ウエディングドレス(玉岡かおる)
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おしあわせに 玉岡かおる(著) ダッシュで買い求めた玉岡かおるさんの最新刊『ウエディングドレス』
表紙から受ける印象が、これまでの玉岡先生の作品とは全然違います。 なんという夢夢しさよ。 小説の舞台は大阪城を見上げることができるガーデンテラスを持つレストランから始まります。 その時点で、「あれ?これ実在のお店かな?今度行ってみたいな」と、自分の生きている世界と近しさを覚えました。 東京の女学校で仲良し同級生だった二人が、久しぶりに再会し、語りあう。
一人は、世界中の女性に愛されるウエディングドレスを製作し、国際的に活躍するファッションデザイナーの佐倉玖美。かたや、婚礼貸衣装業の草分け的存在とし、結婚式の一つの様式を築いた服飾研究家、田代窓子。 東京と関西に分かれて生きてきた二人の久しぶりの再会では、女学生時代の思い出から戦争体験へ、自身の結婚、そして夢の実現へと話題は尽きないのだった。 本の帯や広告にも書かれていますが、佐倉玖美は現在もなおブライダル界に燦然と輝くファッションデザイナー桂由美さん。
窓子さんにもモデルがいるのかもしれませんが、私は存じ上げません。 桂由美さんが「私の50年のデザイナー人生が一気によみがえり、思わず涙がこぼれました」とおっしゃっているように、実話に基づいているだけに、リアリティーがあります。 戦前戦後、厳しい時代の中でも玖美と窓子には美しいものを愛する魂と、それを表現する才能があったのでした。 それは生まれた環境にも大きく影響を受けており、三つ子の魂百までとはよく言ったものだと思います。 とても仲が良かった二人は、戦争によって引き裂かれ、生きる境遇も変わってしまいます。 そして生きる道として選んだのがかたや打ち掛け、かたやウエディングドレス、和と洋、正反対に歩んだように見えます。 でも二人が求めたものは「花嫁さんの衣装」という幸せの象徴だったのだから、歩みは正反対だったのではなく、同じ山を別のルートから登っていただけかもしれません。 二人が大阪で再会し語り合っている場面が、私には、山の頂上で握手を交わしているように感じられました。 この本を読んで、結婚式の司会者でもあったのに、私ときたら披露宴というものの上っ面だけを見ていたのかもしれないと思いました。 楽しいこと、美しいことがことごとく封印された戦争の時代。 それを体験した玖美と窓子が、花嫁衣装にどれほどの思いを込めていたか。 私は本を読むときにカバーをかけます。 どこにでも持ち歩いて読むので、本を汚したくなくて。 この本を読み終わってカバーを外して気がつきました。 表紙の、著者名の上に「おしあわせに」と書かれていることに。 この言葉は作中にも出てきます。 人様に対する言葉かけのなかでも、なんという優しい言葉でしょう。 桂由美さんのことを何も知らなかったので、ただ綺麗だなぁと思っていた桂さんのウエディングドレス、今後はもっとしっかり拝見します。 タイトルの華やかさ、甘やかさだけで敬遠せず、男女を問わず多くの人に読んでもらいたい小説だと思いました。 今、しあわせに暮らしていること、何もなく平凡に暮らせる時代のしあわせも感じられます。 ドラマ化、もしくは映画化してもらえると嬉しいなぁ。 ふんだんに桂由美さんのウエディングドレスが見られるだろうから。 それにしても… この小説を読み終わると、無性にウエディングドレスが着たくなるのが困りものです。 ああ、着てみたい! 桂由美さんのウエディングドレスを着たいよう!! 今、この年で、この状況(既婚)でも。 ウェディングドレス
玉岡かおる(著) 幻冬舎(2016年) 世界中の女性に愛されるウエディングドレスを制作し、国際的なファッションデザイナーとして活躍する佐倉玖美。草分け的な婚礼貸衣装業を展開し、結婚式のひとつの様式を築いた服飾研究家の田代窓子。生い立ちも性格も体つきも対照的な女学校の同級生。「夢」と「自立」をめぐる女たちのレジスタンス! 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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