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14歳、明日の時間割(鈴木るりか)

高校生作家。輝く才能

14歳、明日の時間割
鈴木るりか(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、鈴木るりかさんの『 14歳、明日の時間割』。

著者 鈴木るりかさんは2003年生まれ。現在高校生ですね。小学4年生、5年生、6年生の時、3年連続で小学館主催『12歳の文学大賞』の大賞を受賞されました。そして2017年『さよなら田中さん』で、デビュー。

なんと早熟な!

『14歳、明日の時間割』は鈴木さんが中学生の頃の作品です。

とある田舎の中学校が舞台で、一時間目から放課後まで、各授業ごとに主人公が変わる短編集です。

短編のタイトルと主人公を紹介しましょう。

「一時間目 国語 見る前に跳べ!」は、中学生で小説家デビューした明日香。おそらくご自身がモデルと思われます。

「二時間目 家庭科 空色のマフラー」は、家庭科が得意な葵と、なぜか運動部をやめて家庭科部に入ってきた野間くん。

「三時間目 数学 誰かと違う夜」は、引越しのため東京の高校を受験することになった修也。

「四時間目 道徳 深く息を吸って」は、父親が誰か他の女性と駆け落ちした後、母までが行方をくらまし、心ならずも母の新しいオトコ ミチと同居する羽目になった圭。

「昼休み 孤独の友」は、休み時間は読書に没頭することで、友達がいないことをごまかしている山下さん。

「五・六時間目 体育 花の下にて」は、極端な運動音痴の茜。

そして「放課後 アフタースクール」は小説家を目指すものの、万年一次審査落ちの国語教師 矢崎。

それぞれの主人公は程度こそ違いますが、悩みを持っています。

「私にもこんなことがあったな」と思う場面もしばしば。

例えば「三時間目 数学」は主人公 修也が模試の数学で9点を取ってしまったところから始まります。

修也は元々は成績が良い子だったのです。

地元高校を受験するだけならなんの問題もなかったのに、偏差値の高い東京の高校を受けることになったため、自分史上経験したことがないような点数を取ってしまい、愕然としてしまいます。

実は私も、自分で言うのは変だけど中学生時代まではまずまずの成績だったのです。

それなのに高校の時、化学の試験で28点を取り、自分のことながら驚き、しばらく受け止めることができなかった、その時の気持ちを思い出しましたよ。

「わかる!君の気持ちはわかるぞ!」と。

また、ドッチボール、バレーボール、バスケットボールなど球技が苦手だった私は、運動音痴の茜が、バスケットボールの時にいじらしい努力で自分の存在感を消し、パスが回ってこないようにする姿に大いに共感しました。

「わかる!私もそうしていた!」と。

しかしそれから何十年も経った今、あの頃の悩みなど可愛らしいものだったとわかっています。

でも中学生時代には地球規模の問題よりも、自分の身に降りかかっている小さな問題の方が、重たかったことも知っています。

中学生の鈴木るりかさんだからこそ、その気持ちを生き生きと描けたのでしょうね。

そして中学生らしいみずみずしさと同時に、物語のあちこちに散りばめられた薀蓄や人生訓の深さが、同時に味わえるのがこの小説の凄いところです。

例えば紹介されているトルコのことわざ『どんなに絶望的でひどい状況でも、息ができるならまだ大丈夫だ』など、私が中学生の頃には考えもしなかった言葉です。

小さいことに思い煩いそうになったら、今度からこの言葉を思い出そうっと。

さて、この短編は全て同じ中学校の同じ学年の話で、中原くんというスポーツ万能な上に頭もいい男子が全ての短編に登場するキーマンとなっています。

中原くんは本当に感じのいい男子で、私もこんな同級生がいたら、悩みを聞いてもらったかも。

そしてラストシーンのおかげで、万年予選落ちの小説家志望矢崎先生のことを嫌いにならずにすみました。

文体と同じように爽やかなエンディングです。

それにしても鈴木るりかさんはまだ16歳。

これからどんな作品を書かれるか、楽しみです。
14歳、明日の時間割
鈴木るりか(著)
小学館
今回の舞台は、中学校。時間割に見立てた7編の短編で、鮮やかに現代人の苦悩、笑い、絆、友情、想いを描写。現役中学生の目を通して「生きる」ことについて大いに考えさせられます。笑って笑って、ホロッと泣かせる、胸に迫る青春群像小説です。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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