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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2019-09-27
いろイロな表現「旅先からのお手紙」編
思い思いに書いたお手紙には「その人らしさ」が表れるものだと思います。

便せんや葉書など何に書くか? どんな内容を書くか? どんな方法で表現するか? など、人それぞれ。いろいろな人の表現を見てみたいと、お手紙を募集することにしました。

今回のテーマは「旅先からのお手紙」。2019年6月から8月までの間に「旅に出る」という関西在住の方から届いたお手紙と、娘と私のお手紙を紹介します。

<東京都から、松岡さんより>
自分の世界観を表現した絵手紙
想像がもくもくっと膨らみ、広がる
「関西ウーマン」でインタビュー取材させていただいた松岡幸貴さん(⇒取材記事はこちら)。

取材時に「カンタ刺繍(インドの女性が家族のためにする手仕事)を習いに、関東に行く」とおっしゃっていたので、この絵葉書を受け取った瞬間、行かれたのだと「おぉ!」とトキメキました。

松岡さんは刺繍作家で、独特な存在感を放つ刺繍作品をつくっておられます。最近、水彩絵の具で絵を描かれるようになったとのことで、水彩絵の具で描いた絵葉書をくださいました。松岡さんの刺繍や絵、日々のイメージが、この1枚に宿っているように感じました。

たのしい、ほのぼの、かなしい、さみしい、プンプン、しょんぼり・・・日々のいろんな出来事、いろんな感情がつながっていくような。さまざまな人たちがつながっていくような。左側の人と犬の姿は、松岡さんと、取材時に会った犬さんかなと思いながら。もしかしたら、旅先の出来事やイメージを表現しておられるのかなあとも。

「こうかなあ」「ああかなあ」とイメージする時間も、また楽しい。今度お会いした時に聞いてみたいと、次につながる気持ちも芽生えました。

松岡さんにこの絵葉書について聞いてみると・・・

『東京で感じたことは自分がやってきたことがいかに自分らしくて楽しい、ということでした。やりたいことは自分の中にあることに気づきました。

そして、立ち寄ったカフェはもう閉店間際だったので、キャロットケーキしかなくて、頼んでみたら美味しすぎるケーキだったのです!その美味しさとホッとしている気持ちをお伝えしたくなりました』


とのことでした。

<沖縄県から、春瀬さんより>
旅先で見つけた、旅先ならではの絵葉書
想像の中で、小旅行気分に浸れた
ジンベイザメやエイ、カクレクマノミ、ルリスズメダイ、カメなどが泳ぐ、沖縄の海の珊瑚礁。やさしくて温かいタッチで描かれた絵葉書です。受け取った瞬間、日常の中でちょっぴりリゾートにいるような気分に。

「沖縄の浜辺で太陽を浴びて泳いで、疲れたら砂浜で昼寝をする、そんな時間を過ごしました」という一文を読むと、春瀬さんがそうされている様子が思い浮かぶと同時に、私自身もその場にいてそんな時間を過ごしているイメージも広がって、癒されました。

「沖縄より」ではなく、「沖縄・豊見城(とみぐすく)市より」と書いてくださったおかげで、「沖縄のどのあたりにあるんだろう?」「どんなまちなんだろう?」とふと気になって調べてみたことにより、今後何かで見聞きした時に「あのまちだ!」と思いを寄せられるまちが1つ、増えました。

春瀬さんにこの絵葉書について聞いてみると・・・

『大阪で葉書を用意していこうかとも思ったのですが、その土地ならではのテイストのレターセットやポストカードがあればいいなあと思い、現地で探すことにしました。

以前、何かを「小森利絵様・千絵様」と、おふたりの宛名で送った時に千絵ちゃんが喜んでくれたとの記憶があり、おふたり宛にしようと思い、千絵ちゃんが「わあ!」と喜んでくれそうな絵柄にしようと探しました。道中立ち寄った道の駅、国際通りのショップ、お土産物屋さんなどをのぞき、3軒目でこれにしようと決めました。

書きながら考えていたのは、「作家さんの名前、知らないなあ」「もし次に千絵ちゃんに聞かれたら何も答えられないじゃないか」ということで、答えられるように後で調べました(笑)。

沖縄の「豊見城(とみぐすく)市」と書いたのは、沖縄ではよく「何市」かにより、表情が違うなと感じることが多いこと、読み方が関西の人間からすると非常に特徴的なので、ふりがなも添えました』


とのことでした。

娘にも受け取った感想を聞いてみると、「パッと見て、かわいいなあと思いました。お手紙を読んで、『沖縄っていいなあ』『砂浜で昼寝をするって、気持ちよさそうやなあ』と思いました。こんなにも時間をかけて、私のことを想って書いてくれているのを知ってすごいなあ、嬉しいなあと思いました」とのことでした。

<兵庫県から、娘より>
旅先に到着したてほやほやのお手紙
臨場感があり、ドキドキわくわくする
夏休み中、小学生の娘は「青少年ペンフレンドクラブ(PFC)」のお手紙合宿(2泊3日)に友だちと一緒に参加。合宿先の淡路島に着いてまもなく書いてくれた葉書です。

書いている時の気持ちがストレートに表れています。旅から戻ってきた時、「旅が始まる前はこんな気持ちだったみたいだけど、その後どうだった?」と聞いてみたくなりました。

無地のハガキですが、いろんな色の斜め線が入るだけで、かわいらしい印象に仕上がります。「ち」のハンコは、その時間中に掘ったという消しゴムはんこです。

娘にこの葉書について聞いてみると、「線を入れたほうがかわいいし、賑やかになると思った。そうしたら、見た時に、楽しい気持ちになると思ったから」とのことでした。

<島根県から、私より。娘宛に書きました>
そのまちの周辺地図を封筒に
旅先の様子がぎゅっと詰まっている
空港から宿泊先に移動するバスの中で、まちにまつわる懐かしい思い出が蘇ってきたので、突然「書きたい!」という気持ちに。お手紙を書こうとは思っていなかったので、便箋も持っておらず、郵便局はしまっている時間帯でどうしようと考えました。

たまに、ホテルオリジナルの便せんと封筒が客室に1枚ずつある場合があるのですが、今回の宿泊先では無地の便せんが1枚だけ。

その時、ふと思い出したのが、以前「お手紙とわたし」で取材した魚野みどりさん(⇒記事はこちら)が、おでかけ先で観光マップを入手して、お手紙アイテムとして使っているというお話でした。

ホテルにあった観光系のフライヤーもいいなあと思ったのですが、周辺地図なら訪れたまちの情報がたくさん詰まっています。「ここに泊まったよ」「ここに行った」「お城も見た!」など地図を見ながらおしゃべりできるかもと思い、周辺地図を封筒として使いました。のりも持っていなかったので、切手で封を閉じました。
「旅先からのお手紙」を受け取ってみて、その人らしさはもちろん、その時ならではのものが宿っているなあと思いました。また、情景描写などが具体的であればあるほど、読み手もその場にいるような気分になれるから、不思議です。

特に「キャロットケーキとアイスオーレ」「沖縄の浜辺で太陽を浴びて泳いで、疲れたら砂浜で昼寝をする、そんな時間を過ごしました」という一文にぐっときました。「ケーキとアイスオーレ」ではなく、「“キャロット”ケーキ」とついているところに、思わずニマッと。

まるで俳句みたいです。俳句は、景色や状況などを端的かつ的確に表現するものですが、その景色を見たり、状況下にいたりする書き手の気持ちも伝わってきます。

気持ちを具体的に「楽しい」「癒された」といった言葉で書かなくても、景色や状況をどう捉えて、どんな言葉で表現するかというところに、書き手の気持ちがちゃんと宿っているから、伝わってくるんだと思いました。

そして、お手紙を送ってくださった松岡さん、春瀬さんの想いを聞いて、思ったことがあります。

お手紙って「お手紙として見える部分」だけではなく、「この人にお手紙を書こう」と思ったところから「お手紙」は始まっていて、「便せんや葉書など何に書くか? どんな内容を書くか? どんな方法で表現するか?」など考えたり行動したりしたことが積み重なって表現されるものだということ。

お手紙を受け取る側として、そこに宿る想いを丁寧に受け止められる想像力を持っていたいなあと思いました。
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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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