うちの父が運転をやめません(垣谷美雨)
全く他人事ではない うちの父が運転をやめません
垣谷美雨(著) 逆走、アクセルとブレーキを踏み間違えるなど、ここ数年、ご高齢者の交通事故のニュースが多いように思います。
自動車の運転は判断能力と運動能力、両方が必要ですから、ある程度の年齢が来たら、免許証を返納すべきだと思うのですが、さて、それが自分の親の場合、説得できるかどうか自信がありません。 もしかしたら多くの人が悩んでいるかもしれない、その気持ちそのままのようなタイトルの小説を読み終えました。 猪狩雅志は50代後半で、妻 歩美との間には一人息子 息吹がいる。不妊治療の末に授かった息吹はまだ高校2年生。最近めっきり口数が減り、難しい年頃だと感じている。
思えば夫婦共働きで忙しく、息子の成長をきちんと見守ってこれなかったのではないかと思う。しかし東京の便利な場所にマンションを買い、ローンを返済していき、息子を私学に通わせるとなると、こうするしかなかったとも思うのだ。 雅志は一人っ子で、両親は田舎で暮らしている。二人とも元気なのはありがたいが、もうすぐ80歳になる父親は、最近は車のあちこちをこすったりぶつけたりしているらしい。 高齢者が起こす事故のニュースを見るたびに、これが自分の父親だったらと、雅志は心配で仕方がない。雅志は父に免許返納を勧めてみるのだが…… (垣谷美雨さんの『うちの父が運転をやめません』の出だしを私なりに紹介しました) よく言われることですが、田舎暮らしのご高齢者にとって、車がないというのは大変不便です。病院に行くにも買い物に行くにも足が必要。
過疎化の町の路線バスは赤字続きで、どんどん間引き運行になるし、用事があるたびにタクシーに乗っていては、金銭的に立ち行きません。 最初はそれだけが運転を続ける理由だと思っていましたが、免許返納は父親のプライドを傷つける事でもあるのだと、雅志は気がつきます。 これまでできていたことができなくなる、それをなかなか認めることができないのですね。「まだまだワシは元気だ!」ということです。 父親の免許返納を考えるうちに、両親が住むまちの問題点に雅志は気が付いていきます。 まだ人口が多い時代に参入してきた大型スーパーは過疎化が進むと撤退。 大型スーパーの進出によって地元にあった商店はとうの昔に閉店してしまっているため、日常の買い物にも不便な思いをしている”買い物難民”が少なくないのです。 この小説の中には高齢化社会が直面している問題がいくつも散りばめられていました。 雅志は最初、父親の免許返納だけを問題視していたのですが、徐々に、自分の生き方や、会社員として組織で働くことの意味、両親の介護の問題、息子との関係など、様々な問題に直面することになります。 雅志の解決方法は、理想的ではありますが、よほど腹をくくらないと実現できないと思います。 私自身はどうすれば良いのか、どうすべきなのか、色々考えさせられました。 余談ですが、雅志の故郷はどうやら関西圏のよう。おそらく京都府か、兵庫県北部あたりでしょう。行ったことのある地名が出てきて、景色なども想像がつくので、小説世界に没頭しやすかったです。 うちの父が運転をやめません
垣谷美雨(著) KADOKAWA 「また高齢ドライバーの事故かよ」。猪狩雅志はテレビニュースに目を向けた。そして気づく。「78歳っていえば…」。雅志の父親も同じ歳になるのだ。「うちの親父に限って」とは思うものの、妻の歩美と話しているうちに不安になってきた。それもあって夏に息子の息吹と帰省したとき、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して…。果たして父は運転をやめるのか、雅志の出した答えとは?心温まる家族小説! 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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