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なんにもうまくいかないわ (平安寿子)

誰もが少しだけ後悔を抱えながら生きている

なんにもうまくいかないわ
平安寿子(著)
タイトルを見て、読まずにいられなかった平安寿子さんの『なんにもうまくいかないわ』。
並河志津子 42歳 独身。市場調査会社のチーフで、人脈は幅広く、仕事はできる。

見た目もちょっとばかりいい女の部類に入る志津子は、仕事で名刺を交換したばかりの相手と、すぐに飲みに行き、そこで人生を語り合えるぐらい、相手の懐に入るのが上手。

時にはそのまま勢いに乗って、ホテルや自宅になだれ込み、男女の関係になることも。かといって、だらしない女かといえばそうとも言えない。なんとなしに可愛らしいところがある女性だ。

しかし、そういう関係になる相手は大抵年上で、妻子持ち。結婚など望むべくもない。たまに年下と付き合ったかと思うと、単にセールスのカモにされていただけだったりする。

仕事はできるが、寂しがり屋でお節介な志津子は、別れた男も家族のようなものだと感じている。一度ご縁があった人間とすっぱり関係を切ることが苦手なのだ。

ポジティブな志津子でも、後悔することはある。たとえばあの時、結婚していたら。もしも自分が母になっていたら。

人生って「なんにもうまくいかない」ものなのかも。
(平安寿子さん『なんにもうまくいかないわ』の概要を私なりにまとめました)
この本は、短編集です。巻末の『亭主、差し上げます』以外は全て、志津子が主人公です。

志津子の子どもの頃からの友人、仕事仲間、部下、元カレ、そして元カレの奥さん、それぞれの立場から見た志津子が描かれています。

最初は、男の人にだらしない軽薄な女性のように思えた志津子が、徐々に頼もしくもあり、可愛らしくもあるように見えてきます。

恋愛面では同調しにくいところも多いけど、仕事でこの人と組んだら、さぞ気持ちよく仕事が捗るだろうなぁ。

タイトル『なんにもうまくいかないわ』は、恋愛に勝利し、うまく妻になったものの、夫の愛が本当は自分には向けられていなかったのではと思っている妻と、大好きだったのに結婚できなかった女性、相反する二人が同時に思うことです。

人生は一度しかなく、しかも並行して二つのことを試すわけには行きません。

それなのに人生の岐路は無数にあり、その都度なにがしかの決断をし、一つの道を歩んで行くしかないのです。

後で振り返って、「あの時右の道を選んでいたらどうだったろう」と考えることがあるかもしれません。

そして今の道を進んで得られなかったものが、もう片方の道に進んでいれば得られたかもしれないと、思うことだってあるでしょう。

どの道に進んでも、もう一つの道に進んだらどうなったか、思い煩わずにはいられないのが人間なのかもしれません。

そして思わず呟くのです。 「なんにもうまくいかないわ」。

ただ、主人公が「なんにもうまくいかない」と独りごちながらも、全く暗くないのがこの小説の良いところ。

「誰もが少しだけ後悔を抱えながら生きているのかも。それなら私が少しぐらい悩むのは当たり前よね」

そう思ったら、どんな人でも、もう少し頑張ってみようと思えるのでは?

そんな小説でした。
なんにもうまくいかないわ
平安寿子(著)
徳間書店
むかし負け犬、いまアラフォー。そのまっただなかの並河志津子。子なしシングル、恋多きプチ・ゴージャスな独身生活を楽しみつつ、“女のタイムリミット”におびえる迷える女。「なんにもうまくいかない、それが人生なのよ」とうそぶいてはみたものの、揺れる想いはかくせない。怒って泣いて、ため息ついてアハハと笑って…。Ah~どうなるあたしー。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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