世界でいちばん素敵な宝石の教室(東郷史子)
宝石には物語がある 世界でいちばん素敵な宝石の教室
東郷史子(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
2024月10月9日放送の番組では、東郷史子さん監修の『世界でいちばん素敵な宝石の教室』をご紹介しました。 私はアクセサリーがかなり好きです。ネックレス、ブレスレット、指輪はほぼ毎日身につけています。めちゃくちゃ高価なものを持っているわけではありません。私にとってはアクセサリーや宝石はお守りのようなもので、つけ忘れるとソワソワ落ち着かない気分になるのです。 私が宝石を好きになったのは、もう30年以上前に、叔母がジュエリーショップを開業したことがきっかけでした。叔母の店では毎年、秋になると「ジュエリーフェア」が開催され、そこに顔を出しているうちに、いろいろな宝石を目にし、知識も増えてきて、好きになっていったのです。 『世界でいちばん素敵な宝石の教室』には宝石に関する一問一答のほか、さまざまな宝石の原石や、アクセサリとして完成した宝石の写真が満載。どのページも美しく煌めいていて、見ているだけでうっとりします。 宝石って不思議ですね。数百万年もの歳月、地中で育まれて生まれてくるのですが、熱や水、どれくらい深い場所で生成されるかなど、いろいろな条件で色や硬さが異なるのです。 この本によると、紀元前5000年頃のメソポタミアでトルコ石が装飾として使われていた記録が残っているそうです。古くから人々は宝石の美しさや神秘的な様子に魅了されていたようです。 原石を研磨する技術が確立してからは、宝石にいっそうの輝きが与えられることになりました。宝石の輝きが、いつも人々に幸せを与えるとは限りません。現在スミソニアン博物館に収められている大きく青いホープダイヤなどは、持ち主が皆不幸になったという逸話があります。 映画『タイタニック』でも大きくて青いハート型のダイヤのネックレスが登場しました。元々は主人公ローズの婚約者、キャルが持っていた宝石。 沈みゆくタイタニックの喧騒の中で、キャルがローズに着せ掛けたコートのポケットに入っていたため、ローズが持つことになりました。ローズはそのダイヤを自分が持っていることを誰にも知らせず、物語の終盤に、ボートから海に落とします。 おばあちゃまになったローズが若いものたちにタイタニック沈没の真実を話し終わり、心に一区切りついたということだったのでしょう。とても印象的なシーンでした。 宝石は物語を秘めるものかもしれません。実は私にも、宝石に関係する小さな物語があるのです。 2023年2月に父が他界しました。その半年前、2022年の秋のことです。先に書いた叔母の店で、恒例のジュエリーフェアが開催されました。いつものように顔を出すと、そこに父がおり、私に厚めの封筒を手渡しました。 「これで好きなジュエリーを買うといい。もし足りなかったらその分も出すから」と。実はそのお金は、私が独立して以来、父に渡していたお小遣い(お年玉など)の一部を貯めたものでした。 父はこれまで、私から受け取ったお小遣いはある程度の金額になるまで貯めて、形の残るものを買っていました。最初はブランドもののアタッシュケース。2回目はちょうど父の会社の事務所が移転したタイミングで、応接室に飾る置き時計を買っていました。 その後、何かを買ったという話を聞いていませんでしたが、どうやら2回目以降は何も買わずにずっと貯めていてくれていたようです。受け取った封筒に入っている金額を見て、私は困惑しました。 10万円以下の、普段使いするようなジュエリーを買うには予算が余りすぎます。では、もっと高価なものを買おうとすると、足りないのですよ。いきなり100万円単位になったりするので。 足りない分は出してくれると言っても「じゃあ」と言って高価すぎるものをねだるのも気が引けます。困ったなぁと思いながら、叔母の店に陳列されているネックレスや指輪を順番に見ていくことにしました。 と、その時、隅っこの方に飾られているネックレスが、目に入りました。涙の形をした、ピンク色の透明な石です。その透明度の高さと、キラキラした輝きに心惹かれました。 この石はなんだろう?ダイヤモンドではないだろうし、ローズクオーツでもなさそうに見える。石の名を尋ねたところ「クンツァイト」という返事が返ってきました。私にとっては初めて耳にする名前で、価格帯の想像もつきません。
高いんだろうか?と思って値札を見てびっくり。父が私にくれた予算と全く同じ金額が書いてあるではありませんか。しかも税込だというのです。パッと見て気に入ったネックレスの値段が、一円の差もない、予算ぴったり価格。 「これにするわ!」と即決しました。 父は「本当にそれでいいのか、妥協しているのではないのか」と言っていました。父は宝石について余り頓着がなく、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドくらいしか知らない人だったのです。「クンツァイト」と聞いて全くピンときていない様子でした。 私は、妥協したわけではない、本当に気に入ったものが、たまたま予算ぴったりだったのだと説明して、父に納得してもらいました。 その後、父に宝石を買ってもらったのはこれが初めてであることに気がつきました。成人した時、ルビーの指輪をもらったのですが、それは父のネクタイピンを指輪にリメイクしたもの。 もちろん嬉しかったですが、私のために買ったものではありません。そんなこともあって、クンツァイトのネックレスは私にとって特別なものとなりました。 父が他界したのは、それから約半年後。クンツァイトのネックレスは父の形見となりました。 お母様から受けついたジュエリーや、彼氏に初めて買ってもらったアクセサリーなど、色々な人が宝石の物語をお持ちではないかしら。 宝石には物語が似合います。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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