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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-08-19
男性も打とう!HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)
そもそも、世界中で、このワクチンが「子宮頸がん」のワクチンと女性疾患の名前がつけられているのは、日本だけなのを皆さんはご存知でしたでしょうか?

日本以外の国は、このワクチンのことを「HPVワクチン」と呼びます。HPVは、ヒト・パピローマ・ウィルス(Human Papilloma Virus)の略です。

私は過去2年間にわたり婦人科クリニックで勤務した際に、子宮頸がん検査を4000名ほどに施行してきました。その際に全ての検査対象者に「子宮頸がんの原因」について知っているかを尋ねてきました。

「子宮頸がんの原因が何なのか、ご存知ですか?」

・・・・・「知りません!」と答える方がほとんどです。実際、10人中9人が「知らない」と答えました。

「海外では男性も子宮頸がんワクチンを接種しているのですよ」と言うと、殆ど全ての人が驚きます。
2年間で私が検査を施行した約4000名の女性のうち、海外では男性もワクチン接種している事実を知っていた人は、たったの1人でした。

その女性は、過去に検査でひっかかり、あの痛いコルポスコピー精密検査をした方で、怖くなって自分で色々と調べたそうです。

そして、こういいました。

「私、調べたんです。子宮頚がんって、そもそも男性が陰茎の先についているウイルスが女性に感染して癌を引き起こすという事実を知って、驚愕しました!そして、腹が立ちました!」

過激な言い回しでしたが、間違いではありません。逆に、性行為で女性から男性へもこのウイルスを感染させることもあります。この事実、あまり知られていませんよね。

男性が皆なHPVワクチンを接種したら、女性が頸癌から守られる。うそのようで本当の話なのです。

では、なぜ日本はHPVワクチンが認可されているのは女性だけなのでしょう?

日本のHPVワクチン事情は世界から遅れている、というより、むしろ取り残されています。

私はサラリーマンとしての社会経験が長く、医師以外の職種をいろいろと経てきているせいか、この異常事態に人一倍違和感を感じるのです。

子宮頸がんワクチンについてのコラムは以下をご覧下さい。 →「子宮頸がんの原因はウィルス感染です」
「きっとアイツのせいだ」
子宮頸がんの精密検査中に、ある患者さんがこう言いました。

「先生、きっとアイツだと思います!アイツのせいで、子宮頸がんのウイルスを伝染されたんです!」と。

私は、「いや、このウイルスがいつ誰から感染したか、なかなか断定は難しいです」と答えましたが、彼女のぶつけようのない行き場のない気持ちは理解できました。

ある50代の女性は、「私は数十年間、夫しか知りません。やはり夫からもらったウイルスが原因なのでしょうか。」と。

「科学的に考えても、恐らくその可能性は高いです。」と答えました。

コルポスコピー生検検査は、流血もするし、痛みを伴う検査です。緊張と痛みで歪む女性の顔を何百回も見てきた私は、この検査中は、「早くこの痛みから女性を解放したい」と心の底から思うのです。

欧米豪のようにHPVワクチンがもっと普及すれば、日本のように、こんなにも女性が苦しまなくてすむのです。
村中璃子先生の本 「10万個の子宮」
最近メディアで引っ張りだこの村中璃子先生の渾身の一冊。子宮頚がんワクチンの全てが、この本で分かります。

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウィルスで、これは殆ど性交渉でしかうつりません。ワクチンが広く普及しているオーストラリアなどでは、子宮頸がんは撲滅可能な疾患と明記されるとまでになりました。

なのに、日本では

毎年、約3万人が子宮頚がんを宣告され (上皮内癌含む)、
毎年、約1万2千人が子宮頚がんで手術を受け、
毎年、約3千人が子宮頚がんで死亡しています。


このように、子宮頸がんは、日本人女性にとっては、異様に身近な「癌」なのです。

事実、日本の子宮頚がんワクチン接種率は0.1%以下。
妻が子宮頸がんを発症したら、それは夫がうつしたウィルスのせいかもしれません。酷です。

このHPVウイルスに感染してから頸がんが発症するまでは、数年〜十数年と言われています。

逆算したら、必ずしも夫がうつしたウィルスのせいかどうかは定かではありませんが、やはり、男性にしてみたら耳を塞ぎたくなる事実だと思います。

子宮頸がんの診断をご夫婦で聞きに来られる際、やはり結構気を遣います。

そりゃそうですよね、貴方の愛する妻を癌にしたのは、貴方の持っていたウィルスのせいかも知れませんから。

男性が子宮頸がんワクチンを打ったら、男性自身の肛門癌や咽頭癌も予防できます。それと、貴方の愛するパートナーを子宮頸がんから守ることも出来るのです。

さて、昨今の日本人男性には、主体的に自分で考えて行動にうつす倫理観と勇気が十分に備わっているでしょうか。

※非難覚悟で敢えて過激な文言を使っています。話題になれば少しでも「知ろう」としてくれる人が多くなる、そんな風に思っています。
アメリカ在住11歳の息子
アメリカ在住の日本人女性が、11歳の息子を連れて小児科を受診した際に、医師からHPVワクチンの定期接種についても説明されたそうです。

そして、小児科医がわかりやすく説明を加えて接種を勧めてくれたそうです。

アメリカでは、診察室の壁にポスターが貼ってあります。男性も女性も同様にHPVワクチン接種を推奨されています。WHOも、CDCも、男女同等にHPVワクチン接種を奨励しています。

もし日本ならば、このように診察室で11歳の男児にワクチン接種を勧めたりしたら親御さんの反感を買ったりするのかもしれません。
子宮頚がんワクチンではなく、HPVワクチンと呼びましょう
「子宮頚がんワクチン」という名前、もうやめませんか?

こんな呼び方しているのも、世界中で日本だけです。

女性だけが関与する病気や、女性だけが予防しなくてはならない病気のように聞こえます。

世界では男女とも当たり前に接種している今、ちゃんと「HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン」と呼びましょう。

こんな基本的な概念の浸透が、なぜ日本行政は微塵も動かないのか甚だ疑問です。
HPVワクチン、ついに日本でも男性に接種拡大へ 
日本では女子だけが対象となっているHPVワクチン(=子宮頸がんワクチン)。

2020年12月4日に厚労省の審議会で、男性接種の拡大の可否が審査されることになりました。 他の先進国から大幅に遅れて、ようやく「審査レベル」です。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐとして、今の日本では、女性のみが接種対象として承認されているHPVワクチン。

公費(負担ゼロ)で接種できる定期接種も、小学校6年生から高校1年の女子のみが対象となっています。

これに関しての詳細は、過去コラムをご参照ください
→『子宮頸がんワクチン、高校1年生の娘さんがいらっしゃる方、3回とも無料で定期接種するためには9月中に1回目接種を!』

しかし、HPVは、男性にとっても、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因となります。国立がん研究センターによると、日本では、中咽頭がんは年間約1800人が診断され、男性が女性の5倍近くにのぼることがわかっています。

先進国では男性への接種が当たり前になっており、世界では77か国が男子接種を承認し、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど24か国で公費接種も行われています。
HPVには200種類ほど型があるとされている。性交経験があれば、8割の人が感染するという、ごくありふれたウイルスです。

日本人女性は、生涯に8割以上の人がHPVに感染することがわかっています(恐ろしいですよね)。

男性も女性も同等にワクチンを打つことで、この残酷な子宮頸がんという病気を撲滅することができるのです。

この事実を知って、日本人男性はどう思うのだろう。

「パートナーの命を守るワクチン」について、自らももっと知ろうと思ってくれるのだろうか。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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