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ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室(キャスリーン・フリン)

料理を見直せば人生が変わる

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室
キャスリーン・フリン(著)
タイトルに惹かれて読みました。キャスリーン・フリン『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』。

著者 キャスリーン・フリンはライター。37歳でフランスの名門料理学校コルドン・ブルーを卒業します。

著書『36歳 名門料理学校に飛び込む! リストラされた彼女の決断』のタイトルから察するに、職を失い、新たな道を探ってのことと推測されます。

そんなキャスリーンの転機はスーパーにありました。

コルドン・ブルー卒業以来、スーパーの食品売り場で、人のカートの中身をついつい見てしまう癖がついていたそうです。

ある日、チキンパイやマッシュポテト、ソース付きの牛肉パックを次々にカートに入れる女性を目撃しました。

それはつまり、帰ってレンジでチンするか、そのままオーブンに入れてスイッチをオンにすれば良いものばかり。

思わずその人に「丸鷄がセールになっていますよ」と話しかけてみると「どうやって料理すれば良いかわからない」という答えが返ってきて自分がやるべきことが見えてきたのです。

それは料理教室を開催すること。さまざまな理由で料理ができず(料理が下手で)自信を失っていた年齢も職業も まちまちな10人の女性が集う料理教室の様子が描かれていきます。

キャスリーンは、料理教室で教えるだけでなく、10人の女性それぞれの家庭を訪問。キッチンや冷蔵庫の中身を見たり、実際に調理するところを観察したりします。

そこから見えて来るのは生徒たちの「料理ができない」理由。母親の影響があったり、完璧を求めすぎていたり……

そんな10人の「ダメ女」たちが、まず最初に習ったのは包丁の持ちかたでした。

正しい包丁の持ちかたで玉ねぎをみじん切りしたとき、ジャガイモをソテーできた時、彼女たちの瞳は輝きます。「信じられない!これ、私がやったのよ!」と。

実際のところ、この本が小説なのか、ルポルタージュなのかさだかではありません。

でも、料理ができない「ダメ女」たちが、このままで良いとは思っていなかったこと、キャスリーンの料理教室で、一つできるようになるたびに生まれ変わっていく様子には胸が熱くなります。

そして料理教室で教えられている内容は、私にもとても参考になりました。

たとえば包丁の持ちかた。私は誰に習うということもなく、我流でした。多分この本で言うところの「包丁の首を絞める」ような握りかたをしていたんです。読後、意識して包丁を持つようになりましたよ。

料理教室に通った10人の「ダメ女」たちは最終的に「ほんの少し買い、たくさん作り、捨てないしあわせ」に目覚めます。それは国籍を問わず、どんな家庭にも求められることではないかしら。

アメリカならではの条件もありましたが、どの国のどの女性にも当てはまるテーマが描かれていると思いました。

先の衆院選の演説で小泉進次郎さんも言っていました。「人間は食べなければ生きてはいけない」と。

まさに、食べることは生きること、料理を見直せば人生が変わることを教えてくれる一冊でした。

最後に余談を一つ。

この本の原題は「The Kitchen Counter Cooking School」。どこにも「ダメ女」という単語はありません。

もしこの英語を直訳したタイトルだったら、私はこの本を手に取らなかったでしょう。翻訳の妙ですね。
ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室
キャスリーン・フリン(著)
きこ書房
食べることは、生きること。料理ができないーそのせいで、自信を持てなくなっていた。年齢も職業もさまざまな女たちが、励ましあい、泣き、笑い、野菜を刻む。10人の人生を賭けた、リベンジがはじまる。米国ASJAベスト・ノンフィクション賞受賞! 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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