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バックスター ルミ バイリンガルライフコーチ RumiBaxter
私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
丁寧に生きるという選択 ライフスタイル 2025-02-12
2月8日・9日、大阪箕面市で「第3回ヴィトゲンシュタイン記念 左手のピアノ国際コンクール」本選審査と表彰式およびガラコンサートが開催されました。私は今回、審査のアナウンスという大役を務めさせていただき、舞台裏からこのコンクールに関わることができ非常に光栄に思います。そこには、ただ音楽を競うだけではない、深いドラマがありました。
このコンクールそして左手の音楽の存在を知る人は、まだ多くはないかもしれません。しかし、もっと広く知られるべき、特別なピアノの部門だと心から思います。一般的に、ピアノコンクールでは打鍵の正確さ、技術力、音楽性が評価されるのでしょうが、そもそも音楽性とは何なのでしょう。その問い自体がとても難しいものです。そして、この左手のピアノコンクールには、それだけでは語り尽くせないものがあることに気づかされました。

左手だけで奏でられる音楽は、内省的な特徴を持っているようです。音が少ないからこそ、一つひとつの音に込められた想いが、より鮮明に浮かび上がるからだと思います。演奏者が左手だけでピアノを弾くようになった背景には、それぞれのストーリーがあり、それらを聴かせていただきました。事故や病気、あるいは自らの選択、出演者皆様の人生の物語が、音楽となって滲み出ていたからです。だからこそ、その音の中に「個人の声」が確かに聴こえていたのだと思います。

コンクールの舞台は、これまで積み重ねてきた練習の成果を発表する場であり、また新たなスタート地点でもあるようです。あるコンテスタントは「また頑張ります」と言い、また別のコンテスタントは「お世話になりました」と頭を下げ、舞台裏を通過点として舞台を後に去っていかれました。私はその一人ひとりに「また聴かせてください」と声をかけながら見送ったのですが、それは私の本心からの声です。

また、芸術に点数をつけることの難しさを、改めて感じた2日間でもありました。どの演奏にも宿る人生のストーリーに点をつけることなど審査員の先生方も大変難しいと感じられたはずです。私は普段、受験を控えた生徒たちと向き合う仕事をしていますが、コンクールの場には、受験と重なるものがあると感じました。評価されるのは、その一瞬の出来事。しかし、その一瞬は、過去の努力の結晶であり、未来へと続いていく大切な一点でもあるのです。

舞台だけでなく、何かを創り出す全てに言えることなのでしょうが、このコンクールもまた、演奏者の他にいかに多くの人たちが携わっているかも目の当たりにしました。舞台裏には、テクニカルサポートを担う人々、ピアノのコンディションを整える調律師、そして細やかなサポートをする多くのボランティアスタッフがいました。ホールの舞台裏には無数のコード、ケーブルが張り巡らされ、幾つものスクリーンで瞬間をチェックし、それぞれの持ち場で動く人々の想いが、舞台で奏でられる音楽の一瞬一瞬を支えていました。

プロ部門から、年齢も背景も異なるアマチュア部門まで、それぞれの人生が音となり、響きあった丸二日間。そんな音と心からの声に囲まれながら、私は音楽の根源にある「浄化」と「共感」の強い力を感じていました。そして何よりまた聴きたい、そう思わせる音楽が、ここにはありました。

「またどうぞ聴かせてください」
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私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ

心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。
RumiBaxter
BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/

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