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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2022-07-20
ひろこちゃんと私のお手紙のやりとり~1通目~

私はこの夏40歳になりました。そのうち約33年間、ほぼお手紙だけでやりとりしている友だちがいます。幼稚園時代からの幼なじみで、私自身が意識した「はじめての友だち」の、ひろこちゃんです。

ひろこちゃんとお手紙のやりとりを始めたきっかけは、私が小学1年生の夏休みに高知県から兵庫県に引っ越したことでした。

思い返せば、私が小学生や中学生だった1989~1998年というのは、お手紙も電話と同じ連絡手段の1つでした。電話は話す時間が長くなるほどに料金がかかるため、急用や短い用件以外はお手紙で連絡していたように思います。

それがFAXやポケットベル、携帯電話、パソコン、スマートホンと、たった十数年の間にさまざまな通信機器が登場し、普及し、連絡手段が激しく移り変わっていきました。

その間も、ひろこちゃんとは変わらず、お手紙だったんです。
「文通」のことに絞って言えば、ひろこちゃん以外に文通していた人は何人かいます。

私が文通に夢中だった小学生から高校生にかけての頃。学校内で友だちとお手紙交換をしていましたし、お世話になった先生が転勤すると聞けば住所を聞いてお手紙アタックしたり、雑誌で文通相手を探したり。学校卒業で離れ離れになった友だちともするようになりました。

コミュニケーションツールの移り変わりとともに、お手紙からメール、LINEへと移行し、お手紙といえば+αくらいに。また、ライフスタイルの変化などもあって、いつのまにか連絡をとらなくなり、連絡先がわからなくなってしまった人も多いです。

私自身、お手紙でのやりとりにこだわり続けてきたわけではありません。

特に、大学生になると、携帯電話を持つようになり、大学やネットカフェでパソコンを気軽に使えるようにもなったので、メールや掲示板、ブログなどインターネット上の世界の広がりに夢中になった時期もあります。

その間も、ひろこちゃんとは変わらず、お手紙だったんです。
改めて考えると、私の人生にお手紙が欠かさずあったのは、ひろこちゃんのおかげかもしれません。ひろこちゃんとの積み重ねがあったから、今もなお、お手紙をコミュニケーションツールの1つとして持ち続け、さまざまな方々と日常の中で楽しむことができているんだと思ったんです。

そんなことを考える中で、ふと不思議に思ったことがあります。

ひろこちゃんとは、どうしてお手紙だけでやりとりしているんだろう。お手紙のやりとりだけなのに、どうして今もこうしてちゃんとつながることができているんだろう。

そこで、ひろこちゃんと「お手紙」をテーマにいろいろなことを話してみたいと思いました。もちろん、お手紙で、です。ひろこちゃんと私のお手紙のやりとりを連載します。

1通目は「私からひろこちゃんへ」です。
ひろこちゃんへ

こんにちは! いかがお過ごしですか? 今回から何回かに分けて、「お手紙」をテーマに、いろいろ話せたらと思っているので、よろしくね!

(ところどころに敬語がまじっちゃう~~)

今回は「文通の始まり」について話せたらと思っています。今のように、こうしてお手紙でやりとりする始まりのことを覚えてる? 私は覚えてなくて。気づいたら、ひろこちゃんとのお手紙のやりとりが、私の日常の中に当たり前にあったよ。

大きなきっかけは、私が小学1年生の夏に高知県から兵庫県に引っ越したこと。
記憶が間違っているかもしれないんだけど、私の母の写真アルバムの中に、ひろこちゃんのお母さんからのお葉書を見つけたことがあったような気がしていて。もう一度、その写真アルバムの中を探してみたんだけど、見つからなかった。そんなぼんやりとした記憶から、当時はひろこちゃんも私もまだ小学1年生だったから、最初は親同士のお手紙のやりとりから始まったのかなと思ったりして。

ひろこちゃんは何か覚えてることはある?
もう一つ。以前に「懐かしいお手紙が出てきたよ!」と、ひろこちゃんからもらったお手紙のコピーを送ったことがあるけど。また、コピーを送るね。消印を見たら、「平成1(1989)年11月9日」。この頃にはもう、お手紙のやりとりは始まっていたのかな? それからもう33年!! すごいよね。
はっきりとは思い出せないんだけど、小学生や中学生の頃には、今みたいにお誕生日のお手紙と年賀状の年2回だけではなくて、いろいろやりとりしていたのかなって。もう、長年過ぎて、やりとりが当たり前になり過ぎてしまっていて…ひろこちゃんとこんなやりとりをしたな、こんな深い悩みも共有したな、とか。その当時はしていたのかもしれないけど。今すぐに思い出せるものはなくて。
でもね、こうして改めて考えると、ドラマチックなものはなくても、「確かに積み重ねてきたものはある」ということを感じるよ。その根本には、ひろこちゃんのことが大事という気持ちがあるんだとも思った。

お手紙を書くたび、
●幼稚園の制服を着たひろこちゃんの笑った顔
●幼稚園の帰り道
●幼稚園の時に、「行きたい!」と無理を言ってしまって、ひろこちゃんのご家族にサーカスに連れて行ってもらったこと。そのサーカステント内のイメージ
●幼稚園の卒園式か、小学校の入学式の後に、ひろこちゃんの家の前で2人並んで撮った写真
●ある晴れた日に、ひろこちゃんの家に遊びに行ったこと。ひろこちゃんの家のトイレが洋式で、私は当時和式トイレにしか慣れていなかったので、うまくできずにご迷惑をかけたこと
●ひろこちゃんの家の2階で、素敵な白いビーズの指輪を見たこと。その指輪に憧れた気持ち
●中学生の時だったのかな。私が高知に帰った時に2人で会った日のこと。商店街を一緒に歩いたこと
●私の娘が生まれてから、3人で会った日のこと。商店街のおうどん屋さんで晩ご飯を食べて、プリクラを撮ったね
…といったことが、ぱあぁ~っと画像として頭の中に浮かんでくるんだよね。いとおしい記憶。だから、いつも思う。こうしてつながっていられることが、本当に嬉しくて、ありがたくて。ありがとう!!
さっき、「お誕生日のお手紙と年賀状の年2回」と書いたけど。ひろこちゃんもお誕生日のお手紙と年賀状を送ってくれるし、お誕生日のお礼のお手紙もやりとりするから、少なくとも年6回のやりとりが生まれているね。改めて考えると、結構やりとりしているね。

そのたびに、さっき書いたようなことを思い出すから。

あと、長年の積み重ねから、勝手ながら「ひろこちゃんとのこのやりとりは続いていく」という安心感があって。だから、「お手紙をもらって終わり」ではなくて、「次のお手紙を書くまで」の間もずっと想いは続いているんだと思った。
年がら年中、想っているとも言えるかもしれない。会ってなくてもね。

それってなんだかすごいなって。何度も言っちゃうけど、本当にありがとう! そんなことを今回、このお手紙を書きながら思ったよ。

ひろこちゃんはどうかな?

2022.05.30 利絵より
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰

編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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