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ハリスおばさんパリへ行く(ポール・ギャリコ)

素敵なお買物

ミセス・ハリス、パリへ行く
ポール・ギャリコ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。

その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

2024月4月17日放送の番組では、ポール・ギャリコさんの『ハリスおばさんパリへ行く』をご紹介しました。

注:現在『ハリスおばさんパリへ行く』は注文不可になっており、『ミセス・ハリス、パリへ行く』に変わっています。
舞台は1950年台のイギリス、ロンドン。ハリスおばさんは、有能な掃除婦として、幾つもの家を掛け持ちしていた。

散らかり放題、汚れ放題の家を手際よく掃除し、気持ちよく生活できるように仕上げるハリスおばさんだが、ただ単に雇われているわけではない。

ハリスおばさんの流儀に合わない人、許し難いことをした相手には、さっさと合鍵を返し、2度とその家には訪れない。お仕えする相手をハリスおばさんの方が選ぶといった具合だ。

ハリスおばさんは夫に先立たれて以来、こうして生計を立ててきたが、一生懸命働いても得られるお金はたかが知れている。

いつも慎ましい生活を心がけ、楽しみといえば同業のバターフィールド夫人と家でお茶を飲んだり、たまにフットボールくじにわずかなお金をかけるくらいのことだ。

ある日、お客さんの家を掃除している時、ハリスおばさんは素敵なドレスを見せてもらった。そのドレスは夢のように綺麗で、素晴らしく、見ているだけでときめくものだった。

そのドレスはフランス、パリのクリスチャン・ディオールのオートクチュールだという。

それ以来、寝ても覚めても、ハリスおばさんの頭の中にディオールの素敵なドレスが思い浮かぶようになった。

だがハリスおばさんはわかっている。ディオールのドレスがどれほど高額かということを。自分のつましい生活にそんなドレスは似合わないということを。

だが、ついにハリスおばさんは決意する。

なんとしてでもディオールのドレスを買うのだと。

そしてついに、ハリスおばさんはパリに向かったのだった……
(ポール・ギャリコさん『ハリスおばさんパリへ行く』の出だしを私なりに紹介しました)
実はですね、ワタクシ最近、新しいお財布を買ったのです。

クリスチャン・ディオールのコンパクトなお財布「ロータス・ウォレット」を。

私はずっと長財布派でした。お札を折るなんて考えられないと思っていました。

今使っているのはブルガリの長財布。とても気に入っているのですが、年齢とともに鞄を小さくしなくてはと考え、ついにコンパクトウォレットに変えようかと思った時、思い切りときめくお財布にしようと考えました。

色々見た中で、クリスチャン・ディオールのロータス・ウォレットに照準を合わせたのですが、高い!

もちろん、ものの値段というのは、買う人によって感覚が違うと思います。

ロータス・ウォレットを「あら、お安いわね」と即決で買う人もおそらくたくさんいらっしゃることでしょう。

だけど、私の経済感覚ではめちゃくちゃ高いと思いました。

どうしよう、買おうか、今の財布を使い続けようか……

まぁ半年以上は悩みましたね。

で、3月下旬についに購入。

阪急百貨店梅田店2階のディオールへ行き、実物を見せてもらった後「これ、いただくわ」と言った時、めちゃくちゃテンションが上がりました。

「こんな高い買い物…ついに買ってしまったぞー!!」
「でもこれ、可愛い!めちゃくちゃ可愛い!」

そんな感じです。

はい。財布みたいな小さいものでもこの有様。

ハリス夫人が欲しいと思ったのはドレスです。クリスチャン・ディオールのドレス。

ハリスおばさんが計算したところざっと300万円くらい必要だということになりました。

さぁ、どうする、どうする?

「毎日人のうちのお掃除をしている人にそんなドレスが必要ですか?」
「着て行くところもないのでは?」
「300万円が用意できるのだったら別のことに使ったらいいのに」

そんなことをおっしゃる人もいるでしょうね。

ハリスおばさん自身もわかっているのです。ディオールのドレスを買ったからといってそれを活かす場所もないっていことは。

だけどハリスおばさんはこう自分に言います。
ドレスを戸だなの中につるしておいたら、へやをるすにしてはたらいているときも(あそこにあれがあるんだよ。)と思っていられる。帰って戸をあけると、そこには、すてきな手ざわりと、目の保養をさせてくれるじぶんのドレスが待っている。そうなったらどんなにいいだろう。

 ハリスおばさんは、びんぼうぐらしのしつづけだったので、あじわえなかったこの世のすべてのたのしみが──まずしい生活の程度までが──、たった一まいのすてきなドレスの持ち主になることで、つぐなわれるような気がした。
(ポール・ギャリコさん『ハリスおばさんパリへ行く』P36-37より引用)
この文章を読んだとき、私は声に出して叫びそうになりました。

「いい!好きにして良い!パリへ行きなはれ!ディオールでドレス買いなはれ!」

誰に迷惑をかけるわけでもなし。誰がなんと言おうとも、ハリスおばさんが自分の腕で稼いだお金を何に使おうが文句を言われる筋合いはないではありませんか。

とはいえ、ハリスおばさんが数百万円貯めるためには、山あり谷あり、色々ありました。

それでもハリスおばさんはディオールのドレスをあきらめません。

ついに3年ほどかけて目標金額を達成し、パリへ向かうのでした。

すごいなぁ、ハリスおばさん。

でも、ちょっと心配になりませんか?

よく、ヨーロッパの高級ブランドのブティックに入るとき、服装で入店拒否をされることがあると聞きます。

大丈夫かなぁ、ハリスおばさん。無事にクリスチャン・ディオールのお店に入れてもらえるのだろうか?ドレスを買いますと言って、ちゃんと相手してもらえるだろうか?

フランス語もおぼつかないハリスおばさんのパリでの経験にハラハラ、ドキドキ。そしてにっこり。

ハリスおばさんがクリスチャン・ディオールで無事にドレスを買うことができるのか?

そしてその後、ロンドンに帰ったハリスおばさんはどうなるのか?

実際に読んでみてくださいね。

この本は児童書なのですが、私にはとても学びがありました。

目標を定めたらがむしゃらに突き進むハリスおばさんの頑張り、とにかく明るい性格。

そして何かマイナスの出来事が起こったとき、人のせいにしないのも良い。

そこからどうやって立ち直るのか、ハリスおばさんはとてもいいお手本です。

この物語はまだクリスチャン・ディオール本人が生きておられる時のことで、若干古めかしい光景もありますが、自立して生きる女性の心意気や「素敵な物欲」など、今と変わらないところも多いです。

そして、最終的に「クリスチャン・ディオール」のドレスも素晴らしいけれど、人との縁や温かい気持ちも同じくらい素晴らしいことにも気付かされます。

買い物とは、お金と引き換えに物を得るだけの行為ではないのです。

ぜひ、大人の女性にもおすすめしたいお話でした。
ミセス・ハリス、パリへ行く
ポール・ギャリコ(著)亀山 龍樹(訳)
KADOKAWA
1950年代のロンドン。ハリスおばさんはもうすぐ60歳の通いの家政婦。夫を亡くし、質素な生活を送っている。ある日、勤め先の衣装戸棚でふるえるほど美しいクリスチャン・ディオールのドレスに出会う。今まで身なりなど気にしてこなかったが、自分もパリでドレスを仕立てようと決意し、必死でお金をためることに。やがて訪れたパリで、新しい出会い、冒険、そして恋?何歳になっても夢をあきらめない勇気と奇跡の物語。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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