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小森 利絵 フリーライター えんを描く レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。 |
お手紙とわたし~新川愛さんと万智さん編②~ |
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私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。「お手紙ってかたい印象があったけど、いろんな楽しみ方があるんだ」「基本、書くことは苦手だけど、肩の力を抜いて書いてみようかな♪」と、お手紙を書いてみたくなるアイデアやヒントを教えていただきます。
8人目は新川愛さんと万智さんです。以前、本コラムの「伝えないと、伝わらない」(2023年4月)で、娘がお世話になった中学校の担任の先生へお手紙を書いたことを書きました。そのきっかけをくださったのが愛さんと万智さんです。愛さんが「万智がお世話になった学校の先生に、お手紙で感謝を伝えた」とのお話を聞かせてくださったから、私もちゃんと感謝の気持ちを伝えていきたいと行動を起こせました。 新川さんのおうちには、一人ひとりが“お手紙書きセット”を持っているほど、お手紙が日常にあります。電話・手紙が連絡手段のメインだった世代の愛さんと、LINEやSNS世代である10代の万智さんへのインタビューを4回に分けて紹介します。 1回目は「時間も手間もかかるからこそ」編、2回目の今回は「気持ちが『あの日に戻れる』」編。部屋の片づけ中にふとお手紙を読み返してしまう時間、過去にもらったお手紙がその当時に引き戻してくれて、再びつながるきっかけを与えてくれたことなどのお話をうかがいました。 万智さんのお手紙の思い出を教えてください。
万智さん:今でも鮮明に覚えていることは、小学1年生の時に5人の友だちと毎日、お手紙を交換していたことです。毎晩お手紙を書いて、学校で渡していましたね。その頃は確実にお手紙をめっちゃ書いていたと思います。 小学3年生になると、交換日記が流行ったから、お手紙をあまり書かなくなりました。その頃に書いたお手紙や交換日記を読み返すと、内容のあることは書いてないなぁって。毎日交換していたから「書くことないねん」みたいになっているなぁって。 愛さん:学校で渡すお手紙って、独特やんな。時事ネタ的な。「今、ゲームしながら書いてる」「いつお泊りするか、また話し合おうね」「何も書くことない(笑)」「楽しみ過ぎてやばい」。つぶやきやなぁ。 万智さん:やりとりしていたお手紙を読み返すと、思い出せることがたくさんあって。たとえば、この友だち。家が近くて、一緒に登校もして、学校でもずっと仲が良かったけど。その子が小学5年生の時に引っ越して、一緒に登校しなくなって、学校でもそれぞれに新しい友だちができて、話さなくなったなぁと思っていたら。その子が、私の12歳のお誕生日に「12歳って早いな。プレゼント、喜んでくれるかな」とお手紙をくれていて、当時BTSというグループが好きだったので、「BTSのプレゼントは他の友だちからもらいそうだから違うのにしたよ。使ってくれると嬉しいな。最近遊んでないけど、学校で会ったら話しかけてくれるから嬉しいよ。ありがとう。遊んでなくても、万智のこと、大大大好きだよ」と書いてくれていたんですよね。 中学生になって、その子とは顔見知りくらいの距離感になっていたんですけど、久しぶりにそのお手紙を読み返して、よく一緒にいた頃のこととかを思い出したんです。それで中学の卒業間近になった時、私から思いきって話しかけに行きました。「やっほー。今度久しぶりに遊ばへん?」と声をかけたら「いいよ」となって、高校生になった今でも遊びに行くくらい、また仲良くなりました。 過去にもらっていたお手紙を読み返したことで、いろんな思い出がよみがえってきて、また声をかけてみようと思われたんですね。 万智さん:お手紙を読み返すまでは、忘れてしまっていたんですけど。部屋を片づけていたら、その子のお手紙ばかりが出てきて、「そういえば、毎日遊んでいたな」とか、「こんなにいっぱい、お手紙をくれていたんだなぁ」とか。このお手紙も「いよいよ5年生だね。5年生は一緒のクラスになるかな、先生は誰かなと思ったら、わくわくしながらドキドキするね。もし一緒のクラスにならなくても大親友だよ。万智のこと、大好きだよ。2人だけのお守り、入ってるよ。開けてもすぐ直してね。みんなに見せないでね」って。こんな感じで、その子からのプレゼンやお手紙が残っているから。読み返したら、「仲が良かったなぁ」「めっちゃ、いい子やったなぁ」と思い出したんです。 愛さん:そういうの、いいよね。ちょっとタイムマシーンというか。 万智さん:お手紙はやっぱり残るから。スマホのデータも確かに残るけど、形として残るのはお手紙で。思いがけず手にして読み返した時に、「めっちゃ仲良かったなぁ」「また遊びたいなぁ」という気持ちになって、その子に話しかけたんです。 もらったお手紙を読み返すのはどんな時ですか?
万智さん:部屋の片づけ中に偶然見つけてとか、勉強していて疲れた時、読み返したくなった時に見ちゃいますね。「こんなことがあったなぁ」と思い出せますし、書かれているメッセージがやっぱり嬉しい。書くことがないから「大好き」と書いているのかもしれないんですけど。わざわざこうやって書いてくれたんやという嬉しさがあります。 私も友だちへのお手紙に何を書いたかを覚えていないから、書いた本人は覚えていないかもしれないんですけど。このお手紙を書いている時は、こうやって私のことを思っててくれてたんやと思ったら嬉しい。それに、お手紙を見ると、その当時好きだったキャラクターの便せんに書かれたりしていて、懐かしい気持ちにもなりますね。 もらったお手紙はすべて残していますか? ずっと残すお手紙は厳選しているのでしょうか? 万智さん:「明日これが楽しみ」「これを買いたい」といった日常会話的なものではなく、お誕生日や年賀状、クリスマスといった節目にもらったお手紙を残しています。その中で、さっきの友だちのお手紙が多く残っていますね。 あと、このお手紙は中学時代の部活仲間から、私が部活を辞める時にもらったものです。「部活を辞めることになったけど、一緒に帰ったりできるし、遊んだりできるから、これからも仲良くしようね。万智はずっとバレーを頑張っていたし、めっちゃうまくなってるよ。部活はできひんくなるけど、バレーはできるから。アクロバットを頑張ってね。嫌なことがあったら、また相談してね。これからもよろしくね」って。 当時、私が好きだったキャラクターの消しゴムはんこをわざわざつくって押してくれているなど、私の好きなものをちりばめながらのお手紙なんです。めっちゃ手が込んでいて、その気持ちが嬉しかったから、残してたんやと思います。この子とは高校生になってからもつながっているんですよ。 当時受け取って嬉しかったお手紙が、読み返した時にも「嬉しい!」という気持ちを与えてくれるんですね。 万智さん:あと、部屋を片づけている時に、卒業アルバムが出てきて。その最後のほうにメッセージを書き合うページがあるじゃないですか。そこを見た時も、わざわざ書いてくれていたのが、嬉しくて。当時は、卒業式が終わって帰らなければならない時だったから、メッセージを書くのは少し「面倒くさいな」という気持ちもありながら書いていたけど。後になって「3年間ありがとう」と書いてくれているのを見たら・・・・・・正直、中学時代にはそんなにいい思い出がないんですけど、今振り返っても大変やったなぁと思うけど。 愛さん:後から読むと、いい思い出に変わるよな~これもお手紙の一部やもんな。 万智さん:これは最初に話した友だちからのメッセージ。「今までありがとう。小学校で初めて友だちになった子で、中3までずっと仲良くできて、めっちゃ嬉しいし、一緒におって落ち着くし、楽しかった。高校は離れちゃうけど、お互いに頑張ろう。これからもよろしく」って。 愛さん:「これからもよろしく」って書いてくれてんねんな~ずっと続いていくんやなぁ。なんか嬉しいな。 万智さん:嬉しい、嬉しい! 集合写真で隣にいるのはその子で。 愛さん:感動ストーリーやんか。 (2024年8月取材)
<お話をうかがって> 万智さんがおっしゃるように、そのお手紙を読み返すと、受け取った当時に戻れる感じがあります。忘れていた出来事はもちろん、当時の気持ちや思いまでも思い出させてくれるものです。今は疎遠になっている人とも、「こんなにも親しくしていたんだ」「こんなにもお世話になっていたんだ」と再発見することもあります。過去の思い出として懐かしむのもいいですし、万智さんのように再びつながるように行動を起こすのも素敵だなぁと思いました。 また、万智さんのお話で印象的だったのは、当時受け取って嬉しかったお手紙が、読み返した時にも「嬉しい!」という気持ちを再び与えてくれること。自分が書いているお手紙が今この時だけではなく、いつかのその人を励ますかもしれない・・・・・・そんなことを心のどこかに置きながら、お手紙を書いていきたいなぁと思いました。 次回は「お手紙は“時を超えて”届く」編。24年の時を経て、愛さんが受け取った“お母さまとそのお友だちのお手紙”のお話をうかがいました。 |
![]() 小森 利絵
フリーライター お手紙イベント『おてがみぃと』主宰 編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。 HP:『えんを描く』 家族や友だち、仕事仲間、お世話になっている人、出会う人・・・・・・日頃、おしゃべりしたり、メールしたりして、気持ちや思いを伝え合っているつもりでいても、心に秘めたままのものがあったり、言葉にするのをためらっているものがあったりするものです。中には、自分でも気づけていない気持ちや思いもあるでしょう。 お手紙は、日頃は言葉として出てこない気持ちや思い、それに気づいて、認めて、改めて伝えるきっかけをくれるような気がします。なぜなら、お手紙を書く時間というのは、相手に思いを馳せて向き合うとともに、自分自身とも向き合うことになるからです。 お手紙を書くこと、やりとりすることで、「あ、わたし、こんなことを思っていたんだ」「あの人、こんなことを思ってくれていたんだ!」「あの出来事、こういうふうに感じていたんだ」と気づく機会となり、再びコミュニケーションを重ねていく“はじまり”のきっかけにしませんか? 本書は、著者の日常にある“お手紙というものがある時間”について書き綴ったエッセイです。この本を読んで、「あの人、元気にしているかな?」「あの人に改めて『ありがとう』という気持ちを伝えたいなぁ」など、ふと顔が思い浮かんだ“あの人”にお手紙を書いてみようかなぁと思っていただけたら嬉しいです。⇒amazon 『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。⇒『おてがみぃと』FBページ |
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八木 菜摘 フリーライター 八木菜摘 |
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