お弁父(和田率)
おいしそう、楽しそう お弁父
和田率(著) 我が家では、夫のお弁当づくりは必要なくなってからも自分のためにお弁当を作っています。
だけど私のお弁当はマンネリだし、詰め方が下手。 だから、SNSでも本でも、お弁当の写真を見ると「お?!」と詳しく見るようにしています。 表紙のお弁当の写真があまりにも綺麗で美味しそうで、手に取ったのが和田率さんの『お弁父』です。 お父さんが作るお弁当だから『お弁父』。 うまい! 「笑点」だったら座布団がもらえますね、きっと。 3人のお子さんのお父さんである和田率さん。 奥様である和田明日香さんは食育インストラクター。 お二人の間には3人のお子さんがおられます。長女さんが小学校に入学し、お弁当持参になる時、朝が弱い奥様に変わってご自分がお弁当を作ろうと思ったのは、日頃から、出産・育児と仕事を両立されている奥様のことをご覧になっていたから。それに、朝の弱い奥様と違って、率さんは朝に強いのもお弁当担当を買ってでた理由だそうです。 『お弁父』には、率さんがお嬢さんのために作ったお弁当の写真と、それに関する一言が添えられています。 例えば、タコさんウィンナーがメインの「蛸足ウィンナー弁父」に添えられた一言は以下の通り。とても大切なことをさらっと書いておられます。 タコは敵につかまると、
つかまれた腕を切り離して逃げるんだ。 少しでも危ないと思ったら、 タコみたいに逃げなさい。 (和田率さん『お弁父』 P66より引用) 豆ご飯に焼いたお野菜や、パプリカなどを添えた『秋の色どり弁父』に添えられた言葉。
そりゃあ生きてりゃ苦しいときもあるって。
苦みは、自然の味。 甘い味ばっかりじゃ、強い人になれないよ。 (和田率さん『お弁父』 P76より引用) 小学1年生のお嬢さんを子ども扱いせず、おとなの言葉で伝えているのが良いですね。
和田さんはお弁当作りを始めて、改めて奥様の大変さに気づいたそうですよ。 次の日のお弁当を考えるにあたって、前の日の晩ごはんとの兼ね合い、冷蔵庫の在庫、栄養バランス、色々考えなくてはならないし、買い出しにも行かねばならない。お弁当だけでもそうなんだから、10年間ずっと毎食作ってくれていた奥様はどんなに大変だったか。もんくひとつ言わずにそれをこなしていた奥さんに対する感情は 尊敬、感謝、嫉妬が入り混じったような感覚です。
(和田率さん『お弁父』 P110より引用) なんだか、これがきっかけでご夫婦仲がより一層良くなりそうですね。
ところで、和田率さんのお母様は料理愛好家の平野レミさん、お父様はイラストレーターの和田誠さんです。レミさんが食事を作って、お皿洗いはいつも和田誠さんがしておられたんですって。それを見て育ったので、率さんはシンクに汚れたお皿があれば自然に洗い物をするのだそう。そういった素地があればこその「お弁父」なのかもしれません。 そしてまた「お弁父」で育つ率さんのお子さんたちにも、家事や食事作りに関して男女関係なく「やれる人がやるもの」だという考えが自然と身につくことでしょう。いえ、もうすでにそうなっているかも。保育園に通う息子さんは遠足でお弁当を持って行かねばならない時「明日のお弁当には手羽先入れてね」と、お母さんではなく率さんにリクエストをしたそうですから。 保育園生が手羽先をリクエスト!!色々な意味で和田家はすごいです。 最後に、食育インストラクターをなさっている率さんの奥様、明日香さんの名言で締めくくりましょう。 「食育というのは、親のためにある。」
(和田率さん『お弁父』P111より引用) 子どものために、と思ってやっていたことが実は自分たち親のためになっていたということ。
表紙を見た時はただただ「おいしそう、楽しそう」と思って拝読したのですが、食の奥深さを感じました。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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