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月下のサクラ(柚木裕子)

冒頭15ページで夢中に

月下のサクラ
柚月裕子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、柚木裕子さんの『月下のサクラ』。

読み始めてたった15ページで、物語に引き込まれました。

物語の始まり、誰かが繁華街を歩いています。

それが誰なのか、何をしているのかは分かりません。

3ページ目で、歩いているのは女性だと判明。

どうやらその女性は男性を尾行しているよう。

細かい配慮や目配りの様子からして、読者はこの女性は「プロ」かもしれないと思い始めます。

ただしプロと言っても探偵なのか、刑事なのか、そのあたりは分かりません。

わからないながらに、読者は息を詰めるようにしてその女性と一緒に相手の男を尾行しているような気持ちになるのです。

尾行している相手に気取られたかもしれないと思った時、陰に隠れて瞬時に外見を変える女性の素早さ。

やはり「プロ」だな、と思っていたら、なんと相手はもっと うわ手だったようで、女性は尾行を巻かれた上に、歯がいじめにされます。

絶体絶命、もしかしたらこの女性が殺されるところから物語が始まるのだろうか、と思ったら、この尾行は警察の人事に関するテストだったと判明。

女性は尾行に失敗し、人事考査落第ということに。

それがちょうど15ページ目、というわけ。

一体この尾行がなんなのか、わからないままにハラハラドキドキさせる15ページ。この小説は絶対に面白いと確信しました。

考査を受けていたのは、この小説の主人公森口泉で、最初は某県警に事務職として採用されていたが、30歳の時に刑事を目指して警察学校へ。交番勤務、交通課を経て、33歳で刑事になった遅咲きです。

男女格差が問題になる現代においても、圧倒的に女性が不利なのが刑事の世界。

そもそも刑事としてのスタートが遅かった泉が女性であるハンデをも飛び越せる職種がないかと考えた末、目指したのが、捜査支援分析センター 機動分析係。

事件での情報を解析、プロファイリングする部署です。

尾行のテストで不合格になったはずの泉が、なぜか上司の口添えで希望部署に配属された途端、県警内の金庫から大金が紛失。

内部の犯行である可能性が高く、さっそく泉も捜査に参加することになります。

上司の口添えで入ってきた新入り、しかも女性に、冷たかった同僚が、事件解決という目的のため結束していく様子が読んでいて気持ちがいいです。

この小説は通常のミステリとは趣が違う気がします。

ミステリーの定石フーダニット(Who done it、誰がやったのか)以上に、警察にはいろいろな部署があること、データ解析などの地道な捜査の現場の様子、そして仕事への誇りや仲間の大切さに重点が置かれているのです。

私はこの小説を「お仕事小説」として楽しみました。

もちろん、ミステリとしても大いに楽しめると思います。登場人物がみな個性的なので、ドラマや映画化しても楽しめそうです。
月下のサクラ
柚月裕子(著)
徳間書店
事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングし、解決へと導く機動分析係。森口泉は機動分析係を志望していたが実技試験に失敗。しかし、係長・黒瀬の強い推薦により、無事配属されることになった。鍛えて習得した優れた記憶力を買われたものだったが、特別扱い「スペカン」だとメンバーからは揶揄されてしまう。自分の能力を最大限に発揮し、事件を解決に導くー。泉は早速当て逃げ事件の捜査を始める。そんな折、会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚した。メンバー総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者による線が濃厚で、やがて殺人事件へと発展してしまう…。気鋭の作家が贈るノンストップ警察ミステリー。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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