あなたのゼイ肉、落とします (垣谷美雨 )
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![]() 私も頑張る!ともかく前向きになれる小説 あなたのゼイ肉、落とします
垣谷美雨(著) またまた、タイトルに惹かれて手に取った、垣谷美雨さんの『あなたのゼイ肉、落とします』。
できなかった時に責任を取れと言われるのが怖いのか、テレビなどでは何かと言えば「〜したいと思います」と、言い切らない人ばかり。 そのデンで言えば『あなたのゼイ肉、落としたいと思います』と言うのが今時でしょうに、きっぱり言い切っているところが潔いではないですか。 「私のゼイ肉も、ぜひ落としてくれ!!」 読む前から拳を固めてしまうのでした。 しかし、この本はダイエット本ではなく、小説です。 ベストセラーのダイエット本『あなたのゼイ肉、落とします』の著者 大庭小萬里が、個別指導する4つのケース、という形態の短編集なのです。 ケース1 園田乃梨子 49歳
ケース2 錦小路小菊 18歳 ケース3 吉田知也 32歳 ケース4 前田悠太 10歳 (垣谷美雨『あなたのゼイ肉、落とします』 目次より転記) クライアントは年齢も性別もまちまちです。
大庭小萬里は、単に痩せる方法を相手に伝えるのではありません。 まずは会って、現状を把握するところからスタート。 例えば、太っていることで職場の人の態度が変わったかどうか、学生の場合、太っていることが理由でいじめられていないか、また家庭はどうなっているのかなど、ちょっとした身の上相談のようなことをして、太ってしまった原因を探るのです。 太る原因は人それぞれ。 心の問題であったり、生活習慣の問題であったり、あるいはその両方だったり。 大庭小萬里は一人ずつに、未来への見通しを立て、次に会うまでの具体的な課題を出します。 たとえば、ケース1の園田乃梨子の場合。 美人が取り柄だったのに、太ってしまってからは、職場の人はまともに目を向けてくれないし、夫も娘も、なんだか自分を避けている気がする……。 そんな乃梨子に出された課題は 「ブスとして生きる訓練をすることです」
(垣谷美雨『あなたのゼイ肉、落とします』P46より引用) 個別指導料金を払って、最初の課題がこれ?!
クライアントは唖然とします。 だいたいダイエット指導者のはずなのに、小萬里自身はかなりふくよか。 こんな人に言われたくない! これは詐欺なのか?! 読んでいる私としても、「ブスとして生きる訓練」とはなんなのか、乃梨子は痩せることができるのか、興味津々です。 いやぁ、面白いです。 ケース1からケース4まで、どれも読後はとても爽やか。 そして小説とはいえ、やっぱりこうすれば痩せるよね、というポイントもちゃんと抑えてあるのも嬉しい。 それにしても大庭小萬里って、どこかで似たような名前を聞いたことがあるような……。 そう思っていたら、垣谷美雨さんの小説『あなたの人生、片づけます』の主人公、大庭十萬里の妹だという設定なのでした。(小説の中では十萬里の著書は『あなたの片付け手伝います』というタイトルになっていますが) 姉がお片づけ指導者、妹がダイエット指導者とは、ある意味最強の姉妹です。 終盤には姉妹の母親も登場し、この一家の物語も読んでみたい気がするのでした。(もしかしたら垣谷さんはすでに書いておられて、私が読んでいないだけかも) 最後に、ダイエット指導者でありながらふくよか体型の小萬里について。 実はただ太っているわけではありません。トレーニングを欠かさない、マッチョなのです。 小萬里が筋肉をつける理由は、老後寝たきりになるのを防ぐため、というくだりを読んで、私は大いに反省しました。 私も ゆる糖質オフダイエットを続けながら、将来のために筋肉をつける!! ともかく前向きになれる小説でした。 ※姉の古萬里が主人公の『あなたの人生、片付けます』についてはこちらをご参照ください。 ⇒下手な片付けノウハウ本よりよほど実用的な小説 『あなたの人生、片付けます』垣谷 美雨(著) ![]() ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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