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ワンダー (R.J.パラシオ)

時間をかけてわかり合うことが一番大切

ワンダー
R・J・パラシオ(著)
水野敬也さんの『顔ニモマケズ』は、様々な病気のため、明らかに人とは違う容貌で生きておられる9人の人たちを紹介した本です。その時の記事はこちら

この本がきっかけで仕事仲間と、人間の外見について話しました。

人間は顔だけで判断されるべきではないのはもちろんのことだけど、じゃあ「顔は全く関係ないよ」と軽く言い切ってしまうのは、きれいごと過ぎるね、という意見の一致を見ました。

その時、仕事仲間が「ぜひ、読んでください」と強く勧めてくれたのが、R.J.パラシオの『ワンダー』だったのです。
オーガスト・プルマン10歳。ごく普通の男の子だ。顔以外は。

遺伝子の異常で、普通ではない顔で生まれてきたオーガスト。

27回も手術を受けてきたにも関わらず、オーガストの顔を初めて見る人は、ハッと息を止め、次に何も見なかったような顔をするか、明らかに嫌悪感をむき出しにする。

そんなオーガストが、初めて学校に通うことになった。それも普通の学校に。

オーガストが学校に馴染めるようにと、先生が特別な配慮をしてくれた。「オーガストと仲良くしてあげて欲しい」と頼んでくれたのだ。

おかげで、学校中から集まる好奇の目や、恐怖に満ちた反応を少しは気にせず過ごせた。

しかし、やはり全員がオーガストと仲良くしてくれるわけではない。むしろ仲良くしてくれる生徒の方が少ないくらいだ……。
(R.J.パラシオ 『ワンダー』の導入部分を私なりにまとめました)
『顔ニモマケズ』を読んでいたおかげで、読み始めてすぐに、オーガストの病気は、トリーチャー・コリンズ症候群だなとわかりました。そしてオーガストの生きづらさが想像できました。

とはいえ、学校に通わせる決断は正しいと思いました。いつまでも家の中だけで生きていくわけにはいかないのですから。

予想できると思いますが、オーガストは学校でいじめられます。それはわからないでもない。

同じく10歳の子どもが、自分の理解を超えるものや見た目が良くないものを遠ざけたいと思うのは無理もないことだと思うので。

とはいえ、オーガストをいじめることがフェアではないと感じる子どももいます。その辺りはとてもリアルな描写だと思いました。

この小説は、いくつかの章に分かれていて、章ごとにオーガストや彼を取り巻く人たちの1人称で書かれています。

それによって、一人一人の行動と気持ちがわかります。人それぞれ立場によって考えることが違うし、それぞれに思うところがあるのです。

例えば、常に「良い子」でいたオーガストの姉。

弟の症状や直面している問題の重さを誰より理解しているので、家族の中でいつも弟が最優先であり、両親の気遣いや心配も多くは弟に向けられている、それを当然のことと思っています。

思ってはいても、割り切れないものもある。彼女の章はぐっと胸に迫るものがありました。

『顔ニモマケズ』の時にも書きましたが、人は相手の顔だけを見ているわけではありません。

もちろん外見も大切な要素ではあるのだけれど、内部から滲み出てくるものが、その人全体の印象になります。

オーガストの場合それは、頭の良さや、趣味(スターウォーズ好き)、ユーモアのセンスでした。

お互いに時間をかけてわかり合うことが一番大切なことだと教えてくれる小説です。

映画にもなっているのですね。『ワンダー 君が太陽』
ワンダー
R・J・パラシオ(著)
ほるぷ出版
きっと、ふるえるーオーガストはふつうの男の子。ただし、顔以外は。全世界300万部の感動作。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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