***

本の帯や広告にも書かれていますが、
佐倉玖美は現在もなおブライダル界に燦然と輝く
ファッションデザイナー桂由美さん。
窓子さんにもモデルがいるのかもしれませんが、
私は存じ上げません。

桂由美さんが
「私の50年のデザイナー人生が一気によみがえり、
思わず涙がこぼれました」と
おっしゃっているように、
実話に基づいているだけに、
リアリティーがあります。

戦前戦後、厳しい時代の中でも
玖美と窓子には美しいものを愛する魂と、
それを表現する才能があったのでした。
それは生まれた環境にも大きく影響を受けており、
三つ子の魂百までとはよく言ったものだと思います。

とても仲が良かった二人は、
戦争によって引き裂かれ、
生きる境遇も変わってしまいます。

そして生きる道として選んだのが
かたや打ち掛け、かたやウエディングドレス、
和と洋、正反対に歩んだように見えます。

でも二人が求めたものは
「花嫁さんの衣装」という幸せの象徴だったのだから、
歩みは正反対だったのではなく、
同じ山を別のルートから登っていただけかもしれません。
二人が大阪で再会し語り合っている場面が、
私には、山の頂上で握手を交わしているように感じられました。

この本を読んで、
結婚式の司会者でもあったのに、
私ときたら披露宴というものの
上っ面だけを見ていたのかもしれないと思いました。

楽しいこと、美しいことが
ことごとく封印された戦争の時代。
それを体験した玖美と窓子が、
花嫁衣装にどれほどの思いを込めていたか。

私は本を読むときにカバーをかけます。
どこにでも持ち歩いて読むので、
本を汚したくなくて。
この本を読み終わってカバーを外して気がつきました。
表紙の、著者名の上に「おしあわせに」と書かれていることに。
この言葉は作中にも出てきます。
人様に対する言葉かけのなかでも、
なんという優しい言葉でしょう。

桂由美さんのことを何も知らなかったので、
ただ綺麗だなぁと思っていた桂さんのウエディングドレス、
今後はもっとしっかり拝見します。

タイトルの華やかさ、甘やかさだけで敬遠せず、
男女を問わず多くの人に読んでもらいたい小説だと思いました。
今、しあわせに暮らしていること、
何もなく平凡に暮らせる時代のしあわせも感じられます。

ドラマ化、もしくは映画化してもらえると嬉しいなぁ。
ふんだんに桂由美さんのウエディングドレスが見られるだろうから。

それにしても…
この小説を読み終わると、
無性にウエディングドレスが着たくなるのが困りものです。
ああ、着てみたい!
桂由美さんのウエディングドレスを着たいよう!!
今、この年で、この状況(既婚)でも。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
『私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。』購入サイトはこちらAmazonでも購入できます


OtherBook

千波留の本棚

働く女子の気持ちがよくわかる

とにかくうちに帰ります(津村記久子)

千波留の本棚

人は一人では生きていけない

川っぺりムコリッタ(荻上直子)

千波留の本棚

女性とはずいぶん強くたくましいもの

おらおらでひとりいぐも(若竹千佐子)




@kansaiwoman

参加者募集中
イベント&セミナー一覧
関西ウーマンたちの
コラム一覧
BookReview
千波留の本棚
チェリスト植木美帆の
[心に響く本]
橋本信子先生の
[おすすめの一冊]
絵本専門士 谷津いくこの
[大人も楽しめる洋書の絵本]
小さな絵本屋さんRiRE
[女性におすすめの絵本]
手紙を書こう!
『おてがみぃと』
本好きトークの会
『ブックカフェ』
絵本好きトークの会
『絵本カフェ』
手紙の小箱
海外暮らしの関西ウーマン(メキシコ)
海外暮らしの関西ウーマン(台湾)
海外暮らしの関西ウーマン(イタリア)
関西の企業で働く
「キャリア女性インタビュー」
関西ウーマンインタビュー
(社会事業家編)
関西ウーマンインタビュー
(ドクター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性経営者編)
関西ウーマンインタビュー
(アカデミック編)
関西ウーマンインタビュー
(女性士業編)
関西ウーマンインタビュー
(農業編)
関西ウーマンインタビュー
(アーティスト編)
関西ウーマンインタビュー
(美術・芸術編)
関西ウーマンインタビュー
(ものづくり職人編)
関西ウーマンインタビュー
(クリエイター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性起業家編)
関西ウーマンインタビュー
(作家編)
関西ウーマンインタビュー
(リトルプレス発行人編)
関西ウーマンインタビュー
(寺社仏閣編)
関西ウーマンインタビュー
(スポーツ編)
関西ウーマンインタビュー
(学芸員編)
先輩ウーマンインタビュー
お教室&レッスン
先生インタビュー
「私のサロン」
オーナーインタビュー
「私のお店」
オーナーインタビュー
なかむらのり子の
関西の舞台芸術を彩る女性たち
なかむらのり子の
関西マスコミ・広報女史インタビュー
中村純の出会った
関西出版界に生きる女性たち
中島未月の
関西・祈りをめぐる物語
まえだ真悠子の
関西のウェディング業界で輝く女性たち
シネマカフェ
知りたかった健康のお話
『こころカラダ茶論』
取材&執筆にチャレンジ
「わたし企画」募集
関西女性のブログ
最新記事一覧
instagram
facebook
関西ウーマン
PRO検索

■ご利用ガイド




HOME