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ごくらくちんみ(杉浦日向子)

ごくらくちんみ
杉浦 日向子(著)
出版社:新潮社 (2006)【内容情報】(「BOOK」データベースより)未婚の母を決意したタマヨが食べたいという「たたみいわし」。幼なじみの墓参の帰りに居酒屋で味わう「かつおへそ」。元放蕩息子のロクさんが慈しみつつ食す「ひょうたん」。ほかにも、「青ムロくさや」「からすみ」「ドライトマト」など68種。江戸の達人が現代人に贈る、ちんみと酒を入り口にした女と男の物語。全編自筆イラスト付き。粋でしみじみ味わい深い、著者最後の傑作掌編小説集。(出典:amazon
杉浦日向子さん。
お名前とお顔はきっちり一致していましたが、
著作を読んだことがありませんでした。

亡くなられて10年、
初めて杉浦さんの作品に向き合いました。

『ごくらくちんみ』は、
杉浦さんの最後の作品なんですって。
タイトル『ごくらくちんみ』は極楽珍味とも読めるし、
ごく楽チン味とも読める、ことば遊びが含まれています。

紹介されている珍味は68個。
たたみいわし、とうふよう、ふなずし、みみがー、
くじらベーコン、ゆべし、からすみ あたりは
食べたことがなくても、見たことや聞いたことはあります。

しかし、さなぎ(?!)、うばい、いぬごろし、もうかの星、
と来た日には、
「それって何ですか?」
「本当に食べ物なんですか?」
「いったいどんな色、形なんですか?」と
質問攻めにしたくなります。

ご安心めされい。
まずは最初にイラストで、そのあとは文章で、
それぞれの正体や、形、色、味わいが、
しっかりと書き込まれております。
しかもそれぞれ、これ以上 合うものはないだろうという
お酒とともに。
杉浦さんは相当のグルメだったみたいですねぇ。

と書くと、普通の珍味紹介本だと思うでしょう?
でも、そうではないの。
『ごくらくちんみ』の面白いのは、
すべて小説になっていること。
それぞれ1300文字、
原稿用紙3枚ちょっとの中に、
「珍味」を肴に飲む人たちと、
それぞれの人生模様が盛り込まれているのです。
それはそれはお見事。

すでに病気が深刻になり、
長編が書けなくなっておられたそうですが、
たった1300文字の中に、
さらりと書き込まれたいろいろな人生は、
意外なぐらいしっかりとした余韻を残します。

小説は長ければ良いというものじゃないんだな。
それは人生も同じだな。

杉浦日向子さんの享年は46。
着物がよく似合う美人さんでしたねェ。
今ごろ天国で一献召されているのかも。

好き嫌いが多い私ではありますが、
巻末に付けられた
⭐︎「ごくらくちんみ」お取り寄せガイド⭐︎を活用して、
杉浦さんに献杯してみたい。
まずは「鮭の酒びたし」あたりから。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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