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国境のない生き方(ヤマザキマリ)

教養は進むべき道を切り開くための「飛び道具」

国境のない生き方
私をつくった本と旅
ヤマザキマリ(著)
古代ローマの建築技師ルシウスが現代日本にタイムスリップする大ヒット漫画『テルマエ・ロマエ』の作者ヤマザキマリさんの自伝的人生論エッセイです。

札幌で育ったマリさんは、川魚を素手で捕まえて遊ぶ「野生児」のような子ども時代を過ごしますが、文学少女だったお母さんの影響でたくさんの本にも親しみます。

17歳で絵の修行のため単身イタリアに渡り10年過ごしますが、その生活は決して楽なものではありませんでした。それどころか食べるものにも困るような窮乏生活が続き、生きていることがつらいほどの状況にも陥ったといいます。それでも耐えられたのは、絵を描きたかったから、そして文学や芸術について熱く語り合える仲間たちがいたからでした。

売れない作家や名もなき画家たちが集まるサロンで最年少だったマリさんは、年上の友人たちから三島由紀夫や阿部公房、ガルシア・マルケスを薦められて読むようになります。自分を支える言葉を見つけたくて、すがるような気持ちで真剣に読んだそうです。

そして、ただ読むだけではなくサロンでの議論に加わるようになります。言葉にして言わなければ何を考えているのかわからない、言葉にすることで自分が何を思い、どう考えているのか、いろんなことがわかってくるのだと仲間たちに促されたからです。

自分の考えをアウトプットし、人とコミュニケーションすることで「教養に経験を積ませ」、ブラッシュアップし、深化させることができる。教養は現実を生き抜くための具体的な力、進むべき道を切り開くための「飛び道具」である。知識も教養も、人と人が限りなく近づくための力、すなわち寛容性を鍛えるためにあるのだということをマリさんはイタリアでの日々で学んだのです。

マリさんは27歳のとき、10年を一緒に過ごした売れないイタリア人詩人との間に子どもを授かりますが、詩人とは別れて日本に帰国します。その後7年間、漫画を描いたり、イタリア語を教えたり、温泉レポーターをしたりと10足くらいのわらじを履いて愛息を育てます。子育てが一段落したころ、13歳年下のイタリア人男性と結婚し、その後は彼の仕事に合わせてシリアやアメリカを渡り歩きながら数々の作品を発表しています。

代表作『テルマエ・ロマエ』は、まったく無縁と思える古代ローマと現代日本を結びつけた奇抜な設定ですが、実は時空を超えた共通点や共鳴できる心があるのだということを私たちに教えてくれます。

マリさんのように世界を股にかけて渡り歩かないとそのようなことに気がつくことができないかというと、そんなことはないと思います。マリさんの場合も、確かにイタリアやシリアでの経験が作品のヒントになっているのですが、それはきっかけに過ぎません。読書と思考と議論を重ねたからこそ、時空を超えて人間どうしが共感できるというマリさんの世界が生まれたのではないでしょうか。
国境のない生き方
私をつくった本と旅
ヤマザキマリ(著)
小学館(2015)
14歳で欧州一人旅、17歳でイタリア留学。住んだところは、イタリア、シリア、ポルトガル、アメリカ。旅した国は数知れず。ビンボーも挫折も経験し、山も谷も乗り越えて、地球のあちこちで生きてきた漫画家をつくったのは、たくさんの本と、旅と、出会いだった! 古今東西の名著から知られざる傑作小説に漫画まで、著者が人生を共に歩んできた本を縦糸に、半生を横糸に綴る地球サイズの生き方指南! 出典:amazon
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橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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