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農ガール、農ライフ(垣谷美雨)

良い小説は真実を突いている

農ガール、農ライフ
垣谷美雨(著)
No Music No Lifeのもじりなのでしょう、面白いタイトルの小説を読みました。垣谷美雨さんの『農ガール、農ライフ』です。
主人公、水沢久美子32歳。大学の同級生だった篠山修と同棲して6年になる。今では恋人というよりは、ルームメイトといったほうがいい。家賃は折半、2LDKの一部屋ずつを自分の個室として使い、リビングで一緒に過ごす毎日だ。

久美子は今日、派遣切りにあった。好きで派遣会社に登録したわけではない。大学卒業時には、中堅の住宅メーカーに就職した。総合職でそこそこ高給で、生活が安定したら修と結婚するつもりだった。

ところが、5年ほど前に会社が倒産。すぐに正社員として働けると思ったら、どこにも再就職できず、やむなく派遣会社に登録したのだ。

なかなか再就職できない久美子に、修は結婚を切り出したが、久美子は断った。職にあぶれたから結婚に逃げるなんて、卑怯だと思ったからだ。

それ以来久美子は派遣会社から紹介される様々な職場を転々とするばかり。

しかし今度の職場では自分なりに手応えもあり、契約更新はもちろん、正社員登用の可能性もあるかと思っていた。それなのに、契約打ち切り。落ち込む久美子に、さらなる追い討ちが。

修が、結婚を考えている子がいるというのだ。もちろん久美子のことではない。ついては、久美子にマンションを出て欲しいという。

職を失い、今度は住処を失う久美子。住むところを探すのも、今の自分には大変なのだと思い知る。

久美子は早く両親を亡くしており、親戚もいない。保証人を立てられないのだ。しかも現在無職なのだから、どこの不動産仲介業者も物件を紹介してくれない。

さほど多くもない貯金を取り崩す毎日。進退窮まった久美子は、ぼんやり見ていたテレビ番組に目を開かされる。

農業で生きていく!!とにかくやってみるしかない!!まずは県立農業大学校にチャンレンジするのだった。
(垣谷美雨さん『農ガール、農ライフ』の出だしを私なりにご紹介しました。)
この小説には、色々な社会問題が盛り込まれています。

まずは、女性の自立問題。

男性に引けを取らず働き続けることは難しいし、一度会社を辞めたら(それがたとえ会社の都合でも)、正社員として再就職することはとても難しい。

次に住宅問題。

高齢者が住宅を借りることがとても難しいことは知っていましたが、久美子のように若くても、無職で保証人がいないと、住むところが見つけられないというのは、考えたことがありませんでした。

そして農業に関する問題。

私が花壇で行なっている家庭菜園とは違って、生計を立てるために農業を営むことは並大抵ではありません。

とはいえ、農業従事者の不足と高齢化が、久美子の再スタートに有利に働くだろうと予想しながら読んでいたら、そんなに簡単なことではないのです。

私がぼんやりとイメージしていた「農業」はとても甘いものだったようです。

しかし、人生捨てる神あれば拾う神あり。

ただし、自分自身が一生懸命に道を探していなければ「拾う神」も現れません。

この小説には、久美子以外に、色々な境遇の女性が登場します。それぞれ生きていくために、一生懸命考え、それぞれの決断をします。

私が垣谷美雨さんの作品を好きなのは、登場人物に対する温かな視線を感じるから。

「ちょっと、動機が不純じゃないの?」と思うような決断をする人物も登場するのですが、「みんな一生懸命に生きている」と思わせてくれるのです。

まさに、人生いろいろ。

人の上っ面だけ見て、批判してはいけないと、つくづく感じました。

良い小説は「おはなし」なのに、真実を突いているものです。
農ガール、農ライフ
垣谷美雨(著)
祥伝社
「結婚を考えている彼女ができたから、部屋から出て行ってくれ」派遣ギリに遭った日、32歳の水沢久美子は同棲相手から突然別れを切り出された。5年前、プロポーズを断ったのは自分だったのに。仕事と彼氏と家を失った久美子は、偶然目にした「農業女子特集」というTV番組に釘付けになった。自力で耕した畑から採れた作物で生きる同世代の輝く笑顔。-農業だ!さっそく田舎に引っ越し農業大学校に入学、野菜作りのノウハウを習得した久美子は、希望に満ちた農村ライフが待っていると信じていたのだが…。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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