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炎環(永井路子)

鎌倉時代に興味が尽きない

炎環
永井路子(著)
毎週日曜日が楽しみでたまらないほど、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にハマっております。

時間が許す時は6時からBSで、8時から本放送を見ている私ですが、鎌倉幕府成立以降の歴史をほとんど何も知らないんです。

そもそも源頼朝を意識したのは、歴史の授業を除いては、1979年に見た大河ドラマ『草燃える』以来かも。

ということで『草燃える』の原作の一つである永井路子さんの『炎環』を読むことにしたのでした。

『炎環』は4つの作品から成り立っています。どれも、源頼朝の周囲にいた人たちが主人公。

それぞれのタイトルと、主人公、『鎌倉殿の13人』でのキャストをご紹介しましょう。敬称略で失礼します。
『悪禅師』阿野全成(新納慎也)
『黒雪賦』梶原景時(中村獅童)
『いもうと』北条保子(宮澤エマ)
『覇樹』北条義時(小栗旬)
今まさに並行して大河ドラマを見ているので、小説の中に登場する武士たちの名が親しみ深いことと言ったら。

文章を読みながらも、頭の中ではそれぞれキャスティングされている俳優さんが動いて喋ってくれるので、非常に立体的な手応えを感じました。

この四編の小説の主人公たちは、動と静でいえば、全員「静」のタイプです。

「動」の代表とも言える源義経が、短い期間のうちに誰もが驚く華々しい活躍を遂げたのちに、悲劇的な最後を迎えるのに対して、上の4人は長い時間をかけて生き延び、自分の「時」が来るのを待とうとします。

実の兄弟であろうと、古くから協力し合った仲間であろうと、権力者の気持ち一つで追い落とされるこの時代には、情勢の分析や先を読む目、そして用心深さがないと生き残っていけないのです。派手な動きをしていては、すぐに陥れられてしまうので、自然と「静」の人になっていくのでしょう。

ただし、上の4作の主人公のうち、長い雌伏の時を実らせることができたのは北条義時のみ。

それぞれの思惑と、布石、そして得られた結果は、歴史に刻まれており知識としてはわかっているのですが、永井路子さんの文章で読むと、ドラマを感じます。

この作品で永井さんが第52回直木賞を受賞しているのも うなずけます。

それにしてもこの作品が出版されたのはなんと1964年!

ほぼ私と同じ歳。

なのに、文章に全く古さを感じません。驚きます。永井路子さんってすごい作家さんだったのね。

鎌倉幕府樹立にまつわる知識が増えた分、ますます『鎌倉殿の13人』にハマりそう。

1979年の大河ドラマ『草燃える』は『炎環』以外に、同じく永井路子さんの『北条政子』、『つわものの賦』、『相模のもののふたち』『絵巻』を原作としています。

他の作品も読んでみたくなりました。
炎環
永井路子(著)
文藝春秋
京の権力を前に圧迫され続けてきた東国に、ひとつの灯がともった。源頼朝の挙兵に始まるそれは、またたくうちに、関東の野をおおったのである。鎌倉幕府の成立、武士の台頭―その裏には彼らの死に物狂いの情熱と野望が激しく燃えさかっていた。鎌倉武士の生きざまを見事に浮き彫りにした傑作歴史小説。直木賞受賞作。 永井路子が本作『炎環』以来、ずっと持ち続けてきたものは、「鎌倉」への関心と興味だという。つまり、『炎環』は、起点であるばかりでなく、永井文学の原点なのである。解説・進藤純孝 出典: amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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