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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-05-18
なぜ妊婦は葉酸が必要

葉酸って、なんで必要なの?
葉酸って、いつからいつまで摂るべきですか?
葉酸って、どのサプリが良いですか?
葉酸って、絶対摂らないとダメですか?
葉酸って、足りてないとどうなるの?

私の診察室では、妊活中の女性や妊婦さんから、日々このような質問を受けます。
「赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすため」
妊娠前、妊娠中、どちらの期間でも「葉酸」が大事です。

最大の理由として、胎児が子宮の中で発生して発育していくうえで、「神経管閉鎖障害」のリスクを減らすためです。

「神経管閉鎖障害」は、葉酸が不足すると起こってしまう疾患です。

必要な量の葉酸が足りていないと、脳や脊髄の基となる神経管がうまく作られず、赤ちゃんが脳がない状態(無脳症)になったり、脊髄が背中から飛び出してしまったり(二分脊椎症)、出生後すぐに手術が必要になる場合もあります。
妊娠初期は、お腹の中の赤ちゃんの脳や脊髄の基となる神経管が作られる時期です。このとき、たくさんの葉酸が必要なのです。

また、葉酸は、水溶性ビタミンB群の1つで、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンです。

妊娠中は血液量が増えて貧血にもなりやすいので、予防として必要な栄養素としても葉酸は大事ですね。
日本人の7割は葉酸が足りてない?!
神経管閉鎖障害に大きく影響するのは、妊娠する1カ月以上前から妊娠3カ月までで、この期間は特に葉酸の摂取を、と厚労省は呼び掛けています。

体の中での葉酸の働きは個人差があります。

体の中における葉酸の代謝には「MTHFR」という酵素が関わっていると言われています。

この「MTHFR」の活性は、遺伝子によって決められています。

なんと、日本人の約7割に、この遺伝子に変異があることがわかっています。

このように遺伝子変異のある人は、MTHFRの酵素活性が低く、葉酸を体内で利用できる形にする力が弱く、不足しやすい体質といえるのです。
葉酸サプリは妊娠する1カ月以上前から摂取する必要があります
葉酸は、妊娠する前からの摂取が大事です。

葉酸の摂取が推奨されているのは、妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの期間と言われています。

特に大事な時期は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが低減される「妊活時〜妊娠14週まで」の時期とも言われています。

食事からは「1日240µg」の葉酸にくわえて、サプリメントなどから「1日400µg」の葉酸摂取を推奨しています。

葉酸には、おなかの中の赤ちゃんの細胞分裂を促進する作用のほかに、ビタミンB12とともに赤血球の形成を助ける働きがあります。

妊娠中は母体の血液量は1.5倍くらい増えるし、ママの体から血液を通じて赤ちゃんに栄養や酸素を送り込むため、貧血になるママも多いです。

葉酸は血液を作り出す働きを助けるので、貧血予防のためにも赤ちゃんがどんどん大きくなる妊娠中期から後期にも、実は葉酸が欠かせないのです。
食事とサプリ、どっちの葉酸が良い?
食べ物に含まれている葉酸と、サプリメントに含まれている葉酸では、実は種類が異なります。

食品に含まれているのは「食事性葉酸」で、ほとんどが「ポリグルタミン酸型」 (複数のグルタミン酸が結合した形)です。

食品に含まれるこのポリグルタミン酸型の葉酸は、摂取すると消化酵素によって、「モノグルタミン酸型」 (グルタミン酸が一つ結合した形) となり、小腸の上皮細胞から吸収されます。

食品ごとに消化のされ方が異なりますし、一緒に食べる他の食品によっても影響を受けるので、食事から摂る葉酸の活性を正確に測ることは難しいのです。
サプリメントなどで多く含まれているのは、最初から「モノグルタミン酸型の葉酸」です。

サプリメントの葉酸は摂取したら摂取しただけ体の中で活用されるので、量を守って服用することが大事になってきます。

サプリメントに含有されている「モノグルタミン酸」を過剰に摂取すると、 発熱したり、じんましんが出たり、ひどい場合は呼吸障害などを起こすこともあります。

また、このような葉酸過敏症は、ビタミンB12欠乏症の診断を困難にしたり、亜鉛とくっついて小腸からの亜鉛の吸収を抑えてしまう可能性があるため、食事でもサプリでも葉酸は上限量が決められています。

なので、サプリメントを服用するときは、過剰摂取にならないよう用量をきちんと守って服用するようにしましょう。
どの葉酸サプリでもいいの?
「では、どのサプリメントが良いの?」

この質問は診察室でもよく尋ねられます。

実際にインターネットでは、「先輩ママたちも推奨!」といった広告がそこらじゅうにありますよね。

サプリメントは薬ではありません。あくまで「補助」的役割で、食品の位置付けです。

ただし、サプリメントは栄養バランスが考えられて配合されているので、葉酸サプリにも葉酸以外の栄養素も含まれています。
葉酸サプリを選ぶときに重要なのは、1日分の摂取目安量が「400μg」以上はあることを、一つの基準とすると良いでしょう。

また、妊活中や妊娠中に大事な栄養素は以下の通りです。

鉄分:血液の大事な成分となり、女性の体では不足しやすい
ビタミンB群 :体の中のエネルギー代謝に重要で、体の活力を維持する
ビタミンA、C、E :抗酸化力が高く、細胞の酸化を防ぐ
ビタミンD :カルシウムの吸収をサポートする
カルシウム :精子が卵子と結合する際に使われたり、妊娠中は体内で不足しやすい

妊活中や妊娠初期は、脳神経を形成する働きのある「ヘム鉄」やセロトニンの働きに役立つ「ビタミンD」が大事になってきます。

授乳期なら血液を作るのに必要な「」や「カルシウム」が大事になってきます。

サプリメントを選ぶときにも、その時期にあった栄養素が配合されているサプリメントを選ぶのが大事となってきます。

葉酸とはビタミンB群の一種で、妊娠期においてとても大切な栄養素ですが、その重要性は妊娠期だけではなく、近年では、動脈硬化や脳梗塞など、様々な病気の予防にも欠かせない栄養素であることが分かってきました。

自分の体のことですから、普段から栄養バランスを考えて食事やサプリメントをバランスよく摂取することが大事ですね。
葉酸を豊富に含む食品
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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