ご立派すぎて(鈴木輝一郎)
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鈴木輝一郎(著) お見合い経験はおありですか?
私はありません。 お見合いがこんなにも 波瀾万丈、奇妙きてれつな人との出会いの場なら、 後学のため一度くらいはしておけば良かった。 そう思わせてくれるのが鈴木輝一郎さんの『ご立派すぎて』。 鈴木さんはお見合い歴30回以上なのですって。 つまりはその数だけ、 不調に終わった経験をお持ちということ。 タイトル『ご立派すぎて』は お見合いの断り文句なんですってね。 確かに、 「ご立派すぎて私などにはもったいないかたです」と言えば、相手を傷つけず、仲人の面子も保てます。 本音とは別に、こういう言葉でやんわり断るところが 日本人らしいといえましょう。 丹波十四朗は29歳。 実家の建材店をを手伝いながら、 小説家になることを夢見ている。とはいえ、新人賞に応募しても、 結果は伴っていない。
それでもあきらめたくない十四朗にとって、 結婚など考えてもみないことだった。しかし、世話焼きで口のたつ伯母に丸め込まれ、 お見合いをすることを決意した。まさか、その先何十回も 「ご立派すぎて」と言われようとは考えもせずに。 この小説、著者は「フィクション」と断っていますが、 どう考えても鈴木さんの実体験を元にした、 限りなくノンフィクションに近いフィクションだと思います。
そのせいか、十四朗の言動の一つ一つにリアリティがあります。 小説家志望ということで、ロマンティックなところがあり、世間知らずでもある。良かれと思って、発する言葉がとんでもない。 もし私が仲人さんだったら、 テーブルの下で何度も脚を蹴りまくることでしょう。 アホすぎてなんだか いとおしい。 十四朗にだんだん情がわいてきて、 応援せずには居られなくなります。 十四朗だけでなく、彼の家族、 特にお見合い話を持ってくる パワフルな叔母さんの含蓄深い語録も楽しい。 また、お見合いと平行して進行する、 十四朗が応募した文学賞の行方。私は十四朗と一緒に泣きました。 十四朗は無事に結婚相手を見つけられるのか? 小説家として日の目を見ることができるのか? おもしろいので是非ご自分で読んでください。 結果はどうあれ、 人生あきらめちゃイケマセン。 継続は力なり。 何事も続けていきましょう、と、 そんなエールももらえる小説でした。 ご立派すぎて
鈴木輝一郎(著) 講談社 (1998) 結婚する気になった男、丹波十四朗、29歳。世話焼きの伯母が次から次へとお見合い話を持ってくるが、悪戦苦闘、連戦連敗の地獄に迷いこむ。厳しい“お見合い戦線”で勝ち抜く秘訣は何か。お見合い歴30回以上の著者だからこそ書ける本格お見合い小説。お見合いの実態を暴いて大爆笑まちがいなしの傑作長編。 出典:amazon ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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