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看守の流儀(城山真一)

読み返さずにはいられない

看守の流儀
城山真一(著)
刑務所を舞台にした城山真一さんの小説『看守の流儀』を読みました。非常に面白かったです。
石川県にある加賀刑務所では様々な受刑者たちが更生プログラムを受けている。

しかし全てすんなりいくわけではない。せっかく模範囚と認められ、仮出所を果たした途端、行方不明になる男がいれば、ガンで余命僅かと診断される受刑者もいる。

そうかと思えば、刑務所内で印刷されていた大学入試問題が漏洩したり、受刑者の健康診断記録とレントゲンフィルムが消失したり。

特別な任務のため、加賀刑務所に期間限定で派遣されている警備指導官 火石司は、そのつど冷静に問題を見極め、解決していく。
(城山真一さん 『看守の流儀』を大雑把にご紹介しました)
この小説は5つの短編の連作形式です。目次を引用します。
第一話 ヨンピン
第二話 Gトレ
第三話 レッドゾーン
第四話 ガラ受け
第五話 お礼参り
日本では刑務所が舞台の小説は珍しいように思います。

私は警察官と刑務官が別物だということも、この小説を読むまで知らなかったくらい、刑務所については知らないことだらけ。

それぞれのタイトルに使われている刑務所専門用語の意味もこの小説を読んで知りました。

まずはそういった、知らないジャンルのことを知る面白さがこの小説にはあります。

しかし、本当に「面白い!」と膝を打つことになるのは、第五話も終盤に入ってから。

「え?!どういうこと?!」

と、しばらく考えこみ、小説の最初に戻って、自分が読み落としていたことがあったのではないかと確かめずにはいられませんでした。

そして「そういうことだったのか!」と納得しました。

この小説は、短編ごとに異なる刑務官と受刑者が主人公になっています。

でも全般を通じての主役は、特別任務のため派遣されている火石司警備指導官です。

受刑者たちからも一目置かれ、火石警備指導官の解決法は時に「火石マジック」と呼ばれています。

読者である私も火石マジックにかけられました。

最近は、人気小説のドラマ化・映画化が当たり前ですが、この小説はある意味、映像化は難しいかも。文章で読むからこその火石マジックだと思いました。
看守の流儀
城山真一(著)
宝島社
刑務所、そこは更生の最後の砦ー。シャバ以上に濃厚な人間関係が渦巻く場で起きた五つの事件。仮出所した模範囚の失踪、暴力団から足を洗う“Gとれ”中に起きた入試問題流出事件など、刑務官たちの矜持と葛藤がぶつかり合う連作ミステリー。『このミス』大賞受賞作家、渾身の一作!刑務所を舞台に描く重厚な人間ドラマ。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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