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サバンナで野生動物を守る(沢田俊子)

人間ってそんなに偉いものかしら?

サバンナで野生動物を守る
沢田 俊子(著)
私がパーソナリティを務めさせていただいているエフエムあまがさきの番組「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。昭和の歌をお送りしています。番組では講談社さまのご協力のもと、毎月一冊新刊をご紹介、その本をプレゼントしています。

2022年7月にご紹介したのは、沢田俊子さんの『サバンナで野生動物を守る』。(このプレゼントの応募は締め切りました)小学校中学年から読める本で、読書感想文にもピッタリ。

この本の表紙に写っている素敵な笑顔の女性は、太田ゆかさん。南アフリカ共和国でサファリガイドとして働いておられます。サファリガイドを務める日本人女性は太田さんただ一人なのだそう。

というのも、サファリガイドになるためには、サファリカーの運転資格、ライフル銃の資格、救命救急能力、トラッキング資格など、いろいろな試験に合格しなくてはなりません。そもそも、南アフリカに移住して働きたいという日本人女性がそう多いとは思えません。太田さんは並々ならぬ決意と努力でお仕事を続けておられるのだと思います。

サファリ「ガイド」ですから、お客さまに野生動物を見ていただくサファリツアーが主な業務でしたが、このコロナ禍で旅行者が激減。サファリツアーにもお客様が来なくなりました。

そこで、ゆかさんが企画したのはバーチャルサファリツアー。リアルタイムで動画配信をみていただき、チャットで質問などを受け付け、その場で答える、というもので、コロナ禍に家にいながらサファリ気分を味わえると、好評を博し、窮地を脱したのでした。

サファリガイドのお仕事はそれだけではありません。絶滅が危惧される動物たちを保護したり、密猟者から守ることにも、ゆかさんは力を尽くしています。

それはとても崇高なことのように思うのですが、読み進めていくうちに、単純に感心できないような気持ちになってきました。

そもそも、人間が自分達の都合で環境破壊をおこなったり、密猟をおこなってきて数を減らしてしまった動物たち。それをまた人間が守るなんて、マッチポンプな気がしてきて。

「守る」ためにライオンに避妊手術を施すなんて、自然の摂理に反しているではないですか。

まるで人間は全能の神で、他の動物を支配するのが当たり前であるかのよう。

筆者や太田ゆかさんを非難するわけではないのですが、本当に人間はこれでいいのか、と思ってしまいました。

とはいえ、よくよく考えると、我が家で飼っている犬や猫は全て去勢しています。

ペットならよくて野生動物だったらダメなのか?

そんなはずはありません。私自身、自分が反発を覚えている「全能の神のように振る舞う人間」の一人なのです。

人間って、そんなに偉いものかしら?

いつか自然から手酷いしっぺ返しを喰らうんではないかしらん?

本来この本は小学校中学年から読める子どもさん向けの本で、私のようなひねくれた読み方をするものではないと思います。もっと素直にサファリガイドの仕事内容や、野生動物たちについて知り、驚き、もっと勉強する入り口にするものだと思います。

すみません!!
サバンナで野生動物を守る
沢田 俊子(著)
講談社
太田ゆかさんは、南アフリカ共和国で働く政府公認のサファリガイド。さらに、絶滅が心配される野生動物の保護活動にも取り組んでいます。教えて、ゆかさん。サファリガイドには、どうしたらなれるの?どんな仕事なの?南アフリカの野生動物たちに何が起こっているの?小学中級から。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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