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口笛の上手な白雪姫(小川洋子)

声にまつわる短編集

口笛の上手な白雪姫
小川洋子(著)
大好きな作家さんの一人、小川洋子さんの短編集『口笛の上手な白雪姫』を読みました。

収められている短編は8つ。
・先回りローバ
・亡き王女のための刺繍
・かわいそうなこと
・一つの歌を分け合う
・乳歯
・仮名の作家
・盲腸線の秘密
・口笛の上手な白雪姫
(小川洋子さん『口笛の上手な白雪姫』目次より転記)
みな、凡庸ではないタイトルで、いったいどんなお話なのか、想像がつきません。

その分、ワクワクしながら読み始めることができます。

小川さんの作品を読むと、いつも静かな気持ちになります。

なぜそんな気持ちになるのか、考えてみるのですが、選び抜かれた日本語で記述されているからではないかと思います。

そして語り口がいつも丁寧で、静か。

決して勢い任せに走ったり、激したりしません。

そんな文章を目で追っているうちに、いつしか私は、自分が主人公の背中をすぐ近くから見ながら、なりゆきを見守っている気分になります。

収められている短編集は、どちらかというと、暗い印象の作品が多いです。

たとえば、「先回りローバ」は、吃音に悩む小学生が主人公だし、「仮名の作家」は、ある作家が好きすぎて、心を病んでしまっている女性のお話。

私が最も好きだったのは「一つの歌を分け合う」。
誰かの代理でミュージカル『レ・ミゼラブル』を観に行くことになった主人公。

彼が『レ・ミゼラブル』を見るのはこれが二度目。最初に観たときは、叔母と一緒だった。

若くして亡くなったいとこの母親である叔母と観た『レ・ミゼラブル』を、主人公は思い出す……。
(小川洋子さん「一つの歌を分け合う」をおおまかに説明しました)
ミュージカルナンバーの描写と、おばさんの様子に、胸がぎゅっと締め付けられました。

怖い!と思ったのは「亡き王女のための刺繍」。

腕のいいお針子さんのお話だと思いきや、とんでもなく暗いものに気付かされます。

小川さんの芥川賞受賞作『妊娠カレンダー』を読んだときと似た気持ちになりました。

子どもの視点で書かれた「先回りローバ」、「かわいそうなこと」は特に物事の描写の細かさに驚かされます。

昭和時代に我が家にもあった黒い電話のフォルムについてや、シロナガスクジラについての記述の素晴らしいこと。

作家とは、面白いストーリー展開を考えるだけではなく、それをどんな日本語を用いて表現するかを吟味する人なんですね。

小川洋子さんの日本語遣いが大好きです。
口笛の上手な白雪姫
小川洋子(著)
幻冬舎
劇場で、病院で、公衆浴場でー。“声”によってよみがえる、大切な死者とかけがえのない記憶。その口笛が聴こえるのは、赤ん坊だけだった。切なく心揺さぶる傑作短編集。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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