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仕掛学(松村真宏)

仕掛学
人を動かすアイデアのつくり方
松村 真宏 (著)
出版社:東洋経済新報社 (2016)【内容情報】(「BOOK」データベースより)「ついしたくなる」にはシカケがある。スタンフォード大学の講義でも用いられている日本発のフレームワーク。(出典:amazon
「仕掛学」って何? と思わず手に取るタイトルですね。著者の松村さんは人工知能の研究者で、コンピュータを使って多くのデータの中から問題解決や意思決定に役立つものを見つけ出すという研究に取り組んでいました。

ところがある日、松村さんは、日常の生活空間に、人の興味と行動とを結び付けることによって結果的に問題を解決させるようなさまざまな「仕掛け」の事例がたくさんあることに気づきました。しかもそれらはデータ化されていないのです。そこで、そういった事例を採取し、分類整理して汎用性を見出すという「仕掛学」を提唱するようになりました。

本書には、松村さんが街で採取した仕掛けの数々が紹介されています。単なる面白仕掛け写真集ではなく、あくまで「学問」として確立することを目指しているので、「仕掛け」の定義や原理や仕組みもきちんと示されています。

松村さんのいう「仕掛け」とは、問題解決につながる行動に人びとを誘うきっかけとなるものを指し、次の3つの要件をすべて満たす必要があるとしています。それは、第1に誰も不利益を被らないこと(公平性)、第2に行動を誘うものであって強要するものではないこと(誘引性)、第3に仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なること(目的の二重性)です。

バスケットゴールのついたゴミ箱の例を見てみましょう(表紙写真)。解決したい問題はゴミの散乱です。ゴミを持った人はバスケットゴールを見て、思わずシュートしたくなります。これが誘引性です。

シュートが決まると楽しいので、周辺のゴミを拾って何度もチャレンジする人が出てくるかもしれません。その結果、まわりのゴミが一掃されるかもしれません。シュートを成功させたい人の目的と、ゴミを散乱させたくない人の目的は異なります。これが目的の二重性です。そして、この仕掛けを作ることで誰かが損をすることはありません。これが公平性です。

このように、人が思わずしてしまう、あるいはしている行為を見出すには、人の行動をよく観察することがポイントになってきます。行動観察によって問題を解決する手法については、松波晴人『ビジネスマンのための「行動観察」入門』 もおすすめです。

報酬を与えたりギャンブル性をもたせたりすることも人の行動を誘いますが、これには注意が必要です。例えば、子どもが上手に絵を描いたときにご褒美をあげると、ご褒美なしには絵を描かなくなることが起こりえます。もともと好きだった行為を報酬のために行うという目的のすり替わりが発生する恐れがあるのです。

また、ある仕掛けは思わぬ逆効果や良くない副作用を産むことがあるかもしれません。でもそのときは、その都度修正をしていけばよいというのが松村さんのスタンスです。

問題を解決するために大がかりな技術革新や「装置」への投資を行うと、時間や費用のコストがかさみます。技術にとらわれてしまうと、必要のない技術をわざわざ使って簡単な問題を難しく解決しようとしてしまうこともありえます。目的の本質を見失わないことが大事です。本書の最後の方にアメリカのジョークが紹介されています。
”宇宙空間の無重力状態ではボールペンが書けないことがわかった。そこでアメリカのNASAは、長い歳月と多額の資金をかけて、どんな環境でも書けるボールペンを開発した。一方ロシアは鉛筆を使った。”
とても示唆に富んでいますね。

本書では、松村さんが採取したたくさんの仕掛けの事例が分類・解説されています。やや硬い言葉で理論的に書かれているところもありますが、読者の理解を助けて先を読もうと思わせる「仕掛け」が施されているので、楽しく最後まで読むことができます。私たちが身の回りや仕事での困りごとを解決しようと思ったときにヒントを与えてくれる本です。

橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授
同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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