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博物館の少女(富安陽子)

おとなにも読み応えがある児童書

博物館の少女
怪異研究事始め
富安陽子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、富安陽子さんの『博物館の少女 怪異研究事始め』

この物語の主人公は花岡イカル、13歳。

「イカル」は鳥の名前です。そんな鳥知らないなぁと思ったのですが、奈良県斑鳩町の「イカル」なのですね。もちろん斑鳩町ではイカルが町の鳥と定められ、町章(マーク)にもその姿が描かれています。

なんと個性的な名前のヒロインでしょうか。

イカルは名前だけではなく、独特な個性を持っています。それはまだ13歳だというのに、美術品や工芸品の目利きができること。

イカルの父親は大阪下寺町で道具屋を営んでいました。イカルは幼い頃から、店に出入りし、お店に並んでいる品物を見たり、父親の客あしらいを眺めていました。イカルの父はいつも店に入ってくるお客様を一目見るだけで、その人の予算や趣味などを見抜き、適切な商品を勧めており、それをそばで見ていたイカルも段々とものを見る目が養われたというわけです。

でも幸せな時は長く続きません。父が死に、後を追うように母が亡くなり、13歳にしてイカルは一人ぼっちになってしまったのです。そして母方の遠縁に引き取られることになり、東京に引っ越すことになりました。

幸いにもイカルを引き取ってくれた老夫婦は、厳しいけれど筋の通った良い人でした。

そして彼らの孫娘とよは イカルとほぼ同じ歳で、二人はすぐに仲良くなりました。

とよにも才能がありました。画才です。画家の父親を師匠と仰ぎ、日本画の勉強をしているという とよ。とよの描いた絵を見て目利きのイカルは「この人は本物だ!」と感動するのでした。

とよが、上野にできたばかりの博物館に自分の絵を持っていくのに同行したことがきっかけで、イカルは博物館で「助手」として働かせてもらえることになります。博物館の館長さんがイカルの目利きの才を見抜いてくれたのです。

冒頭こそ、ひとりぼっちのイカルを不憫に思いましたが、自分の才能で道を切り開くイカルに頼もしさを感じるようになりました。イカルの場合、道を切り開いたというよりも、才能が自然と道を作ってくれた、といった方が正しいかもしれませんが、いずれにしても自分に備わった能力を活かすことは素晴らしいことだと思わずにはいられません。

もちろん、イカル一人の力ではなく、周囲の人の優しさや観察眼の素晴らしさがイカルを助けているのは間違いありません。イカルの周囲に底意地の悪い人がほとんど出てこないのは児童書ゆえの配慮で、実際にはこんなにとんとん拍子にいくことはないのかもしれません。でも、現実世界で色々なことがあるからこそ、読んで元気が出て、心が温かくなる物語が必要なのかもしれません。

博物館に勤めたことでイカルが出会う謎や怪異については実際に読んでみてくださいね。

ところで、私は明治時代の歴史に詳しくないため気がつかなかったのですが、イカルが出会う人たちのほとんどが実在の人物なのです。引き取ってくれた老夫婦や、その娘も婿も、孫も、博物館の関係者も。

特に、老夫婦の娘婿、画家の河鍋暁斎と娘とよ(のちの河鍋暁翠)は有名なかたなのですね。全然ピンとこない自分が恥ずかしい!

歴史に詳しい方が読むと、一層面白さが増す物語でした。

ちなみに、澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』は とよ(のちの河鍋暁翠)が主人公なんですって。この物語の余韻がある間にぜひ読んでみたいものです。
博物館の少女
怪異研究事始め
富安陽子(著)
偕成社
運命に導かれ、日本に誕生して間もない博物館にやってきた少女イカル。その蔵で怪異の研究に取りくむ老人を手伝ううち、不思議な事件に巻きこまれていく。文明開化アヤカシ譚。中学生から。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

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『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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