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王城の護衛者(司馬遼太郎)

歴史が求めた男たち

王城の護衛者
司馬 遼太郎(著)
久しぶりに司馬遼太郎さんの作品を読みました。

会津藩主 松平容保を描いた『王城の護衛者』をはじめ、幕末に現れた人物たちを描いた短編が5つ収められたものです。

短編それぞれの主人公を挙げておきます。
『王城の護衛者』 会津藩主 松平容保
『加茂の水』   岩倉具視を支えた玉松操
『鬼謀の人』   長州藩の軍師 村田蔵六
『英雄児』    長岡藩の河井継之助
『人斬り以蔵』  土佐藩の岡田以蔵
いずれも幕末に現れ、歴史に名を残した人物たちです。

私がこの本を手に取ったのは、昨年映画館で見た、岡田准一さん主演の映画『燃えよ剣』がきっかけ。尾上右近さんが演じた松平容保があまりにも魅力的で忘れがたく、その生涯を知りたくなったのです。

そもそも『燃えよ剣』も司馬遼太郎さんの作品です。

私は中学3年生の時に読んで、大興奮。新撰組副長 土方歳三のファンになっただけではなく、作家司馬遼太郎のファンにもなりました。

でも、このところずっと司馬さんの作品を読まずにいました。

久しぶりに読んでみて、改めて司馬遼太郎さんの文章に引き込まれました。

リズム、言い回しが独特で魅力的なのですが、特に冒頭が素晴らしいのです。

それぞれご紹介しますね。
会津松平家というのは、ほんのかりそめな恋から出発している。
(『王城の護衛者』冒頭 『王城の護衛者』P8より引用)

記憶しにくい名だ。
玉松操。
それが、この老人の名である。
(『加茂の水』冒頭 『王城の護衛者』P134より引用)

「ふしぎな人物がいる」
とは、桂小五郎もきいていた。名前は村田蔵六という。
(『鬼謀の人』冒頭  『王城の護衛者』P190より引用)

江戸で学問するなら、当節、古賀茶溪先生の塾である、ときいて、鈴木虎太郎は、安政六年、十六歳のとき伊勢国津から出て来て、入塾した。
(『英雄児』冒頭  『王城の護衛者』P276より引用)

不幸な男がうまれた。
(『人斬り以蔵』冒頭  『王城の護衛者』P336より引用)
いかがですか?

短くてリズムのいい言葉選び、司馬遼太郎さん独特の語り口調に、物語世界にスッと引き込まれてしまいませんか?

ああ、これこれ。これが司馬遼太郎さんの文章だわ、と嬉しくなってしまいます。

この文庫本に収められた短編の主人公たちは、いずれも幕末の日本にいた実在の人物たち。

容姿端麗で教養もあった松平容保は、他家から相津藩主の養子となります。何があっても将軍家を守ることを藩是とした会津藩。外国からは開国を求められるという一大転換機に、守るべき徳川幕府は倒されようとしている、そんな時期に権謀術策渦巻く京都を守るお役目「京都守護職」を引き受けた松平容保。自分なりの「義」を持って動乱の時代を生きた松平容保に美しさを感じるのは私だけではないと思います。

平時に生まれていれば立派なお殿様として普通に任務を全うしたでしょうが、その代わり、のちの世に語り継がれる存在になれたかどうかは怪しいです。

誰も見たことがなかった「錦の御旗」を考案し、長州・薩摩を官軍に仕立て上げた玉松操は、元々は近江で世捨て人のように暮らしていた老人です。岩倉具視と組んでいなければ、のちの歴史は大きく変わっていたかもしれませんし、玉松操という名が歴史に残ることはなかったかもしれません。

村田蔵六、河井継之助、岡田以蔵にしても、生まれた時代や場所、身分が違えば、何事もなく一生を終えたのかもしれません。

だけど、彼らはまるで歴史から選ばれて役割を割り振られたかの如く、その時代その場所に現れて来たのです。

歴史とは本当に面白い、そう思わずにはいられません。

そう思わせてくれるのは司馬遼太郎さんだからかも。

まだ読んでいない司馬遼太郎さんの作品を読みたくなったし、かつて読んだ作品を再読したくなりました。
王城の護衛者
司馬 遼太郎(著)
講談社文庫
薩長両藩が暗躍し、攘夷派の浪士たちが横行する、無政府状態に近い幕末の京。新たに京都守護職を命じられた会津の青年藩主・松平容保は、藩兵千人を率い、王城の護衛者として治安回復に乗り出すが、複雑怪奇な政治の術数に翻弄され…。表題作の他に、「加茂の水」「鬼謀の人」「英雄児」「人斬り以蔵」を収録。 出典:楽天
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池田 千波留
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コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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