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ぼくはお金を使わずに生きることにした(マーク・ボイル)

もっと人を信じてみようかなと思えてくる

ぼくはお金を使わずに生きることにした
マーク・ボイル (著)
マーク・ボイル氏は1979年、アイルランドで生まれました。大学で経済学を修め、イギリスのオーガニック食品会社に勤めたあと、フリーエコノミー(無銭経済)活動を開始します。2008年からは、1年間お金を使わない生活に挑戦しました。

といっても、お金を節約することが目的ではありません。必要以上にモノを生産し、資源を浪費する経済活動に疑義を唱え、お金が介在しなければ何事もできないという現代人の思い込みを覆そうとする実践であり、実験なのです。

この1年間の無銭経済活動の記録と思想をまとめたのが本書です。

ボイル氏がトライした「カネなし生活」のルールは次のようなものです。1年間、金銭の授受をしない。彼は、使うことはもちろん受け取ることも自らに禁じました。小切手やクレジットカードも使用しません。銀行口座も解約しました。前払いもなしです。

ただし、「フツー」に暮らすことをモットーとしました。ふだんどおりの量の食料や衣類を持ったまま実験生活を開始します。期間中も、友人がディナーに誘ってくれたら招待を受けるし、自分の実験生活に友人や家族を無理に付き合わせることもしません。

自分や人がモノやスキルを必要とするときには、無償で与え、無償で受け取るという原則を立てました。金銭の授受に依らない関係を追求します。「情けは人の為ならず」の精神にも通じます。

さらに驚くべきことに、彼は、化石燃料を使わず、送電網から切り離された状況で生活します。照明、調理、通信のための電気や熱源は、自然エネルギーを利用したり、手回し蓄電機能のあるものを使ったりして確保しました。

移動は徒歩か自転車です。さすがに長距離移動は無理なので、ヒッチハイクは可としました。すでに走っている車は彼を乗せなくても目的地まで走っていくので、化石燃料の消費は最小限に抑えられるからです。

ボイル氏は、工業製品やお金を介しての人間関係をすべて否定するわけではありません。一度生み出されたものは最後まで使い切ること、不要なものは必要とする人のもとに移して役立てることを追求しているのです。

とはいえ、どうやってお金の授受なしで1年間生活するのでしょう。住居や食料はどうやって調達するのでしょう。健康管理は、何かが壊れたときは、どうするのでしょうか。

その答えは、ぜひ本書で読んでいただきたいのですが、結論を言ってしまうと、ボイル氏は、1年どころか、実験終了後も、ほぼお金を介さない生活を続けることに成功します。

不要になったものを譲り受ける、まだ食べられるのに捨てられる食料を入手する、無料でスキルを提供してくれる集まりで生活の技を教えてもらう、何日か無償奉仕するかわりに農場の土地を貸してもらう、採取や栽培で食料を手に入れるなど、わくわくする挑戦が繰り広げられます。

実験終了日には、友人たちと協力して、なんと数千人規模のフリーパーティーまで開いてしまいます。会場、食材、調理、音楽、電気までの一切合切をまったくお金を使わずに調達したのです。一体どうやって、と思うでしょう? 

ボイル氏の実験に対しては、廃棄食品だって、自転車だって、道路だって、連絡手段・情報の受発信に使ったパソコンだって、もとはお金が介在しているではないかという批判もあったそうです。

しかし、すべてのものをゼロから生み出していないという批判は、極端で、意味がありません。

ボイル氏は、明日からいきなり世界中の人がお金を介さない生活をすべきだなどとは言っていません。無償をベースとする経済活動、人間関係に金銭を介在させない暮らしはどこまで可能なのか、自らの行動でもって探求しているのです。

彼の過激に思える実践のなかには、私たちにもすぐにできるような取り組みもあります。たとえば廃棄食品や使い捨て製品を減らす動き、あらゆるモノや情報をシェアする動きが、いまでは世界中で広がっています。もはや特殊な活動ではありません。

それに無銭経済生活は、実は私たちのまわりにも見ることができます。モノやサービスはお金を出して買うものという思い込みを解き、もっと人を信じてみようかなと思えてくる本です。

ボイル氏の無銭経済生活の思想と技をさらに詳しく紹介した本も出版されています。 『無銭経済生活 お金を使わずに生きる方法』(紀伊國屋書店 2017年)

まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を必要とする人に供給するフードバンクの試みについては、『フードバンクという挑戦』(大原悦子著)もご覧ください。
ぼくはお金を使わずに生きることにした
マーク・ボイル (著), 吉田 奈緒子 (翻訳)
紀伊國屋書店 (2011)
イギリスで1年間お金を使わずに生活する実験をした29歳の若者がメディアで紹介されるや、世界中から取材が殺到し、大きな反響を呼んだ。貨幣経済を根源から問い直し、真の「幸福」とは、「自由」とは何かを問いかけてくる、現代の『森の生活』。 出典:amazon
profile
橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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