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螻蛄(黒川博行)



 
螻蛄
ーシリーズ疫病神ー
黒川博行(著)
出版社:新潮文庫(2014)【内容情報】(信者五百万人を擁する伝法宗慧教寺。その宗宝『懐海聖人絵伝』をめぐるスキャンダルに金の匂いを嗅ぎつけた、相性最悪の二人組、自称建設コンサルタントの二宮とイケイケ経済ヤクザの桑原。巨大宗派の蜜に群がる悪党どもは、腐敗刑事、新宿系極道、怪しい画廊の美人経営者。金満坊主から金を分捕るのは誰か。東京まで出張った最凶コンビの命運は? 人気シリーズ「疫病神」第2弾。(出典:楽天ブックス
シリーズ疫病神。

昨年『破門』で、ついに直木賞受賞した黒川博行の
人気シリーズです。
『破門』はBSスカパーで連続ドラマ化されたので
それをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。

シリーズ疫病神の主役は二人。

タメの喧嘩では負けることがなく
同業者は容赦なく叩きのめす、
大阪 二蝶会のヤクザ 桑原保彦を北村一輝に。
一応カタギ(事情あり)ではあるものの、
建設コンサルタントとして現場をサバくため
ヤクザとも付き合いがある二宮啓之を濱田岳に。

キャスティングした人は天才ですね。
これまで黒川博行の「疫病神シリーズ」を何作も読んでいますが
イメージにぴったり!
これ以上ぴったりの俳優さんが他に居る気がしません。

言うまでもないことかもしれないけれど
”疫病神”は桑原保彦です。

『螻蛄』が新潮社から出版されたのが2009年7月ですから
小説の中でおこる事件は『破門』より前の出来事。
主役二人も、ちょっと若い。
そういうことを頭に入れて読み始めました。

私にとって、黒川博行はハズレのない作家。
普段なら、ぐんぐん引き込まれ
時にゲラゲラ笑いながら読むのに
『螻蛄』はなぜか興が乗らないんです。
うーむ。分厚い本だぞ、こんな調子で最後までたどり着くかな?

***
ある日二宮が事務所に出勤してみると
3件のファックスが届いていた。
そのうち1件は”疫病神”からのもの。

あんな疫病神と付き合っていては命がいくつあっても足りないと
無視をしていたら”疫病神”本人が事務所にやってきた。
髪の毛をオールバックにし、縁なしメガネをかけ、
黒いピンストライプのスーツにダークグレーのボタンダウンシャツ、
ノーネクタイ。
一見 クラブのマネージャーに見えなくもないが
身のこなし、眼の光から
「隠しきれないプロの匂いがある」。

金の匂いに敏感な経済ヤクザの桑原。
今回のシノギ(金儲け)は
信徒500万人を擁する伝法宗慧教寺が相手だという。
宗派の宝である『懐海聖人絵伝』をめぐるスキャンダルに
金の匂いを嗅ぎつけたのだ。

生臭坊主、腐敗した刑事、東京のヤクザ、
海千山千で美貌の画廊経営者、
そして疫病神・桑原と、
今度も巻き込まれてしまった二宮。
誰が金満坊主の金を手にするのか?!
***

なぜ気が乗らなかったのかと自己分析すると、
「寺社」を中心に生臭い話が展開されるから。
黒川博行はどの作品も綿密に取材をして書くそうです。
だから、登場する生臭坊主、金満坊主たちが妙にリアル。
宗教のトップがヤクザとつるんでいるなんて、
いくら小説とはいえ、読んでいて愉快じゃないです。
ましてや、ここまでしっかり描かれていると
「ひょっとして本当にこんなことがあるのじゃなの?」と
思えてしまいます。

この作品が何も非難を受けず、文庫化までされているのが不思議。
いやいや、現実にはこんなお坊さんはいらっしゃらないから
「まぁ、破天荒な小説書かはりますなぁ。
ほほほほほ」と
懐深く、容認されているのかしら?

もう一つ、大阪、京都、東京、名古屋と
舞台がめまぐるしく移り変わり、
方向音痴な私としては、置いてけぼりな気分になったのも
『螻蛄』を楽しめなかった理由かもしれません。

桑原と二宮の漫才のような会話や
美人画廊経営者の存在など
部分部分は十分に面白いです。

お時間がたっぷりある時にどうぞ。

それにしても『螻蛄』って難しいタイトルですねぇ。
恥ずかしながら初見では「けら」と読むことができませんでした。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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