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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-04-13
撲滅寸前のギニアワームを400匹もって帰る
その④ 〜探偵ナイトスクープのおかげで1匹取り返した私 〜
17年前、私は400匹ほどのギニアワーム400匹を水筒に入れて日本に持ち帰った。

それらのギニアワームは、アフリカの感染村で患者から摘出した直後にエタノール95%に浸けて、標本にした。完全な標本であるので感染能力は全く無い状態である。

その後、日本でえらいことになってしまった。

寄生虫を愛してやまない多くの日本の研究者たちから「ぜひ譲ってほしい!」と全国からラブコールがきたのだ。

※トーゴの赤いギニアワームはとても珍しく「Togolaise Rouge」と呼ばれた
声をかけてきた全ての研究者たちに、なんと私はギニアワーム標本を無償ですべて譲渡してしまった。

お人好しにも度が過ぎる。。。

こんな貴重なギニアワーム400匹が、全部なくなってしまった・・・・

そこで、なんとかして1匹でも取り返したい、と探偵ナイトスクープに依頼した。
最後まで油断できない撲滅活動

図:1986年と2008年に感染が確認されていた国(引用:カーターセンター公式HP)
1986年、把握できるだけでも350万人もの報告があった 感染者数は、2007年には1万人以下までに減少した。

さらにギニアワーム感染者の数は、
2010年に1797人、
2013年に148人、
2015年に22人、
2021年に15人と減少の経過をたどった。

そして、2022年12月31日現在、世界中であと13人。

疫病の撲滅」とは、最後の一桁までが難しいのだ。

近年は、 ギニアワーム感染者が1人もいなくなった国に対し、最低3年間は監視活動を継続することを推奨している。これは、感染症の再発がないことを徹底的に確認するためである。

※子供たちがロバに乗って1時間以上かけて毎日何度も水汲みの仕事をする(ニジェール1999年)
最前線は、ぬかるんだ道なき道

※村までの道のり(雨季はぬかるんだ道なき道を行く)
トーゴの村落地域での活動で最も悩まされたのが、雨期のぬかるんだ道。

感染症対策で訪れる場所は、常に奥地のさらに奥地。雨期の奥地は常に水溜りだらけ。

物資を運ぶトラックも、沼道にハマる。一度ハマったら抜け出せない。

沼にハマったトラックは雨季の風物詩だ。

※大型トラックはもれなくぬか道にドボン
ハマったトラックを避けて通ろうとして、我々ラウンドクルーザーもハマる。

仕方がない、万能ランドクルーザーもアフリカ奥地の沼道では万能ではない。

トーゴ国内で舗装道路は主幹国道のみ。私の活動地域はすべて「道なき道」だ。

沼にハマってしまったら最後。プロジェクトの車両だと知れ渡ると、周囲から「助けてやるから、チップをくれよな!」といって青年たちが集まってくる。

※トーゴ北部のバサール県のジャルパンガ地域への道は時速5kmで進むしかない
背に腹はかえれない。

あの当時、一人200円程度だが10人ほどにチップを渡して車を押してもらう。

しかし夜間となると、誰もいない奥地でハマったら最悪。誰も助けに来てくれない。

※夜間にぬか道ドボンしたら皆んなで必死に土を掘る
夜間は運転手と同僚とで頑張るしかない。

沼土を掘って掘って、タイヤを地上に出して馬力で車両を動かすしかないのだ。

※掘っても掘ってもタイヤは土に沈む
奥地の道なき道は、時折「あきらめる」ことも大事で、埒が明かない場合は開き直って、お茶の時間を設けたりもしていた。

実際に私は同僚が大好きなお茶セットを車両に積んでいた。

力仕事をしてくれる運転手や同僚たちの横で、お茶作る係を私は勝手にかってでていた。

※村落巡回の時は、外で食事を作ってみんなで食べる
道に迷って遭難

※トーゴの奥地は車両が入れないから歩くしかない
沼道にハマって立ち往生よりも厄介なのが、道なき道で路頭に迷う遭難だ。

トーゴ人の運転手は滅多に迷うことはない。太陽の向きで方向感覚も抜群なのだが、半年に1回くらいは道に迷ってしまう。

四方八方、景色が全く同じだから仕方ない。

※トーゴ北部の村落
田舎で遭難した時も、慌てる必要はない。誰かが必ず助けてくれる。

民族は違えどトーゴ人は皆んな違う民族の言語も理解できるグローバルマインドの持ち主たちだ。

意思疎通のために多言語を瞬時に操るアフリカンは、日本人よりもよっぽど多文化理解に長けている、と何度思ったことか。
国境警察とわいろ交渉

※トーゴ北部の村での啓発活動
トーゴとガーナの国境付近の村の住民にとって、国境線はないのと同じ。

畑から畑へ移動する道は無数にある。

住民は親戚や仲間のために畑仕事の助け合いは当然であり、同じ民族が自由に国境またいで行き来していた。

しかし、私達のようにトヨタのランドクルーザーで巡回する車両の道は、国境では警察が必ずいる。

パスポートを見せても、保健省から発行された国家計画の証明書を見せても、いじわるな警察からは「ダメだ、通さない」と言ってくる。

ここで足止め食らって何時間も費やすのは、あまりにも仕事の効率に響く。

事なきを得る為には、ちょっとした小銭を渡してすんなり国境を通過する方がましである。

初めの頃はよく国境警察と喧嘩したが、その度に首都や本部に連絡して正当を貫くより、数百円の賄賂ですんなり通過する方がよっぽどマシなのである。

次号は、失敗した撲滅作戦で悟った村人の秘密…

※診療所スタッフとその家族
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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