Y(佐藤正午)
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![]() あの日あの時あの場所で…テーマは「人生の岐路」 Y
佐藤正午(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。今回ご紹介するのは、佐藤正午さんの『Y』。
タイトルから内容を類推しやすい小説もありますが、『Y』からどんなお話を連想されるでしょう? 私は最初、重要な登場人物のイニシャルかと思いました。我ながら発想が貧困だなァ。 答えを言ってしまいますと、”ワイ”という音やアルファベットの意味ではなく、表記の印象が意味を持つのです。それは「人生の岐路」。 誰しも、人生の一本道が”Y”の文字のように分かれるポイントを通過してきているはず。振り返ってみた時、「ああ、あの時右を選んでいて本当に良かった」と思える幸せな人もいれば、 「あの時反対を選んでいたら自分の人生は変わっただろうに」と悔やむ人もいるでしょう。 ”この小説の主な登場人物は、秋間文夫と北川健、そしてその家族や仕事仲間。彼らの運命は1980年9月6日(土)、雨の下北沢駅で交錯する。
彼らが乗った(あるいは乗らなかった)電車は次の駅に向う途中、踏切で立ち往生していたトレーラーと衝突。積荷だった可燃性の液体が炎上し、電車の先頭車両付近の乗客の運命は大きく変わってしまう……。 それから18年後の8月、秋間文夫は奇妙な電話を受ける。北川と名乗ったその男は「君とは親友だった」という。だが秋間は北川という男に覚えがなかった。 その後秋間は、北川の秘書を通じて、1枚のフロッピーディスクと、少なくない現金を受け取ることになった。フロッピーディスクにはある奇妙な物語が収められていた。 にわかには信じられないその話に秋間は徐々にのめり込んでいく……” (佐藤正午『Y』を私なりに要約しました) 次時を遡り過去へ行き、今や未来を変えようとする話は、他にもいろいろあります。有名なところでは映画『バックトゥーザフューチャー』や『ターミネーター』。
私が読んだことがある小説では、スティーブン・キング『11/22/63』や北村薫『スキップ』『ターン』『リセット』などがすぐに思い浮かびます。 このテーマが映画や小説になんども取り上げられるのは、「あの時ああしておけば良かった」「あの時に戻ってやり直すことができたら!」と思う人が多いからではないでしょうか。 それが叶わないことは百も承知。だけど、やっぱりあの時に戻ってやりなおしたら人生はきっと変わっただろう……と。 この小説の中で私が一番好きなのは、たとえ運命が変わったとしても、縁のある人、自分にとって大切な人とは、必ず出会う定めだと書かれていた部分。今まで以上にご縁を大事にしようと思いました。 『Y』は小説の中にもう一つ小説があるような構造になっていて、何が事実なのかクラクラしてきます。でもそれが妙に心地よい。とても面白い小説でした。 【追記】 先日(2017年7月19日)、芥川賞・直木賞の受賞者が発表されました。 直木賞は佐藤正午さんの『月の満ち欠け』が選ばれました。 ご受賞、おめでとうございます。 Y
佐藤正午(著)角川春樹事務所 ある晩かかってきた一本の奇妙な電話。北川健と名乗るその男は、かつて私=秋間文夫の親友だったというが、私には全く覚えがなかった。それから数日後、その男の秘書を通じて、貸金庫に預けられていた一枚のフロッピー・ディスクと、五百万の現金を受け取ることになった私はフロッピーに入っていた、その奇妙な物語を読むうちにやがて、彼の「人生」に引き込まれていってしまう。この物語は本当の話なのだろうか?時間を超えた究極のラブ・ストーリー。出典:楽天 ![]() ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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