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藤田 由布
婦人科医 医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-03-18
知ってくださいPMS・PMDD

診察室に入るやいなや、「ワッーーーっ!!」と声をあげて涙を流す女性も珍しくありません。よっぽど辛かったのでしょう。敷居が高かった婦人科にやっと相談に来れてホッとしたのかもしれません。

話を聞くと、月経前に身体と心の不調がピークに達し、いてもたってもおれなかったそうです。
74%の女性がPMSの問題を抱えて生きています
PMS(月経前症候群)は、PreMenstrual Syndromeの略で、全女性の74%がなんらかの症状をもち、全女性の6.5%が社会生活に影響があるやや強い症状に悩み、治療対象であると報告されています。

PMDD(月経前不快気分障害)は、PreMenstrual Dysphoric Disorderの略で、PMSよりも強い精神症状が現れ、日本人女性の1.2%が今日もPMDDで苦しみ、治療が必須な状態なのです。

混乱しやすいのは、PMSと生理痛は違うの?ってよく聞かれます。

ざっくり言うと、生理中に起こる下腹痛や頭痛や嘔気などの症状で知られるのが「月経困難症」。いわゆる生理痛。生理前に起こる不調をPMS、そしてPMSの重症のものをPMDDといいます。

私見ですが、PMSなのかPMDDなのか治療する側にとっては大変重要です。しかし、PMSや生理痛で苦しむ女性にとっては、これらの定義はどうでもいいと思っています。重要なのは、PMSも生理痛も我慢せず、ちゃんと治せるということです。
自己診断してみてください
月経前の症状は個人差があります。PMSの症状は200以上とも言われています。

以下に当てはまる場合で、日常生活に支障がある場合は、婦人科で相談してみましょう。
生理前に体調や心の状態が揺らぐ方へ
なぜ生理前に心が不調になるのか、なぜ生理前に涙が出てくるのか、原因がわかれば気持ちも少しラクになることもあります。

つらい症状に苦しみながら、「生理に付随する症状は我慢するべき」なんて考えないでください。

「生理は我慢するもの」「病気じゃないなら我慢するべき」なんて余計な判断は無用です。今も昔も学校でもちゃんと教えてくれないし、生理を我慢することの危険性を理解している教員は今でも皆無に等しいです。

思い出してください。

生理前や生理中に身体や心がしんどくて体育の時間にうずくまっていたら、体育教師から「怠け者!」と罵られて、罰として校庭を走らされた学生時代。ブルマー世代の女子たちにとって、生理にまつわる‘痛い思い出’はきっとまだまだあるはずです。

現在でも、つらい症状に悩まされている女性は想像以上に多いです。

もし、生理前の症状で辛い思いをしている方で、周囲から理解を得られていないと感じるならば、婦人科にいらしてください。生理周期における女性ホルモンの変動が大きく関係している場合が多いです。

最近ではPMSは知られる用語になってきましたが、周知はまだまだです。
PMS・PMDDの診断
PMS・PMDDで大切なのは、医師による診断をかならず受けることです。

診断は、医師による問診です。月経前のどのくらいの時期に、どんな症状があるのか等が質問されます。ご受診の際は、簡単な記録を用意しておくといいでしょう。

PMSやPMDDの症状を超えて、うつ病やパニック障害など他の精神疾患が潜在する可能性もあるから、自分で判断するのは禁物です。

また、貧血や甲状腺疾患など身体的な病態が隠れている場合も、ちゃんと診察しなければならないのです。

また、いろんな他の慢性疾患が、月経前に増悪して現れることもあるため、月経前症状のみでなく、基礎疾患の管理も大事です。自分で判断せずに、ちゃんと婦人科でご相談くださいね。
PMSとPMDDの治療
ピルは排卵を抑制してくれるので、一般的にPMSに著効します。ピル の中で最も効果があるとされているのが、ドロスポレノン含有ピル、つまり第四世代のピルです。日本で認可されている第四世代のピルはバイエル社の「ヤーズ」か「ヤーズフレックス」の二択になります。

また、最近注目されているのが、血栓リスクとされるエストロゲンが含有されていない「ディナゲスト0.5mg」です。

また、ある1つの製剤はその患者に合わなくても種類を変えると、うまくいく場合があります。なので、婦人科医と密に連携しながら、自分にあった製剤を試していく過程も大事です。精神症状がひどい場合は、精神科医とも連携して治療を進めることが大事です。

誰に遠慮することもありません。主治医に今の症状を率直に伝えて相談してください。治療の判断はちゃんと医師がしてくれます。

脱線しますが、日本では、PMSとPMDDに対しては、ピルは保険適応外というハテナな現状が存在します。

いつも感じる違和感ですが、診療の現場にもっと女性医師の意見が反映されて欲しいと願うばかりです。

これだけの女性が苦しむ生理前の不調が実在する昨今、月経困難症と月経前症候群を保険適応かどうかで区別する必要があるのでしょうか。
PMS・PMDDの薬物療法
比較的軽症で社会生活への影響が軽いのであれば、対処療法としてピルなどのホルモン剤、ロキソニンなどの鎮痛薬、漢方薬などで対応します。

けれども、中等症以上の場合は、精神安定剤やSSRI(セロトニン取り込み阻害剤)といった抗うつ剤が処方されることもあります。

以下を参考にしてみてください
なぜピルが効くの?
ピルは2種類の女性ホルモンが配合されてできた飲み薬です。①エストロゲン(卵胞ホルモン)②プロゲスチン(黄体ホルモン)の2種類です。

避妊目的で有名かもしれませんが、実は、ピルは生理痛にもPMSにも抜群に効果があるのです。

ピルの詳細については、過去コラムもご参照ください→今さら聞けない「低用量ピルって、そもそも何?」

日本では、避妊目的のピル を経口避妊薬(OC)とし自費処方で患者10割負担、月経困難症の治療薬のピルを保険適応で処方される月経困難治療薬(LEP)で患者3割負担、と区別されています。

どちらのピルも内容物は同じなので効果も同じです。どちらのピルにせよ服薬中は排卵を休めることで子宮内膜(生理の時にベリベリと剥がれて生理の血となる)を薄い状態にするため、子宮の中の内膜を薄く保ってくれて、痛み物質(プロスタグランジン)の放出を最小限にしてくれます。

排卵を休めることで月経随伴症状であるPMS・PMDDの症状が起きにくくなり、効果的というわけなのです。
婦人科でご相談ください
日本では、PMS・PMDDの周知はまだまだです。しかし、医師による十分な問診でもって、あなたのライフステージや背景に見合った治療が選択できるのです。

ひどい生理痛はもちろんのこと、生理前にも不調をきたしていると感じるなら、どうか我慢せずに婦人科に相談にいらしてくださいね。

同時に、私たち婦人科医はもっとPMSやPMDDについての理解を広め、学校生活でも社会でも我慢で涙する女性を救わなければならないと強く思います。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-14-14 T・Kビル2F
TEL : 06-6241-5814
https://www.sakumaclinic.com/

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