Vol.17 紙屋のおばちゃん、の巻 |
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オラー、こんにちは!! オアハカよりあみりょうこです。先日から、友だちがオアハカに来ていました。数年前にオアハカで知り合った日系アメリカ人の友だちです。
彼女自身3回目のオアハカで、その前は何か月かオアハカに滞在していたので、新しいところを開拓というよりは、懐かしいところや会いたい人に会いに行く、という感じの旅でした。 それでもやはり住んでいる者からすると、新鮮で新しい発見もいっぱいあるという感じで、楽しい時間でした。 ![]() といいながら、今月もピンポイントでオアハカの人を紹介したいと思います。
専門品は専門店に買いに行くことが多いので、やたらと買い物に時間がかかるオアハカのくらしですが、次第に行きつけというか、お気に入りのお店もできてきます。 個人で経営されているお店に行くと、どうしてもお店の人と話さないといけないことが多いです。そのようなお店では小さなスペースに所狭しとものが並んでいて、店の人に棚なり奥からなり出してきてもらわなければいけないので、何がほしいのかを口頭で説明する必要があるのです。 専門用語も妙に身についてきたりするので面白いです。身に着けたところで日常で活躍する場がほとんどないので果たしていいのか悪いのかよくわからいですが……。 画材屋さんに足を運ぶことが多いのですが、それぞれのお店で強みが違ってきます。シルクスクリーンの用具を多く取り揃えているところ、絵具をたくさん扱っているところ、紙なら任せてくれというところなどなどです。 ![]() 私がよく行くお店の一つに紙屋さんがあります。
角に店を構えていて、小さなスペースには天井まで届く棚がそびえていて、各段に様々な紙が収納されています。紙の見本帳があってそこから選ぶのですが、あんなに種類があるのによく場所を覚えているものだなぁといつも感心します。 そんな小さいけどかなりの数の商品を扱ったお店を切り盛りするセニョーラ。小柄で、オアハカの人には珍しくめちゃくちゃやせ型なおばちゃんです。いつもキリっとした表情で、それは見せかけではなく実際にもとにかくてきぱきとしています。 オアハカ人の十八番といえばおしゃべりなのですが、そんなおしゃべりをさせる隙を感じさせないめずらしい人です。仕事熱心で自分のお店で扱っている商品については本当に何でも知っていて、そのとっつきにくさの見た目とは裏腹にとても引き付けられる人でもあります。 何度も通っているうちにだんだんと気心も知れてきて、セニョーラはみんながひたすら文句を言うあの灼熱の暑さも実は好き、ということがわかってきたりして、お客さんが少ない時には少し世間話もできるようになりました。 向こうからも 「最近全然きてなかったやんか!」 とか声をかけてくれたりするようになったかと思えば、 「ご用件は?」 と相変わらずのそっけない対応の日もあります。 ![]() この間、セニョーラに惚れなおしてしまう出来事がありました。
メヒコでは、「おつりがない」ということは往々にあります。「10ペソくらいのものを買うのに50ペソでおつりがない(60円のものを300円出して釣りがないと言われる、とイメージしてください)」とかの話もめずらしくありません。 買えるだけのお金を持っているのに買えないという謎の状況に陥り理不尽な思いをすることが、悲しいかな想定内の現状です。だから、どんな少額を買っても1万円でおつりが出てくる日本は本当にすごいと思います。 そう、その日私は大きなお金しかもっていなかったのです。少額の買い物をし、「しまったな」と思いながら、会計の時におそるおそる「買えますか?」と尋ねました。 帰ってきた答えは、 「もちろん」 そのストレートな言葉はめちゃくちゃかっこよく私の頭の中で響きました。 「大きいお金しか持ってないから、大丈夫かなと思って!! 他の店やったらおつりがないって言われることも多いから、ひやひやしたんですよ」 と、なぜかこちらが妙に饒舌になる始末です。すると、 「自分の商売だよ。売りたければおつりだってなんだってちゃんと用意しとかないと。」 という答えが返ってきました。あまりの正論というか、(日本では)当たり前の言葉にその場にへたり込みたいくらいに感動している自分がいました。 ブラボーセニョーラ!その言葉、「釣りがないから売れません」と平気で言ってくるその辺の人たちに向かって言ってやってよ!!と心の中では拍手喝采です。 感動的な出来事だったなぁ、と後で思い返したのですが、ただ「おつりがちゃんとあった」というだけの話です。(そう、全然感動的ではない。笑) 住む場所が違えば価値観も異なりますが、人間の適応能力の高さもなかなか捨てたものではないと思ったオアハカ暮らし5年目のある日でした。 それでは、また次回お会いしましょう! ![]() “tejido”(織物) オアハカには、織物をする人たちがたくさんいます。羊毛のじゅうたんを織る人たちは大きな木の織機を使いますが、幅の細い布やベルトを織るときは腰機で織られます。 彼らは、模様などは図案を見ながら織るのではなくただただ織り進めていきます。「すごいですね!」と言っても「頭の中にあるから」と控えめに答えるのみです。 そんな風に頭の中のイマジネーションや世界が紡がれた布は本当に美しく、みんな魔法のような手を持っているなぁと感じます。 |
![]() あみ りょうこ
版画家 1982年大阪生まれ、兵庫育ち。メキシコのオアハカ州での暮らしを経て、2020年から日本に。 ものつくりが好きで、オアハカで版画に出会い制作を続けている。 HP:https://amiryoko.wordpress.com/ instagram:ninjacco メヒコTプロジェクト |
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八木 菜摘 フリーライター 八木菜摘 |
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