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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-02-23
女32歳、ヨーロッパの医学部に入学
その⑦〜夏休みに、あの強制収容所アウシュビッツへ〜
法医学では本当にあった殺人事件を扱う?!
法医学では腰を抜かしそうになった。

私たち学生の前に黒い大きなビニルカバーが置かれていた。おもむろに法医学教室の教員らがカバーを剥ぎ取ると、若い女性のご遺体がそこにあった。

「昨晩に夫に刺殺された女性の遺体を法医解剖します」と。

なんという実習なんだ・・・。

解剖は1年生の頃からたくさんの献体のおかげで慣れていたが、刺殺事件のご遺体となると訳が違う。

目を伏せる学生もいたが、この部屋には何体ものご遺体があり、淡々と作業する教員たちの入れ墨だらけの体にも度肝抜かれた。

しかし、この色とりどりの圧巻な入れ墨の両腕をもつ教官たちは優しい男たちで、試験の最中に、試験官の裏に回って、目配せをしながらジェスチャーで学生たちに答えを教えてくれた。
いよいよ医学部で最後の学年、6年生

※6年生になると緑がたくさんある医学部キャンパス内が気持ちよく感じるようになった
5年次から6年次は殆どの同級生は落第することなく進級したが、5年前に一緒に1年生として入学した同級生たちの数は4分の1ほどに減っていた。

海外の医学部では猛勉強のガリ勉生活だったし、日本の学生のように部活やバイトをする時間など全くと言っていいほど無かった。

私は同級生の友達も少なかったので、息抜きできる仲間もいなくて孤独だった。

※デブレツェンの街の中心地の市場(週1回ここで食料を調達)
食費は1ヶ月に1万円以内と決めていたので、切り詰めた生活で外食は年に1〜2回ほど。学期中は学校と家の往復のみ。

アパートの中で息が詰まりそうになる時は、カフェで勉強し、ひたすら自炊生活。

だからこそ、試験が終わってから次の学期が始まるまでの1〜2カ月間の休暇は、国外に脱出しなければ息が持たず、私は1年に1回は必ず昔からの友人とヨーロッパ旅行で現実逃避をした。
ハンガリーは東欧の観光名所の拠点地
ハンガリーの首都ブタペストは有名な観光地がたくさんあり、世界中の観光客が集まる。

ブタペストを拠点として周辺国へは放射線状にアクセスがあり、安価な列車や長距離バスを使えば、貧乏学生でも東欧の主要な観光スポットを網羅できるのだ。

ブタペストからオーストリアの首都ウィーンへは、たったの2時間半で行けるし、半日あればチェコのプラハ、スロベニア、スロヴェキア、ルーマニア、クロアチア、ポーランドの世界遺産の街クラコフにも安価で行ける。

※ハンガリー首都から発車する列車はヨーロッパ各国どこへでも陸つながり
私の医学部生活は、部活やバイトをする時間など全くなかったガリ勉生活だったが、学期が終わって休暇に入ると一転、たがが外れたように旅行三昧して思う存分羽を伸ばした。
夏休みは世界旅行

※ハンガリーの首都ブタペストは世界でも有数の美しい観光地
休暇のためだけに、学期間中は頑張れたと言っても過言ではない。

毎年、休みの間は私は別人のように陽気になり、昔からの友人たちと心の底から休暇を楽しんだ。

2年生に進級する前に、ハンガリーの周辺国の東欧の国々を2週間巡った。オーストリア、スロベニア、スロヴェキア、ポーランド、クロアチア、ルーマニアを満喫した。ニジェールのJICAプロジェクトで一緒に働いた峰ちゃんがアフリカから遊びに来てくれて、一緒に旅をしてくれた。

3年生に進級する前には、ユニセフで働く朋ちゃんと健二がいるモザンビークで羽を伸ばした。彼らもロンドン大学時代の友達だ。

※モザンビークでユニセフに勤務する朋ちゃんと健二と旅行三昧(2010年)
4年生に進級する前には、ロンドン大学院時代の同級生だった花ちゃんと、グアテマラにいる親友アルバロ君を訪ねる旅をした。

5年生に進級する前には、ロンドン大学院時代の友達と先生がハンガリーまで遊びに来てくれて、東欧の周辺国をたくさん旅行し、第二次世界大戦中のユダヤ人強制収容所があったアウシュビッツまで行った。

※グアテマラにてアルバロと花ちゃんと(学期中とは打って変わって休暇中の私の表情もリラックス)
ロンドン大学院で一緒だった同級生たちは、みんな国際機関やJICAや府庁などに就職して出世していた。誇らしい友人たちの活躍の話を聞くことが、私の唯一の励みとなっていた。

※グアテマラの勤勉な医学部の学生にも刺激を受けた(2011年)
ハンガリーから6時間で「アウシュビッツ」

※アウシュビッツには在学中に2回訪れた(2009年と2012年)
ブタペストから「オレンジバス」という格安バスを使って北へ6時間ほどいくと、ポーランドの世界遺産の街クラコフに到着する。

クラコフはこじんまりした静かで美しい街。そこから小型バスで1時間いくと、かの有名なアウシュビッツに着く。

負の遺産アウシュビッツは、人生で一度は訪れておかねばと思っていた場所だった。
ここには日本人で唯一の公認ガイドとして有名な中谷さんという小難しいガイドさんがいる。中谷さんが言ったことが印象的だった。

「世界中で日本人はバックパッカーが最も多いはずなのに、アウシュビッツまで来る日本人観光客は欧米人に比べてかなり少ないんだ。日本人はどうしてアウシュビッツに関心がないんだ」と怒り気味。

ここまで来た私たち日本人に鼻息荒くそんなこと言われても・・・
中谷ガイドは続けてこう言った。

「あれを見てごらん。アメリカ人はああやってタバコを吸いながらアウシュビッツを観光しているんだ。僕はタバコを吸いながらここに来る外国人がけしからんと思っていたけど、よく考えたら、タバコを吸えるくらい彼らにとって日常生活の延長上にアウシュビッツという観光地があるんだ。最初は嫌悪感を感じていたけど、タバコを吸いながらアウシュビッツを観光する客をなんとも思わなくなったんだ。」

きっと中谷ガイドは、アウシュビッツに関心をもって足を運ぶ日本人観光客が少ないことに腹を立てているのだろう、と私は思った。

が、それを私たちにぶつけられても・・・・
隣のルーマニアで大量の化粧品
私が住むデブレツェンのすぐ隣に、ルーマニア最西端のオラデアという街があった。

ルーマニアはハンガリーよりも物価が安く、世界的に有名な化粧品も安価で手に入る。

「ジェロビタール」のクリームは、アマゾンでも購入できるが、1個1万円くらいする。しかし、ルーマニアで購入すると、たったの700円程度だ。

お土産に大量のジェロビタールを買って日本に持ち帰ったら、家族や友達に大いに喜ばれた。

※オラデアの大学医学部
ルーマニアのオラデアには、日本人の友達が住んでいた。彼女は年齢も近く気が合うので、休みごとにその友達を訪ねた。

その友達もオラデアの医学部に通っていて、学内で日本人は彼女1人だけ。彼女も30代で、周囲の若い同級生たちに混じることに躊 躇していたが、かわいい彼女にはすぐに11歳年下のフランス人同級生の彼氏ができた。

結局、彼女は医師にはならず、フランス人の彼氏を支える立場を選んだ。今頃、フランスのどこかで幸せな家庭を築いているだろう。

海外の医学部には、いろんなヒューマンドラマがある。どれも予測不能で、素敵なのだ。

ハンガリー人医師は驚くほどの安月給・・・、次号へ続く
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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