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一日一生(酒井雄哉)

一日を一生だと思って生きよう

一日一生
酒井雄哉(著)
昨年の夏、毎日ワクワクさせてくれたリオオリンピック。選手一人一人に物語があり、競技の結果にかかわらず、胸が熱くなりました。

中でも印象に残っているのは、重量挙げ女子48キロ級の三宅宏美さん。

188キロを挙げ、満足そうな笑顔を浮かべながら、競技場を後にしようとして、「あ」というように振り返った三宅さん。バーベルのところに駆け戻り、頬を寄せながら重り部分を撫でていた姿には本当に感動しました。

三宅選手の声は聞こえなかったけど、「ありがとうね」と言っていたのだと思います。じーん。

昨年末ごろ、その三宅選手のインタビュー記事を読みました。2012年、2015年に腰痛や膝の痛みに襲われ、練習もままならない時、出会った本があると。それが酒井雄哉さんの『一日一生』。

酒井雄哉さんは比叡山飯室谷不動堂長寿院の住職で、約七年かけて約四万キロを歩く荒業「千日回峰行」を二度も満行した方です。

『一日一生』はその酒井さんの優しい語り口そのままで、人生について書かれた本。ひとことでまとめれば、一日を一生だと思って生きよう、という呼びかけです。

それを読んで三宅宏美さんは、気持ちが切り替わったのだそう。毎日の終わりが一生の終わりだから、悔いのない練習をするようになったんですって。その一日一日の結果がリオオリンピックの銅メダルだったわけです。

私は三宅さんのインタビューを読んで、『一日一生』を手に取りました。

酒井さんは難行を達成したすごい人なのでしょうが、全然偉そうではなく、押し付けがましくもありません。小春日和の座敷で、優しい住職さんのお説法を聞いているような気分で読めました。

それはもしかしたら、酒井さんのご経歴によるのかも。1962年生まれの酒井さんは、兄弟が多く誇れる学歴はありません。結婚後2ヶ月ほどで奥様を亡くします。そのいきさつは、はっきりと書かれていないけれど、どうやら奥様は自殺されたようです。

酒井さんが得度したのは四十歳のとき。どう考えても早いとは思えません。でも「一日一生」を過ごしているうち、皆に仰ぎ見られる存在になりました。

とはいえ一日はドラマティックである必要はなく、なんでもない毎日のことを着実に積み重ねることがとても大切なことと何度も繰り返しておられるのが印象的でした。

酒井さんは千日回峰行で大いなる自然の中を歩いているうちに、人の一生の短さを感じます。

幼くして亡くなってしまう人も、百歳まで生きる人も、自然(歴史と言いかえてもいいかも)の大きさから見ればそんなに差はないのではないかともおっしゃっています。

人の命は短い。それなら何の意味もないかといえばそうではなく、自分の行いはなんらかの結果を生むと断言されています。

その結果はすぐに現れるかもしれないし、自分が亡くなってから、何代もあとに現れるかもしれない。命は繋がっている。だからせっかく授かった命を大切に……

酒井さんは2013年に亡くなられましたが、その言葉はきっと後世にも残ることでしょう。

分厚くなく、書かれている言葉も易しいので、すぐに読めます。落ち込んでいる時、迷っているときにお読みになると良いかもしれません。
一日一生
酒井雄哉(著) 朝日新聞出版
現代の“生き仏”と称される酒井雄哉・大阿闍梨の慈雨の言葉。なぜ生きるのか。どう生きるべきか。苦しみや死をどう受け止めたら良いのか。人生に迷い悩むすべての人に。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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