グッバイ艶(南川泰三)
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![]() グッバイ艶
南川泰三(著) 作家・脚本家の南川泰三はもともと放送作家で 「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」を担当していたというのです。
動物好きな私が、いつも楽しみにして見ていたムツゴロウさんの番組を作ったかたかぁ~と手に取ったこの作品の帯には「告白的私小説の最極北!」と書かれていました。 北極じゃなくて極北? 調べてみても、極北という単語は広辞苑には載っていません。 なんとなく「果ての果て」といった感じはわかりますけれどもね。 あらすじは本の帯に書かれているものを、そのまま転記しますね。 1968年冬。童貞だった僕は、酒を飲ませればだれとでも寝る女という言葉を信じ、艶との出会いを果たした 。奔放で危うい性格に戸惑いながらも、人一倍寂しがり屋な彼女に惹かれていく。
だが25年後、過去の秘密を記した日記を残し、艶は逝った……。 酒で破滅に向かった亡き妻との愛憎を赤裸々に描く気鋭の作家の衝撃作。 タイトル「艶(えん)」とは著者の奥さま。
本名は艶子(つやこ)さん。 高校卒業時にはバスト98、ウエスト47(エリザベートより細い!)ヒップ90のナイスバディーで著者との出会いの頃にはすでに毎晩ボトル1本を空にする大酒飲みでした。 ここからは小説同様、呼び捨てにさせていただきます。 この小説は、艶が亡くなる前と後で大きく印象が分かれるようになっています。 亡くなる前は、どうしてこの女性はこんなにも破滅的なんだろうと思わざるを得ない言動ばかり。 飲酒も、酒豪と言うよりはアルコール依存症の領域だと思う。 飲んでいなくても、自由奔放な性格で酔うとますます手が付けられない状態になる艶に著者は手を焼き、振り回されています。 死ぬの、殺してやるの…など、物騒な夫婦喧嘩もしょっちゅう。 著者は何度か離婚を考えながらそんな艶をどこか憎めず捨てきれず… 結局、夫婦として25年も過ごすことになるのです。 最終的には、度を越した飲酒のため艶が肝臓を患って亡くなるところで小説はいったん幕が降りる形に。 ここまで読んだ段階で私は、正直なところ艶が亡くなってほっとしました。 というのは、私は女性だからついつい艶のほうに感情移入して読んでしまうことになるのですが、彼女の感情の起伏があまりにも激しすぎ、壮絶すぎて、くたくたに疲れてしまったのです。 そして読み手をここまで疲れさせるほど荒ぶる艶の生き方の原点は何なのだろう…という疑問を残して小説は折り返します。 後半は、艶の死後、日記が見つかるところから。 残された日記から、少女のころの艶の姿が浮き彫りになりついに、艶が生涯夫に秘密にしていたことまでが明らかになっていきます。 そうして艶に対する気持ちが何とも言えない哀しいものに変化したところで小説は終わり、著者と一緒につぶやいてしまいました。 「グッバイ艶」と。 お勧め度は★★★☆☆ 【おまけ】 小説のストーリーとは直接関係ないけれど艶の実家(新潟)の親戚の会話と著者の実家(大阪)の親戚の会話の内容比較が出てきます。 お互いに育った環境が違うので相手の家族に交じったときに悪気のない会話が「耐えられない!」となる部分がどこの夫婦にもありそうなことで面白かったです。 グッバイ艶
南川泰三(著) 幻冬舎(2011) 一九六八年冬。童貞だった僕は、酒を飲ませればだれとでも寝る女という言葉を信じ、艶との出会いを果たした。奔放で危うい性格に戸惑いながらも、人一倍寂しがりやな彼女に惹かれていく。だが二十五年後、過去の秘密を記した日記を遺し、艶は逝った…。自伝的小説の白眉。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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