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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2020-12-16
下書きを経た、お手紙

お手紙を書く時、便箋に直接書き綴りますか? それとも、下書きをしてから清書しますか? 私は主に、便せんに思うままに書き綴りますが、時に下書きをしてから清書することもあります。

お手紙というと、時間も手間もかかるイメージがあるものです。

コラムで「下書きをしてから清書」について書くと、さらにお手紙を書くハードルを上げてしまうかもしれないと危惧したのですが、ウェブで「お手紙 下書き」で検索すると、「下書きをしてから清書する」という個人のブログやネットコミュニティでの書き込みのほかに、マナーの1つとして紹介している記事も見つけました。

「きちんと書かなければならない」「誤字脱字などを防ぐために」など、「お手紙=かしこまった場面で書くもの」になっているからかなと思います。中には、日頃からお手紙のやりとりをしていて、親しい人とのやりとりは「便箋に直接」だけど、かしこまった場面では「下書きをしてから清書」との意見もありました。

確かに、ビジネスやかしこまった場面でのお手紙の場合、マナーとして「途中で間違えたら修正液などはNGのため、最初から書き直し」と言われることがありますから、下書きをしてからのほうがいいかなというところはあるかもしれません。相手との関係性や個人の考え方によると思います。

私はどんな時に下書きをしているのかと言いますと、

(1)相手に伝えたいことを整理したい
(2)ふと思い浮かんだことを書き留めておきたい

という時です。
(1)相手に伝えたいことを整理したい
相手から相談事があったり、自分の気持ちや想いをしっかりと伝えたりしたい場合に、自分の中で気持ちや想いを整理するために下書きをします。

「下書き=このまま相手に渡すのではない」という気持ちになるからでしょうか。気負わず、思うことや伝えたいことを書き出せるような気がします。「伝えたいことはあるけれど、何からどう書き始めたらいいのかがわからない」と悩んだ時にも有効ではないでしょうか。

下書きをしたもので「このままでいい」と思えば、それを書き写すだけでいいですし、後で冷静な視点で読み返すことで「この言葉だと誤解を与えてしまうかも」「ちょっと言いすぎかな」と気づけることがあって、より自分の気持ちに近づけたり、相手に伝わりやすい表現を選んだりすることができます。

夜中に思い立って、SNSに勢いで思ったことを書き綴って、翌朝見たら「あちゃー」と思うことはありませんか?その時の臨場感や勢い、熱量が宿っていいのですが、「こう言えばよかったな」など、少し時間を置いた後だからこそ書けることが出てくるみたいな、それに似た感じかなと思います。
(2)ふと思い浮かんだことを書き留めておきたい
お手紙を書こうと思いながらも、「いつまでに書いて送らなければならない」という期限のないお手紙は、「時間がある時にゆっくりと」と思いながらも、ずるずると先延ばしにしてしまうことがあります。

ただ「あの人にお手紙を書きたい」という想いはあるからでしょうか。無意識下でも相手のことを考えているようで、たとえば電車に乗って車窓の風景を眺めている時に、「あの人にこの風景を見て思ったことを伝えたい」「あの人にこんな話をしたいんだった」など思い浮かんでくることがあるんです。

まるで頭の中でお手紙を書いているみたいだなと、ふと思いました。思い浮かんだままにしてしまうと、家に帰る間にすっかり忘れてしまうので、時々メモしておくようになったんです。いつでも取り出せるように、ペンとコンパクトなメモ帳をカバンに入れて持ち歩いています。

余談ですが、空き時間に喫茶店に立ち寄った時など、そのちょっとした時間に、お手紙を書きたくなるので、最近は「レターブック」という冊子を持ち歩くこともあります。

レターブックとは、さまざまな絵柄、デザイン、質感の紙が、本みたいに一冊にまとめられているものです。1枚1枚を切り離して、便せんとして使えるようになっているので、その時の気持ちや相手によって絵柄を選べる選択肢があるところがいいなあと思っています。絵葉書を数枚持ち歩くというのもいいですね。
前回のコラム「誰宛てでもないお手紙『ある秋の日』」のお手紙は、「今だから書けるお手紙」として自分は何を書きたいだろうと考えるために下書きをしました。

この時も、移動の新幹線や空き時間に立ち寄った喫茶店など、時間をかけながら思うままに書き出していきました。「お手紙を書くぞ」と意気込んだ時より、何気ない時間のほうが、伝えたいことが思い浮かんできます。

「いったんはこの内容で」というものを書き上げたのですが、その書いた内容が自分への問いかけに変わり、「本当にそうなの?」「もっとこうじゃない?」など自問自答が始まり、「自分の本心とズレがあるかもしれない」「今はこのメッセージじゃないかもしれない」となったので、全面的に書き直しました。

当初の内容からはまったく変わってしまいましたが、下書きを経るからこその変化。その変化がおもしろくて、「私はどうして下書きをするんだろう?」と考える中で、このコラムを書いてみることにしました。
高校時代に雑誌の文通相手募集欄を通じて、年齢も職業もさまざまな人たちと文通していました。その頃も時々下書きをしていたようで、当時の日記に下書きが残っていたんです。「こんなことを書いていたんだな」と懐かしいやら、恥ずかしいやら。

自分が書いたお手紙は手元に残らないので、何を書いたのかは投函してしまうと忘れてしまいます。投函して気持ちや想いを手放せることもお手紙のいいところですが、下書きをして残しておくことで、数年後に懐かしく思い出せるのもまた、いいものだなと思いました。
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰

編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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