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音楽名曲絵画館(青島広志)

あの名曲が生まれた物語を描く楽しい絵本

音楽名曲絵画館
ブルーアイランド氏のピアノ名曲の旅 絵と文
青島広志(著)
作曲家、音楽プロデューサー、エンターテイナーでイラストレーターでもある青島広志さんが、ピアノの名曲を自作イラストとともに紹介する本です。A4判でオールカラー、美術展のカタログのようにどっしり重みがあります。

青島さんはテレビでも活躍されていますが、コンサートはさらに楽しいです。一流の演奏家と共演されることが多いのですが、ご自身もピアニストあるいは指揮者として演奏されます。そして必ず作品解説をされるのですが、これがとにかく面白いのです。

幕間や終演後にはサイン会があり、記念写真にも気さくに応じられます。非常にパワフル、エネルギッシュに音楽の魅力を伝えてらっしゃいます。

この本は、そんな青島さんのコンサートで購入しました。ルネサンス期から現代までの68曲が、時代背景、曲の構成、青島さんの評価などを交えてユーモラスにまとめられています。

「エリーゼのために」「人形の夢と目覚め」、ブルグミュラーの「タランテラ」といった、ピアノを習いたての子どもたちが憧れる発表会の定番曲から、リストの超絶技巧練習曲「マゼッパ」のような上級者向けの有名曲まで。そしてあまり聞く機会がない隠れた名曲や現代曲と多彩なラインナップです。

そしてどの文章にも、夢みる少女が描いたかのようなイラストがついています。小さいころピアノ教室の待合室で読みふけった少女漫画に影響を受けたとのことですが、なかには独特な想像力が発揮された絵もあり、なぜこの絵になったのだろうと考えるのも一興です。

このイラストが添えられていることで、聴いたことのない曲も、どんな曲だろう、聴いてみたいなという気にさせられます。

知っている曲、弾いたことのある曲がどのように紹介されているのかを読むのも楽しいものです。思わず噴き出したのは、チェルニーの「40番練習曲」。チェルニーの練習曲集は何種類もあって、「100番→30番→40番→50番→60番とえんえん続」きます。数字は曲の数を示します。100番には100曲、30番には30曲、あまり面白みのないテクニック重視の曲が収められているのです。

青島さんは40番練習曲集を全曲弾くに至らなかったそう。「そんな落伍者から見ると、60番練習曲までを弾き上げる人は、当時、受験生の友だった『自由自在』『応用自在』『力の問題5000題』などの問題集をすべて解いてしまうのと同じ大偉業を果たしたものとして映」ったそうです。

私も同じくチェルニーは「決して好きになれ」ず、40番の途中までで終わってしまったので、「だいたい、あのメトロノーム表示で弾ける人がいるのでしょうか」というくだりにはうなずいてしまいました。イラストも、チェルニーに苦戦した人なら共感してしまうものになっています!

各章の扉に「本書でとりあげていないこの時代の作曲家」という欄が設けてあるのも作曲家ならではのていねいな目配りです。

音楽は、音だけを聴き、聞き手の感性で想像を膨らませるという楽しみ方もありますが、絵画と同じく、その作品が生まれた背景や意図を知ることで、より理解が深まり心に浸透するようになると思いました。
音楽名曲絵画館
ブルーアイランド氏のピアノ名曲の旅 絵と文
青島広志(著)
ショパン
ピアノ名曲大絵本!?『トルコ行進曲』『エリーゼのために』など古今のピアノ名曲68曲が、ブルーアイランド画伯こと青島広志によって、素敵な絵とエッセイに生まれ変わりました。 出典:amazon
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橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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