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本バスめぐりん。(大崎梢)

どの問題も、それぞれの人生にとって大事なこと。

本バスめぐりん。
大崎梢(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、大崎梢さんの『本バスめぐりん。』。
”物語の中心となるのは、神奈川県湘南地域にある「種川市」の移動図書館本バス、通称めぐりん号。市内16カ所を二週間で巡回しています。

めぐりん号の運転手を務めるのは、友人の後継者としてやってきた照岡久志。定年退職後の新たな職場だ。

相棒である図書館司書はまだ20代の梅園奈緒子。親子以上に年の違う二人が「テルさん」「ウメちゃん」の名コンビで、めぐりん号が巡回する先々で起こる小さな謎や問題を解決していく……。”
派手な事件は起こりませんが、どの「問題」も、それぞれの人生にとっては大事なことばかり。

例えば、かつてはそこに住むことがステイタスとされていた高級住宅地は、若い世代が独立したため、高齢者が多い地区になってしまっています。

かつてはあらゆる商業施設があり賑やかだったのに、それぞれが撤退。今やめぐりん号の巡回さえ、利用者の減少で打ち切られるかもしれない……

なんていう話は、日本のどこにでもある問題じゃないでしょうか。

それにしても、暑い日も寒い日も、雨の日だって休まず巡回する本バスめぐりん号。車体のあちこちに工夫があり、積載する本はなんと三千冊!!

しかも、巡回先の世代構成や、これまでの貸し出しの傾向から、毎回のように積む本を変えているんです。

図書館司書さんがいかに読む人のことを考えているか、また、めぐりん号がやってくるのを待っている人がいかに本を愛しているか……。

私がこの本の中で最も心に残った一文は
”活字を目で追っていると、森の中でいい空気を吸っているような気分になるんですよ
(『本バスめぐりん。』 「ランチタイム・フェイバリット」より引用)”
読書が心の森林浴ってことですよね。わかる!!

本に対する愛情がすごいなぁと思っていたら、著者 大崎梢さんは元書店員だったのです。納得。他の著作も読みたくなりました。

本がお好きな方なら、ほのぼのとした読後感を味わえること請け合い。ましてや、実際に移動図書館を愛用されているかたなら、どれほど親近感が湧くことでしょう。
本バスめぐりん。
大崎梢(著) 東京創元社
3000冊の本を載せて種川市を走る移動図書館、愛称めぐりん。乗り込むのは、65歳の新人運転手テルさんと図書館司書のウメちゃんだ。2人と1台を待ち受けるのは利用者とふしぎな謎の数々で?!本でつながる想いをのせて、移動図書館は今日も走る! 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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