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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2024-02-22
生理痛を我慢しすぎると「不妊症」になる?!

不妊治療が保険適応になりました
2022年4月から不妊治療が保険適応となりました。

これを機に、私の勤務するクリニックでの肌感としては、昨年と比して5倍以上の女性が不妊の相談に訪れるようになりました。

不妊治療のほぼ全ての検査や治療が保険適応となりましたが、体外受精などの高度な不妊治療は、43歳迄が適応という年齢制限があります。つまり、43歳を超えると全て自費診療となります。

そこで最近多くみられるのが、30代後半になって「やっぱり子供がほしい」と初めて不妊治療のために婦人科を受診される女性です。

不妊治療が保険適応となり、費用面に関しても敷居がうんと低くなりました。

大まかな計算ですが、人工受精は2万円くらいだったのが5千円程度、体外受精は50万円くらいだったのが15万円程度となり、今までの超高額なイメージからは一転し、「保険適応になるなら不妊治療に挑んでみよう」と感じる患者さんが増えたように思います。

そんな中、不妊治療がきっかけで婦人科を初めて受診する女性も少なくありません。これまで婦人科検診にも行ったことがない女性も大勢いらっしゃいます。
今、大事なことに直面しています
初めて婦人科を訪れる女性が多いことで気付いたことがあります。

学生の頃からのずっと生理痛や生理不順を放置してきた女性が多いことです。

「生理痛は病気じゃない、我慢して乗り切るのが当然」
「生理の量なんて人と比べることなかったから、自分は普通だと思っていた」
「お母さんも生理が大変だったと言ってたので、痛いのが普通だと思っていた」

毎月オムツほどのナプキンを使用するくらい経血量が多くても、他人と比べたことがないため、こんなものなんだろう、と見過ごしてきた可哀想な女性たちが実にたくさんいます。
高校の水泳の授業が休めず、量も多くて痛いのに、怖くても見様見真似でタンポン入れて乗り切った女性もいます。

ひどい生理痛は放置すると後々に子宮内膜症を発症したり、毎月の多い経血量で長年にわたり慢性貧血になっていたり、シンドイ生理は子宮にとって有害であることが余りにも知られていない現状に直面しています。

診察時、「生理痛は大丈夫ですか?」の質問に、ほとんどの女性は「毎月、鎮痛薬使っているからなんとか大丈夫です」と言います。

これは大丈夫ではありません。

中高生の時から生理痛や過多月経ぐらいで体育の授業を休むなと言われ、我慢は当然と盲目的に強制されてきた多くの女性たちが子宮内膜症などを発症して、今、不妊治療を受けています。
若い女性が生理痛を放置して、いつの間にか重症な子宮内膜症を発症しているという症例を実際に多くみかけます。

毎月のように生理痛に悩まされ、イブやバファリンの鎮痛薬でなんとか凌いでいるという女性の皆さま、痛み止め薬だけでは根本的な解決は何も出来ていないのです。

現代女性の10分の1が子宮内膜症にかかってしまう昨今、今のうちに月経量をきちんとコントロールしておかないと、将来的に不妊症や卵巣癌のリスクを抱えることになります。

また、生理が止まってしまったり、周期がバラバラの生理不順も決して放置しないでください。放置すると、疲労骨折や不妊症のリスクとなります。
学校で何も教えてもらっていない日本の女性たち
日本の学校教育では性教育を殆どしていません。

子宮頸がんのこと、緊急避妊ピルのこと、性暴力のこと、予期せぬ妊娠の対応のことなど、日本の女性は自分のカラダを守る術を何も教えてもらっていません。

「性教育」という言葉が受け入れられないのなら、せめて「健康教育」という名の下で最低限の知識を学ぶきっかけを学校教育で設けていただきたいです。

知らないことが問題ではない、知らされていないことがもはや問題である、と、私はこのように日々の婦人科診療で強く感じます。
生理痛は絶対に放置しないで
ツライ生理痛にはちゃんと治療方法があります。

低用量ピルにもいろんな種類があり、血栓症のリスクがある人には血栓の原因となるエストロゲンが含有されていない安全なピルもあります。

これらはPMS(月経前症候群)にも効果があり、安全に内服を継続するために婦人科医の診療を受けながらその女性に適した治療法を模索します。

ツライ生理によって生活の質が脅かされている女性が多すぎる昨今、学生の頃から「我慢を当然」とせずに安心して婦人科を受診してほしいと切に願います。

学生の頃から生理痛をしっかりコントロールしてほしい、こう願って私は全国で講演会で巡っています。

そして、学校の先生方にもちゃんと生理痛について知ってほしいです。
長い生涯にわたって女性が元気に健康にすごせるカラダと心をつくるためにも、若い学生の頃から自分の健康につて正しく理解することが大切です。

将来、悲しく辛い思いをする女性を少なくするために、学校教育で女性の健康について出来ることが無限にあると思います。

『痛くなったらすぐセデ〇』ではなく、すぐ婦人科へ。
『痛みに負けル〇』ではなく、痛みは我慢せずに、気軽に婦人科へ。

どんな些細なことでも気軽に相談してくださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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