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藤田 由布 婦人科医 医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-04-22
女性の3人に1人がもっている子宮筋腫
3人に1人は「子宮筋腫」、ありふれた腫瘍です
【子宮筋腫を分かり易く説明します】

子宮筋腫は、コブのような筋肉組織が増殖したものです。つくねとか、肉団子とか、ゴムボールのような少し弾力性のあるデキモノです。

1cm以下の小さいものから15cm以上の大きなものまで、大きさは様々です。1個しかない人、大小30個以上多発している人、発生している個数も様々です。
子宮筋腫は、女性ホルモン(エストロゲン)の作用によって大きくなっていきます。

子宮筋腫は、良性腫瘍です。子宮筋腫が悪性の腫瘍(癌)になることは稀です。

生理があるうちは、女性ホルモンが十分にあるということなので、大きくなる可能性があります。

20〜30代ですでに大きな筋腫がある人は、閉経するまでの間に大きくなる可能性が大ですので、定期的に婦人科で診察を受けて、今後の治療の選択なども含めて相談してください。

閉経すると、女性ホルモンが枯渇したということなので、これ以上大きくなることはないです。

ただし、閉経後にも筋腫が大きくなるということは、悪性の可能性も否定でいないので、筋腫がある人はきちんと定期的に受診してください。
子宮筋腫は、子宮自体にできるこぶのような良性の腫瘍で、筋肉が異常増殖したものです。

では、なぜ筋腫は発生するのか、その原因ははっきりしていません。

ですが、卵巣から分泌される女性ホルモンが影響し、筋腫が発育すると考えられています。 ですので、閉経後は自然と小さくなっていきます。
子宮筋腫の症状は様々です
筋腫ができている場所や大きさによって、症状には個人差があります。

よくある症状は、過多月経、頻尿、腰痛、便秘です。

小さい筋腫で、子宮の外側(漿膜下)にできている人は、自覚症状が無いこともあります。

うつ伏せに寝た時に、下腹部にコロっとデキモノを感じて「これ、なんやろう?便秘かな?」って思っている女性も多いみたいですが、筋腫の可能性が大です。
過多月経
筋腫がある人は、貧血の人が比較的多いです。

筋腫があると、子宮が引き伸ばされて大きくなります。

ですから、子宮の内膜の表面積も広くなり、月経の量が非常に多くなることがあります。

月経量が多くなると、貧血になります。毎月、たくさんの出血があり、その都度全身貧血になり、そして毎月からだが頑張って造血している人もたくさんいます。

筋腫が子宮の外側にあるものを「漿膜下筋腫」といいますが、この漿膜下筋腫は10cm以上のものがあっても、症状が軽い場合が多いです。たまに気付かない人もいます。

たまに「最近、太ったかも」とか、「下っ腹がぽこって出てきた」というおっしゃる方もいらっしゃいますが、子宮筋腫が大きくなっている場合もあります。また、「便秘かも」って感じる方もいるようです。

筋腫のせいで月経量が多い人に言いたいのでは、ちゃんと治療法があるので、婦人科を受診して欲しいということです。貧血を放置せずに、月経コントロールをすることにより生活の質がうんと改善されるのです。
頻尿
筋腫が大きくなると、筋腫が膀胱を圧迫する場合があります。膀胱が圧迫されることにより、頻尿に悩まされるケースも珍しくありません。

この写真のように、大きな筋腫が子宮の前方にあることにより、膀胱がぺシャっと凹んでいるのがわかります。

頻尿がどうしても生活の質を脅かす場合に、手術を選択される方もいます。
便秘・腰痛・不妊症
筋腫が大きくなると、直腸を圧迫して、便秘になる方もいます。

筋腫が腰椎を圧迫して、腰が痛くなる方もいます。

筋腫が大きくなると、卵管の圧迫や子宮の変形によって、不妊症や流産の原因となる場合があります。

不妊治療のために子宮筋腫を取り除く手術をされる方もいらっしゃいます。子宮を手術した後の出産は、帝王切開分娩となります。経膣分娩で腹圧がかかることで子宮破裂する危険性があるためです。
子宮筋腫の治療
治療は、手術だけではありません。子宮筋腫の治療には、薬物内服治療の選択もあります。

出来るだけ手術を回避したいと思う人も多いです。それもそのはず、手術そのものにも術中の合併症や出血のリスクがあったり、全身麻酔のリスクもあります。

筋腫のみを切り取る手術をしても、全ての筋腫が摘出されるわけでなく、筋腫が再発することもあります。
手術をする場合
手術をする場合は、
①子宮は温存して、筋腫だけ取り除く「核出手術」
②子宮ごと取り除く「全摘手術」
③子宮への血流を止める「動脈塞栓術」
④子宮内膜を焼いて出血を止める「内膜焼灼術」

手術の方法も色々あります
①腹腔鏡手術 (傷は数cmほど)
②開腹手術 (傷は10cmほど)
③子宮鏡手術(腟から器具を挿入する手術)
④子宮動脈塞栓術(血流止める)
⑤子宮内膜焼灼術(内膜を焼く)

いずれも全身麻酔です。最近は、腹腔鏡手術を採用している施設が多いです。子宮の内側(粘膜下)にある筋腫は子宮鏡で手術することもあります。

開腹手術と腹腔鏡手術を比べると、腹腔鏡の方が、術中の出血量が少なく、合併症も少なく術後回復も早いとされています。

もう妊娠の予定がないという人は、いずれかの手術を勧められることもあります。

もし、子宮の手術をした後に妊娠した場合は、帝王切開での出産を推奨されます。 これは、分娩中に子宮が破裂することを防ぐために、帝王切開で安全に分娩するためです。

手術をする場合、半年前くらいから、できるだけ筋腫を小さくするための薬物療法が行われることもあります。

筋腫を出来るだけ小さくしておくことによって、手術中の出血も少なく、お腹の中から筋腫を取り出しやすいからです。

筋腫の状態(大きさや位置)、症状、妊娠の予定、閉経が近いかどうか、基礎疾患など、いろんな条件を吟味し、生活の質をいかに向上できるかに重点を置いて、治療方針を決めます。

手術にするか、内服治療にするか、悩まれる方も多いと思います。悩ましい症状を改善し、今後の人生を豊かにするためにも、担当の婦人科医としっかり相談して、治療方針を一緒に考えることが大事です。
子宮筋腫の手術では、卵巣には触れません
子宮筋腫を取ったり、子宮の全摘手術をすると、更年期になるんですか?

と聞かれることがありますが、子宮全摘や筋腫を切除する手術では更年期障害になりません。

女性ホルモンを分泌する臓器は主に卵巣です。

子宮筋腫の手術で卵巣には触れませんし、子宮や筋腫を摘出する手術ではホルモン分泌はあまり関係ありませんのでご安心下さい。

子宮全摘手術をする場合、月経はなくなりますが、卵巣からは女性ホルモンが分泌されており、体内でちゃんと機能しています。

子宮筋腫は良性腫瘍なので、腫瘍(筋腫)だけ取り除けば良いのですが、巨大筋腫や症状がひどい場合は、妊娠の予定がなければ子宮ごと摘出することを勧められる場合があります。その際も卵巣はそのまま温存します。

子宮全摘の利点は、煩わしい生理とは金輪際サヨナラできることや、今後は子宮ガン(体癌・頸癌)の心配がなくなることです。

とはいえ、やはり手術は回避したい場合は、薬物療法でなんとか閉経まで逃げ切る方法があります。

閉経すると女性ホルモンが減少するので、閉経後は筋腫は縮小します。ですので、閉経まであと数年という場合は、薬で女性ホルモンを止めて月経を止めるなどして(偽閉経療法)、閉経までやりくりします。これを「逃げ切り療法」と呼びます。
薬物療法にも色々あります
手術で筋腫や腺筋症を取り除いたりする方法もありますが、手術を回避する内服や注射による治療方法もどんどん出てきています。

子宮筋腫や子宮腺筋症などで、月経量が多かったり、痛みが強かったりすると、月経を一時的に止めるGnRH療法という治療もあります。

女性ホルモンを止めると生理も止まります。そして筋腫も縮小します。「生理が止まるとラクになった〜!」という人も多いです。ただし、女性ホルモンを止めるGnRH療法は最長で6ヶ月間までです。

GnRH療法にはいくつかあります。
①内服 毎日1回飲みます (レルミナ錠)
②注射 月に1回打つだけです(リュープロレリン注射)
③点鼻薬 毎日2〜3回鼻穴に噴きかけます(ナサニール等)
GnRH療法の副作用
どの選択肢でも、GnRH療法の副作用は、「更年期」のような症状です。

ほてり、頭痛、汗かき、これらの症状は多くの更年期障害でみられます。女性ホルモンを抑える治療なので、そのために更年期と同じような症状が現れます。

診察室でよく聞くのは、「首から上が突然カーッと熱くなり、汗が止まらない」です。

GnRH療法中は、月経が一時的に止まることがあります。 ただし、治療開始まもない頃は、突然の不正出血や、一時的に月経がドバっと増えたりすることもあります。

筋腫が子宮内側の「粘膜下」寄りにあると言われた人は、不正出血が起こりやすいので、ナプキンを持ち歩くのが良いでしょう。

長期にわたるGnRH療法は、長期にわたり女性ホルモンをストップするわけですから、骨粗しょう症が生じる可能性があります。

骨粗しょう症を防ぐためにも、このGnRH療法の使用期間は最長6ヶ月まで、というわけです。治療の開始前と終了時には、骨密度を測定するなどとして、骨粗しょう症のチェックは必ずしましょう。
治療薬の費用比較
婦人科疾患の治療は、長期間に渡るものが多いです。そうなると、気になるのが費用です。

この表の価格は私自身が個人的に聞き取り調べで得た情報なので、あくまでも参考までとしてください。

薬の価格って、薬局で支払うまで分からないことが多いですよね。

見ての通り、比較的新しい薬のレルミナ錠って、高額ですよね。薬局でびっくりされる方もいらっしゃいます。

あらかじめコストがわかっておくのも、患者さんにとっては治療の選択においても重要情報です。
他の対策方法も
他にも、低用量ピルを内服して、月経量や周期をコントロールすることもあります。

これは、卵巣から分泌される2種類の女性ホルモン(エストロゲン+プロゲステロン)を配合した飲み薬や、プロゲステロンのみの飲み薬を使うことにより、これは月経量がうんと減り、痛みも減って、子宮と卵巣をベストな状態を保ってくれます。

ただし、低用量ピルは筋腫を小さくする働きはありません。

低用量ピルについてのコラム →『今さら聞けない「低用量ピルって、そもそも何?」』

子宮内に数センチのごく小さな特殊なプラスチック器具の「ミレーナ」を挿入することにより、飲み薬なしで月経コントロールできる方法もあります。 ミレーナのコラム 
→『Twitterでバズった「ミレーナ」』
漢方「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」の効果
25番の漢方といえばの「桂枝茯苓丸」は、婦人科漢方の中でも代表格の漢方です。

ツムラは顆粒でよく溶けて吸収力はピカイチということで最も効果あるとされていますが、口の中で漢方独特の味がボワーっと広がり、味が苦手!という人も多いです。

そんな人には、クラシエの錠剤という選択肢もあります。(全ての漢方薬に錠剤があるというわけではありません。)

血液の流れが滞って、巡りが悪くなった状態を、東洋医学では「瘀血(おけつ)」と呼びますが、桂枝茯苓丸はこの瘀血を改善する代表的な漢方薬です。
また、桂枝茯苓丸に含まれる生薬(しょうやく)の桃仁(モモの種子)、牡丹皮(ボタンの根皮)は、血液凝固を防ぐ作用や、炎症を防ぐ作用を持っていると言われています。

そのため、桂枝茯苓丸を内服することにより血流改善が期待でき、子宮筋腫のうっ血状態と浮腫を減少させる可能性があり、その結果、筋腫の縮小が怒ると考えられています。

上記の説よりも、もっと説得力があるのが、次に述べる桂枝茯苓丸の「抗エストロゲン作用」です。

筋腫のある子宮は、女性ホルモン(エストロゲン)の代謝に係る酵素の働きが、筋腫部位で異なっているという報告があります。そこで、この桂枝茯苓丸の働きに注目されています。

どうやら、桂枝茯苓丸が、筋腫部位でこの酵素に働きかけて、局所的な低エストロゲン状態を作り出している可能性が示唆されているのです。
他にも、桂枝茯苓丸による筋腫縮小効果の研究は、たくさん報告があります。

また、GnRH療法を選択される患者さんの副作用を軽減するためにも、この漢方は効果があるケースが多く、私の外来でも漢方をよく使っています。
子宮筋腫は、婦人科でしっかり経過観察を
子宮筋腫がある人は、貧血であることが多いです。

子宮筋腫の位置や大きさの状態経過をしっかり診てもらい、現状を改善するあらゆる方法を吟味し、医師と相談して治療方針を決めることが大事です。

治療方法は日進月歩でアップデートされています。

我慢せず、生活の質を落とさず、よりよい生活を過ごすためにも、子宮筋腫の治療方法について婦人科でご相談くださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-14-14 T・Kビル2F
TEL : 06-6241-5814
https://www.sakumaclinic.com/

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