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白い犬とワルツを(テリー・ケイ)

白い犬とワルツを
テリー・ケイ(著)
『白い犬とワルツを』が良いらしい、と評判を聞いたのは多分10年以上も前のこと。

評判の小説なのでドラマ化され、そのドラマも好評で、日本でも1995年と1997年にNHKで放送されたそうですが、私はいずれも見ていません。だから、タイトルだけで内容を全く知らずに過ごしていました。

そして、いつか読もう読もうと思っていた作品を今やっと読み終えることができました。
この小説の主人公は81歳のサム・ピーク。57年連れ添った愛妻を亡くしたところから物語が始まる。

妻コウラの死はあまりに突然で、心の準備が全くできていなかったサム。そんなサムの前に白い犬が現れた。

どこからともなく現れ、サムが与える食事を食べると、どこかに行ってしまう白い犬。二人(?)の距離は少しずつ縮まって、いつしか白い犬はサムの心を慰める存在となった。

サム以外の人には姿を見せない不思議な白い犬。子どもたちの愛情に感謝しながらも、一人で余生を過ごそうとするサムと、白い犬の物語。
この小説では、「白い犬」が実在するのか、もしかしたら老人サムの幻覚なのではないのか、わざとわかりにくく書いてあります。

だから途中までは読者も、サムの子どもたち同様、迷いながら読むことになります。

そして小説の最後でも「白い犬」は不思議な余韻を残します。

そのあたりが、この作品が「大人の童話」と呼ばれる所以なのではないかと思います。

この小説を読んで感じたのは、ひとの余生を支えるものは「回顧」なのかも知れないということ。

子どもの頃や青年時代の思い出。
サムが振り返る思い出の数々は、とても美しく愛おしい…。

私が、この小説の評判を聞いてすぐに読まずに、今この年齢で読んだことに、巡り合わせを感じました。

じんわりとした、なんとも言えない感動を覚えています。

もし10年前にこの作品を読んでいたら、今と同じことは感じなかったでしょう。

私が一番じーんとしたのは、サムが同窓の女性と再会し、かわす会話です。人生の黄昏、私は誰と何を語ることになるのでしょう。

私にも「白い犬」が現れてくれるように、しっかりと生きていかなくては。
白い犬とワルツを
テリー・ケイ(著)
:新潮社 (1998)
長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。犬は、サム以外の人間の前にはなかなか姿を見せず、声も立てない―真実の愛の姿を美しく爽やかに描いて、痛いほどの感動を与える大人の童話。 出典:amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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