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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2020-11-18
誰宛てでもないお手紙「ある秋の日」

知っている誰かだから書けることがありますが、具体的な誰かではないから、その時々に感じたり思ったり考えたりしたことを気ままに書けるということもあります。

そんなふうに、誰宛てでもなく、気ままに書いたお手紙を、時々掲載しています。

第2回目は、「ある秋の日」のお手紙です。10月末に書きました。
こんにちは。お元気ですか? 「今年も残すところ、あと……」と言いたくなる季節になりました。

今年は「年が明けた!」と思ったら、突如として新型コロナウイルス感染症が発生したので、気づいたら「もう、半年が経っていた」、そうこうしていたら「もう、年末やん」という感じで、早かった!! 早かったけれど、その短期間にいろんなことがあり過ぎて、今もなお、なんだか長い夢を見ていたような気がしています。

どんな毎日をお過ごしでしたか?

私は、緊急事態宣言が解除されてから生活を少しずつ立て直してきて、9月くらいに「ああ、なんか戻ってきたかな」と思っていた矢先、父が手術する可能性が出てきました。

実は、昨年末も癌のために入院・手術をしていたんです。母も祖母も癌で入院した途端に、急激に容態が悪化していき、家に帰ってくることはなかったので、父もそうなるのではないかと不安な日々を過ごしていたのを思い出します。
一緒に過ごせる時間が限られていることを考えるようになると、一日一日がとても大切に感じられました。いい時間を一緒に過ごすことができればと、自然とお互いを思いやることができていた気がします。

その後、無事に癌を摘出でき、父は家に帰ってくることができました。すると、一日一日を大切に生きていきたいと思っていたはずなのに、気づけば日々の忙しさに追われ、優しくできない日々に戻ってしまっていたんです。

それが再び、父の病気に直面して、一緒に過ごせる時間は有限であることを実感し、あの時の気持ちを思い出すことができました。

毎日毎日さまざまなニュースを見ながら、その渦中にいるそれぞれの立場の人のことを想像すると、私が「日常」と思っている日々のほうが、むしろ「非日常」なんじゃないかとさえ思えてきます。

私自身も、この1年を振り返っただけでも、思いがけない出来事がいくつもあって、「人生、いろいろだな」と思っていました。

目の前にいるあの人も、もしかしたらしんどい渦中にいるのかもしれない。そう想像すると、出会う人に、やさしくありたいなと思います。
お店のレジで「ありがとうございます」という時もちゃんと気持ちを込めて目を見て伝えようとか、しんどそうかなと思う人を見かけたら気持ちが楽になるような声をかけてみようとか、最近連絡を取っていないなという人に「元気にしている?」と連絡してみようとか。

そういえば、未婚で娘を出産することを決めた時、応援してくださる方々もいましたが、なかなか傷つくことを言われる場面も多々あり、「この子は祝福されないのか」と落ち込んでいたことがありました。

そんな時、たまたま道ですれ違っただけの、知らない人から「もうすぐかしら。楽しみね」と声をかけてもらって、心が救われたことがありました。そんなふうに、同じ今を生きている者同士、みんなが影響を与え合って生きているのだと思います。

そして、ほんの一瞬、道ですれ違っただけでも、誰かを救うことがあるのだから、出会う人にやさしくありたい。そのためにも心のゆとりが大事だから、自分も大事にしよう・・・・・・そんなことを考えていました。

日々いろいろなことがありますが、どうかご自愛くださいね。

小森利絵

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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰

編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
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『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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